空港

高橋

ふうっ、久々の日本だぜ。

颯爽と空港に降り立った高橋。

高橋

・・・シンガポールに比べると、この国の空気はカラっとしてやがる。

高橋

さて・・・と。
ボーンのアニキがいる場所は、栃木の須原だったか。

高橋

しかし、まさかボーンのアニキがこのオレに連絡をよこすなんてな。

フッ、ハイパーWebデザイナーもとい、ハイパーWebディレクター高橋の成長した姿を見せてやるぜ・・・!



その頃、須原では

須原の館内

ボーン

約束の3日目だ。
サツキにムツミ、おまえたちの考えた記事のアイデアを聞かせてもらおう。

サツキ

は、はい!

ヴェロニカ

今回、ふたりに考えてもらったアイデアのテーマは「須原の温泉地としての魅力を、幅広いユーザーに気付いてもらうための記事」だったわね。

ムツミ

(・・・へっ、ボーンのおっさんはオレに「論理的思考を大切にしろ」とか言ってたが、オレの記事のアイデアを聞けば舌を巻くはずだぜ)

ボーンを前にしたムツミとサツキ。 ムツミはどこか自信ありげで、サツキは不安げにドキドキしている

ボーン

まずは、ムツミ、お前のアイデアから聞くとしよう。

ムツミ

おっ、オレから発表するってわけね。
いいぜ。

ムツミ

オレの考えた記事のアイデアはこれさ!

『息を飲むほどに美しい!国内の美しすぎる温泉旅館写真まとめ』

息を飲むほどに美しい!国内の美しすぎる温泉旅館写真まとめ

ボーン

・・・。

ヴェロニカ

温泉旅館写真まとめ・・・。

なるほどね、国内の温泉旅館の写真をまとめた記事を作り、その中に須原の旅館の写真も入れるってことね。

ムツミ

ああ、そうさ。
旅行に興味のある人たちにとって、旅先や宿泊先の写真ってのは大事だろ?

美しい温泉旅館の写真を集めた記事なら、きっと見たいと思うはずさ。

そして、その記事の中に須原の旅館の写真が掲載されていれば、須原の魅力も十二分に伝わるってわけさ。

サツキ

へええ、ムツミの記事のアイデア、素敵ね。
たしかにそんな記事があれば、見てみたいわ。

ムツミ

へっへー。
ちなみに、この記事なら、「温泉旅館」というキーワードで検索する人の検索意図もカバーできると思うぜ。
「温泉旅館」というキーワードで検索する人たちは、特定の旅館を探そうとしているわけではなく、“国内にどんな温泉旅館があるのか?”を知りたがっているわけだからな。

サツキ

たしかに・・・!

ムツミ

(へへへ・・・。
決まったな・・・!)

ボーン

・・・ちなみに、その美しい写真とやらはどうやって集めるんだ?

ムツミ

いい質問、サンキュ!
それもちゃんと考えてますよ~っと。

全国の温泉旅館のサイトや、温泉愛好家のブログから、写真を『引用』して使わせてもらうのさ。

ヴェロニカ

!?

ボーン

・・・。

サツキ

引用・・・?

ムツミ

ああ、そうさ。
前に見つけた「TRAVEL UP」ってメディアがあっただろ?
あのメディアではたくさんのキレイな写真が使われていた。
で、どうやってあんな写真を集めているんだろと不思議になって調べてみたら、どのページも『引用』という方法を使って写真を掲載していたのさ。

TRAVEL UPの記事のアップ。「引用」という表記があり、写真が掲載されている

サツキ

そうなのね。
その『引用』って方法を使えば、他人のブログの写真を掲載してもいいんだ。

ムツミ

そうみたいだぜ。
「TRAVEL UP」以外にも、いくつかのキュレーションサイトで同じような方法で写真が掲載されていたからな。

サツキ

キュレーションサイト?

ヴェロニカ

いわゆる“まとめサイト”のことね。

説明しよう!

「キュレーションサイト(通称:まとめサイト)」とは、インターネット上にあるコンテンツ(文章、画像、動画など)をまとめたサイトのことである。

コンテンツをまとめる人を「キュレーター」と呼び、大規模なキュレーションサイトには大勢のキュレーターが存在し、多くの“まとめ記事”が作られている。

ちなみに、キュレーターという言葉は、元々はアートの世界で使われていた言葉であり、美術館などで開かれる展示会などを企画する人のことを指していた。

アート界のキュレーターもWeb界のキュレーターも、基本的には“世に眠る良質なコンテンツをより多くの人に知ってもらいたい”という思いのもとで活動をしているが、Web界のキュレーターの中には、自身が関わるキュレーションサイトにPVを集めることで手に入る“広告収入”のために活動しているケースもある。

サツキ

へええ・・・。
そんなサイトがあるんですね。

ヴェロニカ

そうね、今、キュレーションサイトが増えているわ。
そうそう、さっきムツミさんも言ったとおり、「TRAVEL UP」というサイトもキュレーションサイトのひとつよ。

ボーン

・・・では、サツキのアイデアも聞こう。

ムツミ

(あれ・・・?
オレのアイデアに対する反応それだけ・・・?)

サツキ

え、えと・・・。
私は「マインドマップ」を使って記事のアイデアを考えてみました。

ヴェロニカ

あら!
そうなのね。

サツキ

は、はい。
私、企画とかを考えることが苦手なので、自分のアイデアをじっくり掘り下げて考えられるマインドマップという方法が合っている気がしたんです。

ボーンさんと初めて会ったとき、ボーンさんが作られたマインドマップを見て、「こんな方法もあるんだ!」って感動して・・・。

見よう見まねなので、自分のマインドマップの作り方が正しいかどうかはわからないんですが・・・。

ヴェロニカ

大丈夫よ。
マインドマップの使い方は人それぞれだから。

サツキ

ありがとうございます・・・!

