政府が一定の情報を秘密にする場合はあるだろう。だとしても、政府の得た情報は本来、国民のものだ。

 行政権をもつ政府に対する、立法府の監視機能が重要だ。だが国民の代表である国会が、その責任を果たせているとは、残念ながらとても言えない。

 安倍政権が、世論を二分したなかで特定秘密保護法を成立させたのは、13年12月6日。

 その2日前、首相は政府内の監視機関として独立公文書管理監と内閣保全監視委員会の設置を表明した。翌日、自民、公明の与党に加え、日本維新の会とみんなの党(ともに当時)の4党が国会に監視組織を設けることで合意した。

 いずれも参院の採決直前、駆け込みで決まったものだが、実効性には疑問符がつく。

 政府に置かれた二つの機関はいわば身内だ。唯一の外部の目である衆参両院の情報監視審査会も、3月末に初めて公表された年次報告書を見る限り、監視機能は極めて弱い。

 衆参の審査会に、政府が示した特定秘密指定管理簿の記述は「外国から提供を受けた情報」などあいまいで、指定が適正かどうか判断できる内容ではなかった。審査会委員が各省庁の担当者にただしても「答えは差し控えたい」など詳しい説明を拒む場面が目立った。

 審査会の対応ぶりも物足りなかった。衆院の審査会は政府の特定秘密の指定状況が適正かの判断には踏み込まず、運用改善も「勧告」より弱い「意見」として求めるにとどめた。

 特定秘密保護法と前後して、政権は国家安全保障会議(NSC)を新設し、安全保障関連法を施行した。めざすのは、自衛隊の運用を含む安全保障政策をめぐる裁量の幅を広げるとともに、判断の権限を首相官邸を中心に一元化することだ。

 その政府の判断の是非をチェックすべき国会はいま、与党の数の力が圧倒的だ。

 だからといって、政府のもつ情報に対する国会の監視機能が弱いままで良いはずがない。国民の目の届かないところで、政府の恣意(しい)的な判断が際限なく広がる恐れがぬぐえない。

 安倍政権は参院選への影響を避けようと、安保法の本格運用を先送りしている。例えば参院選後、政府が自衛隊の海外派遣に踏み切ろうとした時、国会として政府から情報を引き出し、その是非を判断できるのか。今のままでは心もとない。

 国会の機能をどう強化していくか。参院選後を見すえ、与野党が論じ合うべきテーマだ。