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トーラとの修行
収穫祭が終わり、日常が戻ってくる。
リトネも内政と修業の日々が始まっていたが、以前とは少し異なっていた。
修業の師匠が、今まで妙齢の女性だったのが、リトネより少し年上の少女に代わったのである。
「ほら!もっと走れ!」
「はい!先生!」
リトネは城の周りを何十周も走らされているのに、全然勢いが落ちない。
新たに武術師範役についた少女、トーラ・アッシリアは、内心この弟子をもてあましていた。
(くそ!なんなんだよこいつは!さんざんしごいて苛めてやろうとおもっていたのに!)
城の周りを30周も走らせたのに、ケロッとした顔をしている。
トーラは気絶していたので、リトネとアベルの戦いをみていなかった。
ただの貴族のお坊ちゃんだと思っていた相手が、超人的体力を持っていたのである。
「先生!次は何をすればいいですか?」
幼い顔に純真な笑みを浮かべて、修業のお代わりをしてくる。
「つ、次はだな……えっと……城壁を登れ!」
高さ20メートルはある石組みの城壁を登るように命令してみる。
おじけづくと思ったが、リトネは笑顔を浮かべて従った。
「はーい」
そのままするすると城壁を登る。あっというまに一番上まで到達してしまった。
「先生!登りましたよ!次は?」
「あっ……くっ!なら、飛び降りろ!」
リトネのおびえる顔が見たくて、無茶な命令をしてしまう。
「はい」
すると、リトネはまったく躊躇せずに飛びおりた。
「ば、馬鹿!冗談だって!えっ?」
本当に飛び降りたのでトーラはびっくりしたが、リトネは何事もなく着地する。
地面に降り立っても、ポスッという変な音がするだけで、何事もおこらなかった。
「先生、次は?」
「次は……えーと!」
悩むトーラを見て、騎士たちはニヤニヤ笑っている。
「ほらみろ。もう坊ちゃんを鍛えられる存在なんて、マザーしかいないんだよ」
「坊ちゃんは化け物だからなぁ。いいように遊ばれているぜ」
「どうせあの子もリトネぼっちゃんのものにされてしまうんだろうな」
仲間内でそういって笑いあうのだった。
騎士たちのクスクス笑いを聞いて、トーラは真っ赤になる。
「つ、次は、実戦だ!」
上着を脱いで、タンクトップとパンツだけの姿になる。
それを見て、騎士たちから歓声が上がった。
「ヒュー!」
「スタイルいいなぁ。みろよあの胸」
「俺も相手してもらいたい」
下品な野次馬の声を聞いて、トーラはますます真っ赤になる。
「何をしている!かかってこい!」
八つ当たりのように、リトネを挑発した。
「いきます!」
リトネも上着を脱いで、殴りかかってくる。
トーラはやすやすとかわして、カウンターでリトネの鳩尾を突いた。
「ふぐっ!」
リトネが声を上げる。
カウンターを決めて、トーラに自信が蘇った。
「ふふふ……どんどんいくぞ!」
トーラは戦っているうちに、確信する。
(こいつ、格闘は素人だ。まともに人間相手に戦ったことがないに違いない。隙だらけだ)
トーラのかけたフェイントにあっさりひっかかり、何発もヒットを当てることができる。
(あたいの親父の仕返しだ!ボコボコにしてやんよ!)
嗜虐心を擽られたトーラは、遠慮なくリトネを殴りつけるのだった。

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