サツキ

で、では、お見せします。
これが私の考えたアイデアです。

サツキのマインドマップ

ヴェロニカ

・・・しっかりまとまっているじゃない!

ボーン

・・・。

サツキ

(ドキドキ・・・)

ボーン

・・・サツキ、よく考えたな。
いいアイデアだ。

サツキ

・・・えっ・・・!
あ、ありがとうございます・・・!!

ムツミ

(あれっ!?
アネキのアイデアが褒められてる・・・。
ちょっ、オ、オレのアイデアはどうなんだよ・・・!?)

ヴェロニカ

サツキさんのアイデアは、須原で働く人たちに、あえて須原以外の温泉地の中からオススメの旅館を教えてもらうというものね。

サツキ

は、はいっ・・・!

ヴェロニカ

着眼点が素敵だわ。

ボーン

なぜこのアイデアに至ったのか、おまえの口から詳しい説明を聞くとしよう。

サツキ

は、はいっ・・・!

え、えと・・・。
私は須原の地で旅館を経営していますが、お客様と同じように旅行をすることが大好きです。
多分、私だけでなく、旅館の仕事に関わるほかの人たちも、旅行が好きなんだと思っています。

そう考えたとき、旅館の仕事に関わる人たちが、自分が好きな温泉旅館についてプロの視点で話をするのって面白いかもと思ったんです。

ヴェロニカ

なるほどね。

サツキ

そして、たとえば、“須原の女将が選んだ「有馬温泉」のオススメ旅館情報”や、“須原の旅館の支配人が考える「別府温泉」のオススメ旅行プラン”というような記事があったら、とても読んでみたいなって。

普通は、有馬温泉に関する記事だったら、有馬温泉に関わりのある人たちがその魅力を語ることが多いと思うんですが、あえて外部の人がオススメを語ることで、客観的な視点が加わって、その地で働く人たちが気付いていない魅力を発信できるんじゃないかな、って思ったんです。

ヴェロニカ

もし、その記事が有馬温泉の情報を知りたい人たちにとって有益な内容になれば、「有馬温泉」というキーワードで上位表示できると思ったわけね。
「有馬温泉」というキーワードの月間検索回数は135,000回だから、もし上位表示できたら、すごいアクセスが期待できるわ。

キーワードツール

サツキ

はい・・・!

そして、その記事の中で、「有馬温泉もいいけれど、須原温泉もいいよ」といったちょっとした宣伝が入れば、須原に興味をもってくれる人が増えると思いました。

ヴェロニカ

いいアイデアだわ。
マインドマップを使ってしっかり掘り下げて考えただけあるわ。

サツキ

ありがとうございます・・・!
今回、マインドマップという方法を試してみて、物事を深く掘りさげることで生まれるアイデアがあるって気付けました。

ヴェロニカ

ふふふ、そこにたどり着けたのなら、大きな成長ね。

ムツミ

(ちょっ・・・、なんでヴェロニカさんもボーンのおっさんもアネキのアイデアばかり褒めてるんだよ・・・!?
アネキの記事なんて、須原にいる人たちに「須原以外だと、どの温泉が好きですか?」っていちいち聞いて回る必要があるわけだから、作るのが大変じゃねーか・・・)



ボーン

・・・さて。
ふたりの記事のアイデアを聞かせてもらったわけだが、あらためて感想を言わせてもらおう。

ムツミ

・・・!

サツキ

(ドキドキ・・・!)

ボーン

サツキのアイデアは合格だ。

しかし、ムツミ、お前のアイデアはダメだ。

ムツミ

え!!?
な、なんでだよ!!?

ボーン

お前は世の中のコンテンツに“敬意”を払っていないからだ。

ムツミ

なっ・・・!!?

サツキ

“コンテンツに敬意を払っていない・・・!?”

ボーンに名指しされ驚くムツミ

ムツミ

ど、どうしてだよ!?
オレの考えた記事は、読み手が「読みたい!」と思う記事のはずだぜ!?
一体、オレの記事の何がいけねえんだ!?

ボーン

お前はさっき、外部のサイトから写真を『引用』すると言ったな。
その引用はどのようにしておこなうんだ?

ムツミ

どのようにしておこなうって聞かれても・・・。

「TRAVEL UP」ってサイトみたいに、ページに掲載した写真の下に“出典”のリンクを貼るつもりだけどな・・・。

ボーン

・・・ちなみにその引用は、写真の著作者にきちんと許可をとっておこなうのか?

ムツミ

えっ・・・?

ちょ、ちょっと待ってくれよ・・・。
いちいち許可なんてとっていたら大変じゃねーか。
出典さえ明記していれば、連絡なんてしなくても大丈夫じゃねーのか?

ボーン

やはりな。

ムツミ、お前は、“コンテンツの作り手への敬意”に欠けている。

ムツミ

作り手への敬意・・・!?

ヴェロニカ

ムツミさん、よく考えてみて。

たとえば、あなたが自分のブログに掲載するための写真を撮影したとするわね。

もし、その写真を撮影するために、たくさんの時間をかけて準備をしたり、経費を使っていたとしたら、自分の写真が勝手によそのWebメディアに掲載されたらどう思うかしら?

ムツミ

・・・。

ヴェロニカ

いわゆるWebメディアの多くは、記事に集まったアクセスによって広告収入を得ている。
もし、ムツミさんの写真がどこかのメディアに無断で使われるということは、相手のアクセスアップ、ひいては、相手の売上げのために使われたってことになるのよ。

ムツミ

・・・!!

