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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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婚約者

館の玄関
ここまで幾重にも門があり、兵士たちが守っていたはずだが、なぜか簡単に破られて巨大な鉄の車が停まっていた。
中から降りてきて周りを囲んだのは、アッシリア家の元家臣たちである。
「お、お前たち……どうしてこんな所に……」
アクターがひたすらうろたえていると、少年と赤い髪の美少女が車から降りてきた。
「……この悪代官め……」
ギュッと拳を握って迫ろうとする。
「ひ、ひいい!お前はアッシリア家の娘!なぜこんなところに!」
「そんなのどうでもいい!殴ってやる!」
拳に炎を纏ってトーラが迫るが、それをリトネに止められる。
「先生。ここは僕に任せてください」
「……」
「絶対に悪いようにはしませんから」
「わかったよ」
トーラはしぶしぶ引き下がる。リトネはトーラに代わって、アクターの前に立った。
「お初にお目にかかります。代官アクター様でございますね」
「……お前は何者だ……」
「これは失礼を。私はシャイロック家の次期当主、リトネ・シャイロックと申します」
リトネはそういいながら、腰に差していた短剣を見せる。
そこにはしっかりとシャイロック家の紋章が入っていた。
「ひ、ひいい!あなたがリトネ様!」
アクターは水戸黄門の印籠を見たときの悪代官そっくりの顔になり、土下座をはじめる。
あたりにいた兵士たちも、代官の土下座を見てあわててそれに習った。
(こ、これはどうしたことだ!姫様とシャイロック家の御曹司が一緒にいる!)
代官の後についてきた老人も驚きながら土下座をする。
全員の視線が集まる中、リトネはゆっくりと口を開いた。
「……少し代官様とお話したいことがあります。お時間をいただけませんか?」
「は、はい。いや、その。それはかまわないのですが、彼女は……?」
アクターは嫌そうな顔をして、リトネの隣にいるトーラを見る。
「彼女は私の婚約者です」
「ふえっ!!!!!!!!!」「ええっ!!!」「はああああ?」
この場にいたすべての者が驚きの声を上げた。
「ち、ちょっとまて!いつからあたいがあんたの婚約者に……ふがっ!」
叫ぼうとしたトーラの口がリトネによって塞がれる。
(んーーー!)
(いいから、任せてください)
トーラの耳元てそうささやくと、リトネはさらに続ける。
「わが婚約者トーラの訴えにより、この地を祖父イーグルの代理として視察に来ました。受け入れてくれますね?」
リトネの先制攻撃を受けたアクターは、もう何も考えられなかった。
「は、はい。どうぞ、すみずみまでご覧ください」
そういってリトネたちを館に招き入れようとする。
その時、いきなり土下座していた老人が立ち上がり、トーラに抱きついた。
「トーラひめぇぇぇぇぇぇぇ!」
「げっ!爺!どうしてここに!」
自分の教育係だった老人が迫ってきて、トーラはびっくりする。
「ひめ!お止めください!いかに民の苦境を救うためとはいえ、誇り高き砂漠の一族であるあなた様が、いやしい金貸しの人身御供になるなどと!」
「ひ、人身御供?」
「はい!姫は確かに美しく気高くおわします。われらの誇りたる姫が、このような好色そうな馬鹿ぼっちゃんなどに身を捧げるなと……」
「ば、馬鹿、変な誤解すんな!」
トーラは真っ赤になって否定するが、それを聞いて遺臣たちは納得の表情を浮かべた。
「身を捧げたって?そういえば、昨日リトネ様と一緒に寝ていたよな……」
「昨日、夜中なのに結構騒いでいて、静かになったと思ったら姫御の啜り泣きが聞こえてきて、朝起きたら涙の跡が……」
「あれで見初められたのか?待てよ?これってうまくすると……」
「そうだよ!そっちのほうが確実にアッシリア家の再興がかなうじゃないか!」
昨日リトネに散々脅された男は、そういって煽る。
「ば、ばかやろ!勝手にきめるんじゃねえーーーーー!」
トーラは真っ赤になって抵抗するが、遺臣たちはニヤニヤ笑って老人をトーラからひきはがす。
「まあまあ、若い二人のお邪魔をするというのも野暮ですから~」
「な、なにをする!はなせこの若僧ども!」
老人は遺臣たちによって縛り上げられてしまうのだった。
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