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在外邦人の安全 世界と危機感の共有を

 もはや日本人がどこでテロに巻き込まれてもおかしくない。バングラデシュで起きた人質テロ事件は、そのことを再認識させた。

     政府は、国際社会と危機感を共有し、連携しながら、テロ対策を強化する必要がある。

     2013年1月にはアルジェリアで日本人10人を含む人質40人が殺害され、15年1月にはシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)に拘束されたジャーナリストの後藤健二さんらが殺害された。

     テロを未然に防ぎ、在外邦人の安全を守るには、何が必要か。

     政府は昨年末、海外のテロ関連情報を集約するための「国際テロ情報収集ユニット」を発足させた。今回の事件ではこのユニットから支援チームが現地に派遣された。

     5月の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)では、テロ対策の行動計画が採択された。

     取り組むべきメニューは、国内的にも国際的にも出されている。

     ・イスラム過激派などに関する情報収集や分析、出入国の管理などの水際対策を強化する。

     ・重要施設や不特定多数の人が集まる空港・駅・劇場などのソフトターゲットの警戒や警備を強める。

     ・官民連携、国際協力を進める。

     ・在外邦人の安全確保のため、情報発信や注意喚起を強化する。

     どれも重要だ。だが、残念ながら今回のようにソフトターゲットを狙ったテロを完全に防ぐのは難しい。政府が昨年5月の報告書で強調した「言語・宗教・現地情勢等に精通した専門家の育成・活用」など、時間がかかるものもある。

     対策を強化しながら、不十分な点はないか、検証しつつ進めていくしかない。その前提として、テロの温床となる環境を根絶するための地道な外交努力の積み重ねが重要だ。

     今回の事件では、政府の危機管理も課題となっている。

     菅義偉官房長官は、事件に日本人が巻き込まれた可能性があるとわかった段階で、新潟に参院選遊説に向かった。そのころ現地では、バングラ治安当局の部隊がレストランに突入していた。菅氏は約8時間半、官邸を留守にし、その間、国家安全保障会議(NSC)を欠席した。

     人質の多くは治安部隊が突入する前に殺害されていたとの情報もあり、日本政府が政治的な判断をする余地は少なかったかもしれない。だが、仮に事件が膠着(こうちゃく)状態に陥っていたら、どうだったろう。

     菅氏は「首相が官邸に残って陣頭指揮をしており、私の代行も置いているから、全く問題ない」と強弁したが、内閣の要である官房長官は代わりがきかない。

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