ヴェロニカ

もちろん、自分の写真をより多くの人に見てもらえるという意味では、無断で掲載されたとしても、それはそれでメリットがあるのかもしれない。

でもね、モラルのないWebメディアの場合、その写真を誰が撮影したかなんて積極的に宣伝してくれないし、Webメディアに訪れる人たちも、その写真を誰が撮影したかなんて興味をもたないわ。

だって、この「TRAVEL UP」のサイトを見てみて。
こんな小さくて不親切なリンク、一体、誰が気付くと思う?

小さくて不親切なリンクの記事

ムツミ

・・・た、たしかに・・・。

サツキ

このリンクの存在、今言われて気付きました・・・。
こんな場所にリンクがあったんですね・・・。

ヴェロニカ

そうよ。
言われないと気付かないような場所にあるリンク。

もし、「TRAVEL UP」がコンテンツの作り手への敬意に溢れているサイトなら、こんなリンクの設置の仕方はしないはずよ。

ムツミ

・・・。

ボーン

世の中にあるコンテンツは、作り手の汗と努力の結晶だ。

ムツミ。
プロのミュージシャンを目指して自身の作品を発表してきたお前なら、作り手の気持ちがわかるはずだ。

クリエイターの努力について語るボーン

ムツミ

・・・あ、ああ・・・。

もし、自分の作った曲がどこかで勝手に使われたら、それはそれでうれしいかもしれないけれど、その際に「曲名」や「アーティスト名」について何も告知されなかったとしたら、モヤモヤした気持ちになるな・・・。

サツキ

ムツミ・・・。

ボーン

・・・ちなみに、誤解のないように言っておくが、『引用』という行為自体は、法的に認められた行為だ。
「著作権法」の第32条にも以下のような条文がある。

公表された著作物は、引用して利用することができる。
この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

ムツミ

“引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない”・・・!?

正当な範囲内って、どんな範囲を指すんだ・・・?

ボーン

カンタンにいえば、自分のコンテンツ内に他者のコンテンツを引用する際、コンテンツの主従関係が逆転しない範囲だといえよう。
たとえば、引用だけで構成されているようなコンテンツは正当な範囲内とはいえんかもな。

ムツミ

えっ・・・!?
そ、それって、引用だらけで構成されているキュレーションサイトとかってどうなるんだ?
法的にNGってことか?

ヴェロニカ

私たちは法律の専門家じゃないから明言はできないけれど、おそらくはグレーね。
キュレーションサイトにある“まとめ記事”のすべてが、引用の要件をすべて満たしているようには思えないから・・・。

ボーン

もし、どうしても相手のコンテンツを借りたいのであれば、作り手たちの心を不快にさせずに引用することが理想だといえる。

ムツミ

作り手たちの心を不快にさせずに引用する・・・。

ヴェロニカ

たとえば、もし、ムツミさんが誰かから「ムツミさんの写真がとても好きなので、自分のブログで引用させていただいてよろしいですか?」という丁寧な連絡を受けたら、無断で掲載されるよりも心証的にはいいでしょ?

ムツミ

たしかに・・・。
そんなふうに問合せがあったら、イヤな気はしねえな・・・。

ボーン

つまり、それが“作り手への敬意”だ。

ムツミ

“作り手への敬意”・・・。

ボーン

今回、おまえたちが立ち上げるオウンドメディアは、須原のブランディングも兼ねている。
そのブランディングにおいては、今後、クリエイターやアーティストたちの力を借りることも大切になるだろう。
そうなったとき、おまえたちのメディアが彼らの心を踏みにじるような運営をしていたら、彼らはどう思う?
力を貸してくれると思うか?

法的にOKかNGというのは社会のルールを整備するために必要だが、人間として生きていく上でもっと大切なことは、“相手への敬意”だ。

ムツミ

!!

ボーン

今後、おまえも誰かのコンテンツを引用するときがくるかもしれない。
ただ、そのときは、その引用を当然のものとして考えるのではなく、コンテンツの作り手への敬意、すなわち“オマージュ”をもって引用するようにしろ。

ムツミ

・・・お、おう・・・!!

ムツミ

・・・ん?
ちょっと待てよ。

以前、うちで書いた「栃木の温泉旅館の選び方」って記事、ほかの旅館の写真を引用していたよな・・・。
あれって、大丈夫だったのかよ?

ブラッシュアップ後の記事

ボーン

あの記事か。
あの記事に掲載している写真はすべて、サツキが各旅館の許可を取ってくれていたぞ。

ムツミ

えっ・・・!!?
そ、そうだったのか・・・!!

サツキ

あ、なんとなく許可をとっておいたほうがいいのかなって・・・。
ムツミに伝えるのを忘れていてゴメンなさい。

ヴェロニカ

フフフ、どの旅館も「自分の旅館の宣伝になるのなら」って快くOKしてくれたのよね。

しかも、ふたりとも、気付いてた?
あの記事が公開されたとき、そこで紹介されていた一部の旅館さんがFacebookなどであの記事をシェアしてくれたのよ。

サツキ

えっ・・・!!?

ムツミ

全然気付かなかった・・・。

ヴェロニカ

相手のコンテンツに敬意を払っていれば、素敵なことは起こるものよ。
覚えておきなさい。

サツキ ムツミ

はいっ・・・!!!



ボーン

よし、『引用』に関する話はこれくらいにしておく。
今から、第一弾の記事を決めるぞ。

ボーン

第一弾は・・・。

サツキ

(ドキドキ・・・)

ムツミ

(・・・)

ボーン

第一弾は・・・サツキ。
お前のアイデアでいく。

サツキ

私のアイデア・・・!

ボーン

ムツミ、異論はないな?

ムツミ

お、おう・・・!

須原の館内

ボーン

よし、記事のアイデアは決まった。
・・・次はその記事を格納する容れ物、すなわち、“サイトのプランニング”に入る。

サツキ

サイトのプランニング・・・。
あ、それって、オウンドメディアのデザインのことでしょうか・・・?

