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化け物
一時間後-
「はぁ……はあ…」
トーラは息切れして、地面にへたり込む。
対照的にリトネはピンピンしていた。
「はあ……もういい。今日の訓練はこれまでだ」
「先生!稽古をつけてくれてありがとうございます!」
リトネは一礼して去っていく。
(あいつ、化け物か?何発も打ち込んだのに……)
あとには呆然としているトーラが残されるのだった。
(いやーー『柔竜拳』ってすごいな!もしかして、俺って無敵なんじゃないかな?)
城の廊下を歩きながら、リトネはニヤニヤと笑う。全身をやわらかい布団で包んで殴り合いをするようなもので、いくら殴られても痛くも痒くもなかった。
そんなリトネだったが、ミルキーの部屋から出てきたマザーに捕まってしまう。
「遊びは終わったか?では、今日の修業に入るぞ」
問答無用でリトネの頭をつかんで、空に飛び上がる。
「えーと。師匠。参考までに聞きますが、『雲亢竜拳』とは何段階あるんですか?」
「いい質問だ」
マザーはにやっと笑う。
「全部で五段階だ!貴様はまだ二段階目に進んだにすぎん」
「ひでぶっ!」
ここまで死ぬ思いで修業したのに、まだ初歩だったと知ってショックを受ける。
「そんな……勇者アルテミックってどれだけ強かったんだよ……」
「まあ、最後の段階はアルテミックも極められなかったのじゃがな。完成はいつか現れる後継者に託すと笑っておったぞ。というわけで、貴様にはそこまで極めてもらわねばならん。それが我が父との約束だからな……」
マザーは心持ちせつなそうにそういった。
「というわけで、今日は北の氷河地帯で修業じゃ!」
「ひいいっ!」
問答無用で極寒の地につれていかれ、ハダカで放り出されるリトネだった。
数日後
「やばいぞこれは……」
トーラは内心、ひどく焦っていた。
リトネが戦っているうちに、だんだん自分の技を盗みだしたからである。
「くらえ!奥義『炎焼拳』」
炎の魔法を拳に纏ってリトネを殴りつけるが、やわらかい何かに止められる。
「え?」
「へえ……そんなやり方があるんだ。まてよ。なら召喚魔法を応用して……」
なにやらブツブツとつぶやいて、リトネが拳を握り締める。
その手は闇の魔力に満ちて、真っ黒に染まっていた。
「真似技『転送拳』」
リトネはわざとトーラをはずして、拳を石でできた城壁にぶつける。
すると、まるでチーズのように手の形に穴があいた。

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