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逃亡
その時、誰かの声が聞こえる。
「ふふ。悔しいですか?」
「誰だ!」
はっとして顔をあげる。いつの間にか、牢の中に美しいメイドが入ってきていた。
「あなたがリトネぼっちゃんに負けたのは、ある意味当然ですわ」
「なんだと!?」
アベルはブライドを傷つけられて吼える。
「勇者は、それに見合った装備を身に着けないと力が発揮できません。所詮『鋼の剣』程度では、あなたの力を引き出すには不足」
「……そうなのか?」
自分が負けたのは武器のせいだという彼女の甘い言葉に、アベルは飛びつく。
そんな彼ににっこりと笑いかけ、メイドは耳元でささやいた。
「あなたに必要なのは、勇者が着ていたという伝説の武器や防具です」
「伝説の武器防具……」
アベルの顔に興味が浮かぶ。
「ええ。勇者アルテミックが装備していたという伝説の宝です。これはそのうちのひとつです」
メイドはどこからともなく、金色に輝く服を出してアベルに渡す。
それは体にピッタリと張り付く金属製のスーツのようなものだった。
アベルはおそるおそる手に取った。
「お、重い……」
その時、アベルの胸のダイヤがキラキラと輝く。徐々に鎧は軽くなっていった。
「最初は重く感じても、勇者の血に反応して軽くなったでしょ?」
メイドはそういいながら、かいがいしくアベルに鎧を取り付ける。
まるで誂えたように鎧はアベルの体にフイツトした。
「おお……力が沸いてくる気がする」
「ふふ。他の『天竜の兜』『天竜の手袋』『天竜の靴』を揃えなさい。そしてすべてを揃えたなら、『封印の山』に向かいなさい。そこに勇者アルテミックが使っていたといわれる伝説の剣があるでしょう」
メイドの言葉をきいているちに、アベルは自信を取り戻していった。
「わかった。すべての武器防具を揃えて、あいつをボコボコにしてやる」
「その意気です。さあ、こちらからお逃げなさい」
メイドに案内され、アベルは秘密の地下通路から脱出していった。
「さて……ふあぁぁぁ。眠くなりました、お部屋に帰って眠りましょう」
メイドはあくびしながら、自分の部屋に帰っていった。

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