ボーン

そうだ。
デザインだけでなく、CMSの選定、解析ツールの選定など、オウンドメディアの運営に関わるすべての準備をおこなう。

ムツミ

た、大変だな・・・。

サツキ

(ボーンさんがこれだけ熱心に教えてくださるってことは、今回のオウンドメディアがいかに重要かってことがわかる。
・・・ただ、私たちの日々の業務の合間にどこまで対応できるかがちょっと不安だわ・・・)

ヴェロニカ

・・・サツキさん、大丈夫?
不安そうな顔をしているけど。

サツキ

あっ、い、いえいえ!
だ、大丈夫です!

ボーン

・・・心配するな。
オウンドメディア運営がおまえたちの負担とならないよう、“強力な助っ人”を呼んでおいた。

ムツミ

えっ・・・!?

サツキ

強力な助っ人・・・?

ボーン

・・・10時53分。
そろそろ到着する時間だな。

ガラララッ!

高橋(シルエット)
ボーンのアニキ!!
久々だな!!

サツキ ムツミ

!?

ヴェロニカ

高橋君!
男っぽくなったわね。

高橋参上

高橋

ヴェロニカさん、炎の男、高橋。
ただ今、凱旋しました。

ボーン

高橋、よく来てくれたな。

高橋

ボーンのアニキからの頼みだものな。
断れるわけないさ。

ボーン

シンガポールの案件は片付いたのか?

高橋

へへっ、5時間前、きちんと納品してきたさ。
・・・空の上からな。

ヴェロニカ

フフフ、国際線のWi-Fiを使ったのね。
世界を股にかける男になったわね。

高橋

いえいえ、オレはまだおふたりの足元にも及ばないですよ。

サツキ

あの・・・ボーンさん、そちらの方は?

ボーン

この男の名は「高橋」
オレが以前にコンサルティングをしていた企業に勤めていた元Webデザイナーだ。

サツキ

ボーンさんが以前コンサルティングをされていた会社の元Webデザイナーさん・・・?

高橋

フフッ、Webデザイナーもとい、今はWebディレクターですけどね。

ムツミ

(なんだこの人・・・、黒のベストがなんともいえないセンスなんだけど、妙な自信を感じさせる・・・)

高橋

・・・しかし、ボーンのアニキから連絡をもらったときはビックリしたぜ。

ヴェロニカ

あら、私たちも高橋君がフリーのWebディレクターになったって聞いたときはビックリしたわよ。

高橋

フフフ。

実はオレ、以前、ボーンのアニキのコンサルティングを受けてから、Webマーケティングの楽しさってやつを知ったんです。

元はWebデザイナーだったオレですが、Webデザインの仕事はWebマーケティングの中の一部。
自分のつくったWebデザインが商品の売上げにどう影響するのかを調べたいと思うようになってから、Webマーケティングにも興味をもち、Webディレクターへの転身を決めたんです。

あ、ちなみに、「マツオカ」のサイトの管理は今もオレが請け負ってますんで、安心してください。

説明しよう!

「マツオカ」とは、以前、ボーンがコンサルティングをおこなった、都内のオーダー家具店のことである。

当時、マツオカは、ガイルマーケティングという悪徳SEO会社によるSEO施策によって、検索エンジンのペナルティを受け、Webからの集客が激減していた。
そんなマツオカのサイトを、ボーンは自身の頭脳と強靱な肉体を使い、マツオカの当時の社員だった高橋たちとともに再生させたのだ。

前回の戦いの回想

詳しくは、前作「沈黙のWebマーケティング」を読み返すことをオススメする!

ボーン

・・・そうか。

高橋

・・・めぐみさんも元気だぜ。

ボーンのアニキ、めぐみさんとはあれから会ってねーのか?

めぐみとの思い出

ボーン

・・・ああ。

ヴェロニカ

高橋くん、ボーンはね・・・。

高橋

・・・ヴェロニカさん、わかってますよ。

ボーンのアニキ、あんた、めぐみさんをあのときのような危険な目に遭わせないために、あえて距離を空けているんだな。

ボーン

・・・。

高橋

あんたのことだ、まあ、そんなことだと思ってたぜ。

・・・ちなみにオレ、めぐみさんからあんたへの伝言を預かってきた。

ボーン

・・・!

高橋

“いつでも顔を見せに来てください”ってな。

ヴェロニカ

(めぐみさん・・・)

ボーン

・・・めぐみが元気なのであれば、それでいい。

高橋

・・・フッ、あんたらしいな。



高橋

さて・・・と。
ボーンのアニキ、たしか今回の依頼は、この「みやび屋」って旅館のオウンドメディアの立ち上げだったよな。

ボーン

ああ、そうだ。

ヴェロニカ

オウンドメディアの方向性に関しては3日前にメールで送っておいたけれど、どんなメディアにするか考えてくれたかしら?

高橋

・・・フフフ、任せてください。

記事の詳細はまだ決まっていないと聞いていましたが、立ち上げに必要な準備はしてきたつもりです。

ボーン

・・・ほう。

高橋

・・・さあ、ふたりとも、新星「高橋裕太」の仕事を見てくださいよ。

これが・・・Webディレクター高橋の・・・Webプランニングだッ・・・!!

高橋

はぁああああああ・・・!!!

プランニングシート!!

プランニングシート!!

サツキ

きゃあああっ!!

ムツミ

くっ!!
なんだこの風は・・・!?
風とともに無数の紙が空を舞っているッ・・・!!

ヴェロニカ

これは・・・、プリントアウトした企画書・・・!?

高橋

うおおおおおお・・・!!!

プランニングシート!!

プランニングシート!!

プランニングシート!!

ムツミ

紙が多すぎて前が見えないっ・・・!!

