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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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職務

しかし、しばらくしてブツブツといい始めた。
「だからって、何も領地を取り上げなくても……あたいたちに何の恨みが……」
「先生は「職務」というものを考えたことありますか?」
いきなりリトネに言われて、トーラは困惑する。
「『職務』だって?馬鹿にするな!それくらい知っているさ!」
「ならば聞きます。死刑執行人が罪人を処刑するのは悪ですか?徴税官が税を取り立てるのは悪ですか?」
「そんなの悪であるわけないだろ!その役人は自分の仕事を果たしたまでだ!」
自信を持って答えるトーラに、リトネはさらにたたみかける。
「では、国政を預かる宰相が、道理に合わない借金を押し付けてきた騎士を処罰するのは?」
「……」
「祖父は宰相として当然のことをしたまでです。あなた方に恨みなど一片もありません。国から領地を預かっているにもかかわらず、浪費をして借金をした者は、自分でその借金を払わなければならなかったのです」
「父上は浪費なんかしてない!民のためにしかたなかったんだ!砂嵐が激しくて町が覆われそうになったり、原因不明の大火災が起きて町が焼けたり……」
トーラは悔し涙を流して反論する。
「では、なぜ困った民のために貯金をしていなかったのですか?我が領では常に収穫の一定量を飢饉や災害に備えて備蓄しています。この数十年、ただの一人も餓死者は出していません」
リトネの声は容赦がなかった。
「それは、あんたたちが豊かだから……」
「豊かになるように、先々代から苦労を続けているのです。常に倹約し、無駄な金を使わず、人から嫌われても金貸しという仕事を続けて収入を確保し、金をため続けて来ました。あなたがたはそういったことをしていましたか?」
「……」
言い返せずに、トーラは再び沈黙する。
「時の経過は誰もが同じ。シャイロック家が倹約に努め、蓄財にはげんで民の危急に備えている間、アッシリア家は何をされていましたか?いざというときに民を救うために、我ら貴族は国から領地を託されているのではないのですか?」
「……」
「それを怠れば、りっばな改易の理由になります。自らの失敗を隠すため、国に借金を押し付けて平然としている貴族などに存在価値はありません」
「うるさい!」
ついにトーラは癇癪を起こして、リトネに背を向けた。
しかし、リトネは嫌われても話し続けた。
「言い過ぎたのなら謝ります。でも、これだけは知っておいてください。祖父は宰相として、やるべきことをやったまで。そこに一片の私心も私欲も私利もありません。なぜ人に恨まれてまでそんなことをしなければならなかったのか、一度考えていただけませんでしょうか?」
リトネはそういうと、シートを倒して毛布にくるまる。
トーラは背を向けたままだったが、すすり泣いていた。

トーラの泣き声を聞きながら、リトネは今までのことをもう一度思い返していた。
(トーラが持ってきた手紙に、リンたちを助けたかったらアッシリア領にこいって書いてあったんだよな……あれ?ならトーラはなんで手紙を渡されたとき、怪しいとおもわなかったんだ)
冷静になってみると、いろいろとおかしな点がおもいうかぶ。
(一人でこいって手紙にかいてあるのに、トーラは自分がついていっても何の問題がないみたいなことを言っていた。なんでそこまで自信があったんだ?まさか……)
だんだんトーラにたいして疑念がわきあがってくる。
(リンたちをさらった盗賊を追っていたら、トーラの仲間たちとであった。そもそも彼らはこんな砂漠で何していたんだ?荷物も何ももってなかったし。トーラたちはシャイロック家を恨んでいたんだよな……ということは、まさか……)
横目で見ると、トーラはまだすすり泣いている。
(……ほかの人に聞いてみるか)
リトネは運転席から降りて、後部の荷台に向かう。
そのとき、一人の男が降りてきた。
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