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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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仇に借り

幸いなことに、8人の男は怪我をしただけで、命に別状はなかった。襲った盗賊団が馬と馬車を破壊すれば、彼らは勝手に砂漠で死ぬと判断してとどめを刺さなかったこともある。
「さあ、飲んでください」
リトネは持ってきた水とポーションを与え、傷口を包帯で縛って手当する。
「ありがとう……」
助けられたアッシリア家の遺臣たちは思わずリトネに感謝するのだった。
「姫御もありがとうございます……」
遺臣たちから礼を言われるトーラだったが、内心焦っていた。
(ちくしょう……仇に借りを作っちまった!)
思わぬ事態に歯噛みするトーラだったが、リトネから声をかけられる。
「ところで、先生はこの人たちとお知り合いで?」
「ふえっ?あ、ああ。この辺りはもうアッシリア領の近くだからな。あたいの知り合いも多いんだよ」
「ふーん。ところで、姫御ってなんですか?」
さりげない口調だったが、鋭く聞いてくる。
「い、いや、あだ名みたいなもんというか……」
「そういえば、馬車を用意できたり、姫って呼ばれていたりして、先生って結構身分が高いんじゃ?」
リトネは鋭く突っ込んでくる。トーラは何か弁解しようとしたが思いつかず、ついに自分の身分を白状した。
「ああそうだよ。あたいは元大騎士アッシリア家の長女、トーラ・アッシリアだよ。悪いかよ!」
ついに居直ってふてくされたように座り込むが、リトネの反応は薄かった。
「ふーん。そうですか。なるほど……」
納得したように頷き、けが人の治療に戻る。
トーラは自分の正体を知っても態度が変わらないリトネに対して、不気味で仕方がなかった。
(な、なんだよこいつ。アッシリア家をつぶしたシャイロック家の跡継ぎなんだろ?絶対あたいたちが誘拐犯だとバレたと思ったのに!いや、それとも知っててわざと知らんぷりしているのか?)
疑いの目を向けるトーラだったが、リトネは別のことを考えていた。
(へえ……トーラって大騎士の子だったんだ。キチクゲームじゃ身分はただの騎士だったな。何かで没落して、苦労したんだろうな)
そんなことを考えているリトネは、まだトーラのことを疑ってはいなかった。
イーグルがたくさんの貴族や大騎士家、商人を改易したのは知っているが、リトネは直接かかわっていないのでアッシリア家がそのうちの一つだと知らなかったのだ。
疑いの目を向けてくるトーラに対して、リトネは聞く。
「それで、リンをさらったアベルのことを見かけた人はいませんか?」
それを聞いて、トーラは考え込む。
(人質がいなくなり、手下たちも怪我を負った、どの道は作戦は失敗だ。こうなったら!)
トーラは決心すると、リトネに話しかける。
「こいつらから聞いた。どうやら、お嬢ちゃんたちをさらったのは、そのアベルとかじゃなくて『砂漠の黒炎』だそうだぜ!やつらの中で、水色の髪をしたメイドと幼女を見たそうだ」
「なんだって!」
今までアベルの仕業だと思い込んでいたリトネは驚く。
「奴らは誘拐とか平気でやる外道集団だからなぁ。あんたの家をゆするつもりなんだろうぜ」
実に都合よく手のひら返しをする。
「許さない!やつらをぶっ潰してやる!」
「おう!あたいも手伝うぜ!」
まんまと罪をなすりつけることに成功したトーラは、便乗して声を張り上げた。
それを見ていたトーラの仲間たちはあきれる。
(姫御、意外と調子いいな……)
(変なことになっちまったけど、こうなったらアッシリア領の仲間にも声をかけて、あいつと協力して『砂漠の黒炎』を潰してやろうぜ)
トーラの思惑に乗る彼らであった。
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