高橋

うおおおおおおおお!!!



高橋

(・・・はあっ、はあっ・・・。
・・・決まった・・・!)

ヴェロニカ

・・・た、高橋くん・・・。

高橋

ボーン

・・・お前、紙と一緒に自分のノートPCも投げてるぞ。

高橋

え・・・?

壊れたノートPC

高橋

ぎゃあああああああああ!!!!!
オレのノートPCが・・・!!!

24回ローンで買ったのに・・・!!!

ヴェロニカ

高橋くん・・・。

ボーン

高橋、紙は大切にするものだ。
ノートPCもな。

サツキ

・・・。
(世界を股にかけているのに24回ローンなんだ・・・)

ムツミ

(・・・だ、大丈夫かな、この人)



そして、10分後

ボーンとヴェロニカ、ムツミとサツキと高橋。5人とも、高橋が触っているムツミのノートPCの画面を見ている

高橋

さてと・・・。
気を取り直して、オウンドメディアのプランニングについて解説していきますかね。

サツキ

あ、さっきバラまかれた企画書は見なくていいんですか?

高橋

あ、大丈夫です。
今から画面に映すPDFファイルのほうが見やすいですから。

ムツミ

(・・・え・・・じゃあさっきの技は一体・・・)

高橋

それにしても、なんかすいませんね、私のノートPCが壊れてしまったがために、こちらのPCをお借りしてしまって。

サツキ

い、いえ、大丈夫ですよ。

ムツミ

・・・あ、ちなみに、そのPCのキーボード、諸事情によりめっちゃ重いので気をつけてください。

特製の特厚キーボード

高橋

うん・・・?
これはたしかに重そ・・・エンターキーをクリッ・・・ふぬぬぬぬぬぬぬ!!!

カチッ

高橋

(はあっ、はあっ、はあっ・・・)

高橋

で、では、解説を始めます。

今からお話しするプランニングは、基本的には以下の7つのステップに当てはめてお話していきます。

オウンドメディアの立ち上げに必要な7つのステップ

  1. コンセプトの決定
  2. CMSの選定
  3. レンタルサーバーの選定
  4. サイトデザイン
  5. 記事のプランニング
  6. 記事の作成
  7. 解析ツールの導入&運用
高橋

オウンドメディアを運用するときは総合力が大事です。

「こういう点に気を付けておいたほうがよい」ということを最初から知っているのと知らないのとでは、その運用の成果に雲泥の差が生まれる可能性があります。

今からお話しする内容の中には、もしかしたら難しく感じる知識もあるかもしれませんが、ひとまずはオレの話を最後まで聞いてください。

サツキ

わかりました・・・!

1.サイトのコンセプトの決定

まずは、今回のオウンドメディア全体のコンセプトです。

  1. どんな目的で立ち上げるのか?
    →須原の温泉地のことを多くの人に知ってもらう
    (須原全体のブランディング)
  2. どんな記事を投稿していくのか?
    →須原の温泉地の魅力を気付かせるような記事を投下する
  3. どのように運用していくのか?
    →月に2~4本の記事を投稿する
  4. どのように集客していくのか?
    →検索エンジンからの集客(SEO)に力を入れる、インフルエンサーを巻き込んでいく
  5. どんなコンセプトにするのか?
    →日本国内の上質な旅を再発見するメディア
  6. どんなサイトタイトルにするのか?
    →みやび旅
サツキ

みやび旅・・・素敵なタイトルですね・・・!

高橋

フフフ、ありがとうございます。
この「みやび旅」という4文字の中には、いろいろな思いがこめられています。

まず、「みやび旅」の「みやび」は「みやび屋」という屋号から拝借しました。
みやび(雅)には“上品で優美なこと”という意味がありますよね。

この言葉をタイトルに用いることで、メディアのコンセプトを“日本国内の上質な旅を再発見するメディア”とし、読み手にオトク感を与えていきたいと考えています。

ムツミ

それ、なんかカッッコイイな。

高橋

フフフ、「みやび旅」へアクセスすれば旅行がもっと素敵になる、そんな思いを込めたコンセプトです。

高橋

ちなみに、先ほどあげたリストの中に“どのように集客していくのか?”という項目がありましたよね。

サツキ

はい、ありました。

高橋

実は、オウンドメディアの立ち上げでもっとも大事なのがその項目です。

なぜなら、“どんなによいコンテンツも、見てもらわなければ意味がない”からです。

サツキ

!!

高橋

とくに今回のオウンドメディアの場合、その目的が須原全体のブランディングである以上、できるだけ多くの人に記事を読んでもらうことが重要です。

それを実現するためには、記事の内容を工夫するだけでなく、いわゆる“露出経路”も意識しておく必要があるのです。

ムツミ

露出経路・・・?

高橋

ええ。
たとえば、SEOを意識することで検索エンジン経由で露出したり、「インフルエンサー」を巻き込むことで、インフルエンサー経由で露出することなどです。

サツキ

インフルエンサー・・・?

高橋

はい、インフルエンサー(influencer)、すなわち、“ネットで影響力のある人”たちのことです。
彼らをうまく巻き込むことができれば、オウンドメディアは短期間で成功するでしょう。

ムツミ

そんな人たちをどうやって巻き込んでいくんだ・・・?

高橋

方法はいくつかあるので、おいおいお教えします。
ただ、どんな方法をとるにしても、大切なのはインフルエンサーに「敬意」をもって接していくことです。

ムツミ

(敬意・・・って、ボーンのおっさんが言ってた言葉と同じだな・・・)

高橋

インフルエンサーをうまく巻き込むことで、ソーシャルメディア上に記事が爆発的に拡散します。
その結果、アクセスが殺到するだけでなく、SEOにおいても高い効果を得ることができるでしょう。

ただ、インフルエンサーを巻き込む際は、彼らを起点に発生する瞬間的かつ膨大なアクセスに耐えられるだけの準備が必要となってきます。

サツキ

瞬間的かつ膨大なアクセス・・・?

