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アベルの狼藉
「ちくしょう……あとちょっとだったのに!」
準優勝の表彰台の上で、トーラは悔し涙を流す。
そこへ、貴賓室から降りてきたリトネが近づいてきた。
「トーラさんですね。すばらしい戦い、感服しました」
リトネは友好的な笑みを浮かべてトーラの手をとる。
彼女は嫌悪感を抑えて、必死に笑顔を浮かべた。
「い、いやその、負けちゃったし……」
「あなたの戦いを見て、確信しました。ボクの先生になってください!」
リトネは手を握って、トーラに頼み込む。
「へ?なんで?」
「あなたの戦う姿に惚れました。ボクに教えてください!お姉さま!」
リトネは目をキラキラさせながら、純真な少年を装って頼み込む。
「そ、そうかい。なら、あたいが鍛えてやるよ!」
リトネの手を握りしめ、トーラはほくそ笑む。
(馬鹿め。あたいの戦う姿に惚れただと?スケベ餓鬼め。とことん利用してやんよ!)
トーラが笑っているのを見て、リトネも笑い返す。
(ふふ。年上の女に取り入るのは、少年の純真な笑顔だ!落ちたな。それに彼女は強い者に憧れるツヨデレだから、修業中に俺の力を見せつければ……)
あははうふふと笑いあう二人をみていた婚約者たちは目を吊り上げる。
「……お兄ちゃん、なんか気持ち悪い」
「……あの顔は変なこと考えている顔」
「……なんでだろう。リトネ君むかつく。後で一発殴ろう」
ヒロインたちから冷たい目で見られてしまうリトネだった。
「そんなわけで、ゴローさん。ごめんなさい」
優勝商品の「鋼の剣」を渡しながら、リトネは謝る。
「いい。元々ワシごときにあなた様を教えられるとは思えぬ。だが、助けられた借りはいつか返す。この剣は仲間に託そう」
『鋼の剣』を受け取り、ゴローは笑顔を向けてきた。
「あの、あなた方だったらフリーパスで採用なんで、いつでもシャイロック家に来てください」
「ありがたい言葉だが、我々はもう少し冒険をしたいのでな。では、さらば……」
「ちょっと待て!!!」
その時、試合会場に大きな声が響きわたる。
金髪の前髪を隠した少年が、闘技場に上がってきた。
「その『鋼の剣』は、勇者である僕が使うべき剣だ!僕によこせ!」
いきなりゴローに向かって居丈高に命令する。
「おい!そこの坊や。こいつは正々堂々戦って優勝したんだ。負けたあんたが……」
トーラが諌めるが、アベルは聞く耳をもたない。
「うるさい。デカ女は黙っていろ!『勇光弾』
アベルの手から光弾が飛び出し、トーラとゴローを打つ。
「ぶへっ」
「ぐっ!」
戦いで消耗していた二人はよけきれず、光弾に撃たれてリングの下に転落して気絶した。
「おい!なんだあいつ!」
いきなりの蛮行に、見ていた観客たちが騒ぎ出す。
「あっはは。決勝の二人を倒した。だから僕が優勝だ」
アベルはそんなことなど気にせず、落ちている『鋼の剣」を拾った。

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