電力の小売りが自由化されて、電気を選べる時代になった。原発に反対か、賛成かを争う以上に、私たちは、私たちの未来を照らす電源を私たち自身で選びたい。
四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の原子炉に、核燃料を入れる作業が終了した。今月二十六日の再稼働をめざしている。
その一部は、危険なプルトニウムを用いるプルサーマル発電だ。
伊方原発の近くには、中央構造線と呼ばれる世界最大級の断層帯が横たわり、南海地震の危険が指摘されている。
日本一細長い佐田岬半島の付け根に立地し、周囲は切り立った崖の連続、原発より西側に暮らす五千人の住民は、特に避難に不安を覚え、近くで起きた熊本地震以降は一層、懸念を募らせている。
「原子力規制委員会が安全と認めた原発は再稼働」。政府の基本方針だ。しかし当の規制委は「安全とは言っていない」と言う。
責任の所在をあいまいにしたままで、現場は着々と再稼働に向かっている。
二年前に閣議決定された国のエネルギー基本計画に、そもそもの矛盾がある。
「依存度を可能な限り低減させる」と言いながら、原発を「重要なベースロード(主要な)電源」と位置付けてしまっている。
昨年決まった二〇三〇年度の電源構成(ベストミックス)では、総発電量の20〜22%を原発に“依存”するという。
福島原発事故を教訓に決められた「原則四十年」という原発の法定寿命も、いきなり骨抜きの様相だ。寿命をきちんと守っていると、その比率は維持できない。
稼働させれば当然増える核のごみ。捨て場所は、当分見つかりそうもない。
現在稼働中の原子炉は、九州電力川内原発(鹿児島県)の二基だけだ。それでも3・11以来初めて、政府の節電要請のない夏になる。大口需要企業の間に省エネが定着しつつあるからだ。
3・11後、原発の安全対策費用が高騰したこともあり、欧米では、風力や太陽光など再生可能エネルギーへの転換が加速した。
原発依存か、再生エネ・省エネか。福島の教訓を守るのか、捨てるのか。電力は足りるのか−。各党は選択肢を明らかにして、電力消費者である国民の疑問に答え、判断を仰ぐべきではないか。
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