高橋

はい。
インフルエンサーがTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアで「みやび旅」の記事をシェアすれば、おそらく、ものすごいアクセスが流れ込んできます。
そのアクセスをさばききれるかどうかが、ひとつのカギなのです。

実はオウンドメディア運営で失敗する理由の多くが、せっかく発生した膨大なアクセスをさばききれずに、アクセスを取りこぼしてしまうことです。
だから、そうならないよう、前もって準備をしておきます。

ムツミ

その準備って一体・・・?

高橋

フフフ。
それについてはこのあとの解説の中でお答えしていきます。
ひとまずは続けて「CMSの選定」の話に移りましょう。

サツキ

は、はい・・・!

2.CMSの選定

CMSとは「コンテンツマネジメントシステム」という言葉の略で、その言葉のとおり、コンテンツ、すなわち記事を投稿していくためのシステムのことです。

いわゆる、ブログのようなシステムだと考えてください。

今、ネット上にはたくさんのCMSがありますが、どのCMSを選ぶかによって、集客力も変わってきます。

たとえば、CMSを選ぶポイントとしては、以下の3つの点をクリアしておく必要があります。

  1. 記事の更新がしやすいこと
  2. セキリュティが安心なこと
  3. 動作が軽いこと

まず大事なことは、“記事の更新がしやすいかどうか”ということです。

Webで公開する記事の場合、いわゆる紙の記事などと比べて、何度でも編集・公開ができるという利点があります。
よって、公開した記事の反応を見て、その内容を都度ブラッシュアップしていくことは重要です。

ただ、そのブラッシュアップをおこなう際、記事の更新がしにくいCMSでは、せっかくのWebの利点がつぶされてしまいます。

記事の更新に時間がかかってしまうと、せっかくのタイミングを逃してしまうかもしれません。
記事の更新がしやすいかどうかはとても大切なのです。

たとえば、記事を更新する際はPCからだけでなく、移動中にスマホでおこなうこともあるでしょう。
そうなった場合、スマホで更新しやすいかどうかも重要となってきます。

また、次に気をつけるべきは、“セキュリティ的に安心かどうか”です。
最近、クラッカーと呼ばれる攻撃者にCMSが攻撃され、そのCMSに投稿されていた記事が書き換えられる被害が増えています。
サイトにコンピューターウイルスが仕込まれ、サイトに訪れたユーザーのマシンにウイルスを感染させるなんてケースもあるのです。
そうなれば、最悪、サイト管理者の責任問題につながります。

そんな被害を未然に防ぐためにも、セキュリティ的に安心できるCMSを選ぶ必要があるのです。

そして、“動作が軽いかどうか”も重要です。
これはいわゆる「ページの表示スピード」のことですが、今、Googleはページの表示スピードを評価対象としています。
そのため、SEOにおいても動作の軽さは重要なのです。

以上のことを踏まえ、国内の主要なCMSを5つほど紹介しておきます。

1.WordPress

WordPress

「全世界のWebサイトの25%がこのWordPressで作られている」といわれるほど、世界中で人気のCMSです。
「プラグイン」と呼ばれる追加機能を足すことによって、いろいろな形式のサイトをつくることができます。
世界中で人気のCMSのため、わからないことがあっても、ネットで検索すればたいていのことは解決します。
ただ、その人気ゆえ、攻撃者からの攻撃を受けやすく、こまめなセキュリティアップデートは必要です。

2.はてなブログ

はてなブログ

株式会社はてなが提供するブログサービスです。
はてなブックマークやはてなニュースとの連携など、ユーザーが集まりやすい仕組みをもっています。

3.note

note

紹介するCMSの中で、もっともシンプルなCMSです。
文章や写真、イラスト、音楽、動画など様々なコンテンツを投稿することができるという特長をもっています。

投稿するコンテンツは、部分的に有料化したり月額課金制にすることができるほか、ユーザーが作品に対して寄付をすることもできます。

独自ドメインが設定できないため、今回のオウンドメディアの選択肢からは外れますが、覚えておいて損はないCMSでしょう。

4.Jimdo

Jimdo

こちらも全世界で人気のCMSです。

ビックリするくらいにカンタンにサイトがつくれ、たくさんのテンプレートの中から自分に合ったデザインを選ぶことができます。
ネットショップも作れるため、幅広いサイト展開ができるCMSです。

5.g.o.a.t

g.o.a.t

g.o.a.tは、2016年5月に事前登録を開始した新進気鋭のブログサービスです。
「ビジュアルブログ」をコンセプトに、画像や動画と文章を組み合わせて、ハイセンスな記事を作成することができます。

サツキ

こんなにたくさんのサービスがあると迷っちゃいますね・・・!

ムツミ

g.o.a.tとかいいな・・・。
オレがまだバンド活動していたら、きっとg.o.a.tでバンドのページを作っただろうな・・・。

高橋

今回のみやび屋のオウンドメディアはドメインの直下に設置します。
そのため、ドメインの直下に設置しやすいWordPressを使おうと思います。

ただ、もし可能であれば、それ以外のCMSについてもぜひ覚えておいてください。
たとえば、先ほどご紹介したCMS以外にも、「a-blog cms」や「Movable Type」、「concrete5」といったものもあります。
たくさんの選択肢を覚えておくことで、使える武器が増えますから。

サツキ ムツミ

はいっ・・・!!

