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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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思わぬ事態

トーラは助手席で、ビクビクとおびえ続けていた。
怪音を発しながら進むトラックも気味が悪いし、馬の倍はでるスピードにも戸惑ったが、それよりもっと怖いのは隣にいる少年である。
「リンをさらうなんて……アベルの奴、ゆるさねえ。もしリンに指一歩でも触れてみろ!ち○こに輪をはめる程度じゃすまさねえぞ!切り落として、焼いて、砕いて……」
こんなことを道中ブツブツ言っているのである。リン誘拐犯である彼女は恐ろしくて仕方がなかった。
(やっぱやめときゃよかったか?でも、今更だしなぁ。この上はなんとかあの少女をさらった馬車がみつからないのを神に祈るしか……)
トーラは心の中で女神に祈る。もちろん彼女は迷わせようといろいろリトネにうその道を伝えていたが、彼は耳を貸さないのである。
「お、おい。前の道を右で……」
「そっちに向かうと沼があるみたいですね。遠回りでもいいから公道を通りましょう。たぶんリンをさらった連中も同じことを考えるはずです」
リトネは詳細な地図を見ながらそう判断する。まさか大貴族のお坊ちゃんが地図の見方を知っているとは思いもしなかったから、トーラはひたすら焦っていた。
(まずいぞ……この車のスピードなら、馬車での一日の差ぐらい簡単に追いつきそうだ)
万一リンをさらった仲間たちに追いつかれたら、激怒したリトネに皆殺しにされるかもしれない。
(くそ……隙を見てこいつを砂漠の真ん中に放置して、弱ったところで拘束する計画だったけど、あたいはこの車を操ることができないから無理だ。くやしいけど、力づくで拘束しようにもあたいを含めた10人程度じゃ、こいつに対抗できそうにない)
トーラは悔しそうに唇をかむ。
(神様、どうかあたいたちにご加護を……)
心の中で必死に女神に祈るが、やがて思いもしない光景が見えてきた。
砂漠の真ん中で、馬車が横転しており、傷ついた人間が何人も倒れていたのであった。

灼熱の太陽の光がさす砂漠の真ん中で、複数の男が呻いている。
彼らの近くには、バラバラに破壊された馬車の残骸と、馬の死体が転がっていた。
「お前たち!」
トーラは慌ててトラックから飛び降りて、駆け寄った。
「しっかりしろ!」
一人の男を抱え起こして、水を飲ませる。
「姫御……すいやせん。あの少女を『砂漠の黒炎』に奪われちまいました……」
彼は小声でつぶやいた。
「『砂漠の黒炎』だって!」
トーラは驚く。『砂漠の黒炎』とは、アッシリア家が没落して治安が緩んだ隙をついて、領都アリアの近くにあるピラミッドを根城にして勢力を拡大してきた盗賊団である。
彼らはアリアの代官と手を組み、やりたい放題やっていて、トーラたちとも敵対していた。
「くっ……どうしてこんなことに」
トーラは動揺する。完全に予定外の事が起こっていたからである。
「すいやせん……仲間の一人が裏切っていやして……やつらが待ち伏せしていました。後は俺たちがするから、心置きなく野たれ死ねって……」
「ちくしょう!」
誘拐計画の上前をはねられて、トーラは悔しがる。
そこにリトネが近づいてきた。
「しっかりしろ!大丈夫か?」
リトネは倒れた男を担いで、トラックの後部荷台に乗せる。
「お前……なにをやって……?」
「先生も手伝ってください!こんな直射日光があたる砂漠に放置していたら、熱中症で死んでしまいます」
そういってリトネは救助活動を続ける。
「くっ……今は仕方ないか!」
トーラは複雑な思いを封じ込め、仲間たちを運ぶのだった。
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