高橋

では続いての解説です。
次の解説は、先ほどお話した“瞬間的かつ膨大なアクセス”を逃さないための「レンタルサーバーの選定」です。

3.レンタルサーバーの選定

レンタルサーバーを選ぶ際、絶対に気をつけなければいけないことがあります。
それは、「503(503 Service Unavailable)」というエラーメッセージを極力出さないサーバーを選ぶことです。

一般的にレンタルサーバーには「同時接続数」というものが用意されています。
もし、その同時接続数を超えてたくさんの人がサイトを見に来ると、ページが表示されなくなってしまうからです。

503エラー

ムツミ

えええ!?
それって、せっかくアクセスを集めても、サーバーによってわざとサイトが表示されなくなるってことか・・・!?

高橋

はい。
実は私が運用管理している「マツオカ」のサイトも、以前、「503エラー」によってサイトが表示されなくなるトラブルに見舞われました。

かつて「マツオカ」のサイトは「503エラー」のトラブルに見舞われた

サツキ

その503エラーというのを防ぐにはどうすればいいんですか・・・?

高橋

解決法はカンタンです。
同時接続数に余裕のあるサーバー、つまり、できるだけスペックの高いサーバーを借りることです。

サツキ

スペックが高いサーバー・・・。
う、うちのサーバーってどうなんでしょうか?

高橋

・・・事前に調べてきました。

この「みやび屋」のサイトは、今、ナノサーバーのスタンダードプランで動いているようです。

ナノサーバーのプラン

サツキ

ナノサーバー・・・。
たしか、以前、うちのホームページを作ってくださった業者さんが契約してくださったサーバーだと思います。

高橋

結論をいうと、このサーバーは乗り換えたほうがいいです。
サーバーのスペックやプラン的に、膨大なアクセスに耐えられる仕様になっていないからです。

サツキ

えっ・・・。

高橋

実は以前「マツオカ」で使っていたサーバーも、同じくナノサーバーのスタンダードプランだったんです。
オウンドメディアを立ち上げるまではとくに不都合はなかったのですが、オウンドメディアを立ち上げてからは503エラーが頻発してしまったため、ほかのサーバーへ乗り換えました。

サツキ

そうだったんですね・・・。

高橋

オウンドメディアを運用する以上、この「503エラー」との闘いになると思います。
503エラーについて、もう少し詳しく教えておきましょう。

「503エラー」が出る理由と仕組み

503エラーが出る理由を知っていただくためには、レンタルサーバーの「ビジネスモデル」について知っていただく必要があります。

一般的に「共用サーバー」と呼ばれる月数百円~数千円のサーバーは、1台のサーバーを複数人のユーザーで共有することで値段を下げています。
ただ、安く借りれる分、各ユーザー同士でサーバーのポテンシャルを取り合う形になり、もし、共用サーバーの中に飛び抜けてトラフィックの多いサイトがあった場合に、サーバーの負荷はそのサイトに引きずられる格好になるんです。

ただ、そうなったらほかのユーザーは困りますよね。
他人のサイトのせいで、自分のサイトの表示が遅くなったりするわけですから。

よって、サーバー会社は、飛び抜けてトラフィックの多いサイトのトラフィックを抑えることで、ほかのユーザーのサイトに迷惑をかけないようにし、同じ共用サーバーを使うすべてのユーザーの満足度を平均的に高めるための対策をおこなっているんです。

それが「同時接続数の制限」です。

ここでいう「接続数」とは、ユーザーがサイトに訪れた時に発生する接続のこと。

サイトへアクセスしてきたユーザーが、サーバー側で設定した限界値(同時接続数)を超えた場合、「503エラー」というメッセージを表示し、サイトを見れなくする。
そうすることで、同じ共用サーバーを使っているほかのユーザーへの影響を防いでいるんです。

だから、503エラーが出ている状態は、サーバーが落ちているわけではなく、サーバー会社が意図的にそのサイトへのアクセスを遮断している状態だといえます。

瞬間的なアクセス過多の図

また、サイトの構造が原因で、実際のアクセスがそれほど多くなくても、サーバー側で設定された限界値(同時接続数)を超えてしまうケースもあります。
データベースへ頻繁にアクセスするサイトなどは、一回のアクセスでたくさんのファイルやプログラムを呼び出してしまい、その分、接続時間が長くなり、同時接続数に影響するようになってしまうのです。

プログラム処理過多

そういったサイトは、サイトの構造を見直す必要があります。
また、CMSごとにサイト構造は違うので、503エラーの出やすいCMS、出にくいCMSというのも存在します。

ムツミ

なるほど・・・。
レンタルサーバーの裏側ってそんなことになってたんだ・・・。

高橋

はい。
だから、理想をいえば、共用サーバーではなく「専用サーバー」を借りておいたほうがいいといえます。
月額の費用は高くなりますが、いざ、膨大なアクセスが殺到したときに、共用サーバーよりもそのアクセスをさばきやすいからです。

ムツミ

専用サーバー・・・。

高橋

こんな言い方をするのはあれですが、失ったお金は取り戻せても、失った時間は取り戻せません。

だから、私だったら、サーバーのスペックにはケチらず、最初からある程度の予算を組みます。
最初は安いサーバーを借りて、あとからスペックの高いサーバーへ移行しようとする方は多くいますが、サーバー移行で発生する面倒くさい作業等を考えると、最初からそれなりのサーバーを借りておくほうがいいかもしれません。

サツキ

“失ったお金は取り戻せても、失った時間は取り戻せない”・・・。
この言葉、胸に突き刺さりますね・・・。

高橋

ただ、レンタルサーバーと一口に言っても、提供している会社のサービスによって千差万別です。
今はWebセキュリティも大切な時代。
503エラーに強いだけでなく、Webセキュリティのレベルが高いサーバーを選んでおくことも大切なんです。
よかったら、この記事に目を通しておいて下さいね。

サツキ

よ、読んでみます・・・!

高橋

ちなみに、みやび屋のレンタルサーバーに関しては、私がオススメするサーバーを選定してきました。
サーバーの乗り換え作業に関しては、私がおこなおうと思っています。

サツキ

あ、ありがとうございます・・・!!

ムツミ

(・・・すげえ、勉強になった・・・)

高橋

では、続いて「サイトデザイン」と「記事のプランニング」の解説に進みましょう。

4.サイトデザイン

オウンドメディアの場合、記事が主役になるため、文章が読みやすいデザインを心がける必要があります。
また、スマホ経由で訪れるユーザーも多いため、スマホで見た時に見やすいデザインも重要です。

そのため、今回のサイトのデザインは、「みやび旅」というロゴを基調としたシンプルなデザインにしたいと思います。
ロゴさえ印象的であれば、シンプルなデザインでも記憶に残ります。

なお、文章の読みやすさを考えると、ページの背景色文字色のバランスは重要なので、そこも配慮しながらデザインをしていきます。

5.記事のプランニング

今回、最初に投稿する記事は、サツキさんが考えた『須原の女将が選んだ「有馬温泉」のオススメ旅館情報』という記事だと聞いています。
残りの記事に関しても、基本的には、須原で働く人たちがほかの温泉地や旅館の紹介をする記事になりそうですね。

ただ、それらの記事だけだとバリエーションが乏しくなるので、たとえば、インフルエンサーを巻き込む記事なども合わせて考えていくといいでしょう。
あと、ボーンのアニキ的には、ムツミさんが考えた『息を飲むほどに美しい!国内の美しすぎる温泉旅館写真まとめ』という記事も、引用のマナーさえ守れば問題ないようです。

ムツミ

ボーンのおっさん・・・。

ボーン

引用のマナーの大切さを知った今のお前なら、たとえただの“まとめ記事”でも、ほかとは一線を画したものが作れると信じているぞ。

ヴェロニカ

ふふふ。

ムツミ

(よーし・・・!
がんばってやる・・・!)

高橋

記事のプランニングに関しては、どんどんアイデアが出てきそうですね。
ただ、アイデアが出るだけではダメです。
なぜなら、記事は作成しなければいけないからです。

サツキ

(・・・あ!
そうだった・・・。
私たちって、日々の業務の合間を縫って、果たしていい記事が書けるかしら・・・)

6.記事の作成

オウンドメディアにおいて、もっとも大切といっていい、実際の記事の作成についてです。
一般的には、記事の作成パターンとしては以下のようなものが考えられます。

  1. 自分で書く、もしくは自社のスタッフが書く
  2. ライター系の制作会社(プロダクション)に頼む
  3. 外部のプロのライターに頼む
  4. ブロガーに頼む
  5. クラウドソーシングを使っているライターに頼む

このうち、理想は「1」の“自分で書く、もしくは自社のスタッフが書く”ということです。
なぜなら、その人が伝えたい内容は、その人の頭の中にしかないわけないので、「その人がどんな言葉でどんな思いを紡ぎたいか?」といったことを他人が理解するのはなかなかに大変だからです。
だから、もし、本人が記事を書けるのであれば、本人が書くに越したことはありません。

続いて「2」の“ライター系の制作会社(プロダクション)に頼む”ケースですが、プロならではの編集体制が加わるため、たとえばエビデンス(根拠)をしっかり押さえておきたい専門記事の作成などは、こういったプロの会社に頼んでおくほうが無難です。
当然のことながら、文章作成に関してはプロ中のプロなので、こちらが要望するテーマに合わせて、分かりやすくて読みやすい文章を書いてくれるでしょう。
ただ、それなりの費用は必要になるので、予算との相談となります。

また、“個人で仕事を請け負っているライターさん”に直接頼むケースもありです。
個人の場合、所属する企業がないことから、いわゆる企業のしがらみを取り払うことができるため、自由な文体で文章を書くことができます。
よって、要望によっては尖った文章なども書いてくれるため、感情ほとばしるような文章は個人のライターさんに発注するとよいでしょう。

ただ、ライターさんの中にはギャラの金額だけで動かないライターもおられます。
ライティングとはいわゆる自己表現。
自分の思うようなライティングができない案件や、自分の実績として公表できないような案件は「いくらお金を積まれても受注しない」というライターもいます。。
その点は気をつけておいたほうがいいでしょう。

そして最近増えてきているのが、“個人のブロガーさん”に頼むケースです。
個人のブロガーさんは本職のライターでないとしても、自身のブログを日々更新し続けることで培われた独自のライティング力をもっています。
また、ライティング力だけでなく、企画力や制作力にも優れているケースがあり、記事を総合的にプロデュースできる方が多いように感じます。
そして何より、個人のブロガーさんの場合、自分のメディアをもっているため、そのメディアを用いたプロモーションを逆提案してくれるケースもあります。

あとは、“クラウドソーシングを使う”ケースもあります。
ただ、クラウドソーシングは本業のライターでない主婦の方などが空き時間を使う感覚で登録しているなど、いわゆるプロライターの登録が少なめなので、クオリティ的に多くを望むことはできないでしょう。
とくに、「みやび旅」は量より質を意識したオウンドメディアになるため、クラウドソーシングとの相性はあまりよくないかもしれません。

ただ、たとえば、ある記事の中で複数の情報ソースを引用したいといったときに、「クラウドソーシングの力を使って情報を集める」といったアプローチは可能です。
クラウドソーシングを使って情報を集め、プロの制作会社に記事として完成させてもらう、という流れもよいでしょう。
クラウドソーシングを使う場合は、ライターが集まる場所として見るのではなく、“手伝ってくれる人たちが集まる場所”という認識で活用するといいかもしれません。

サツキ

なるほどです・・・!

あの・・・もしかすると、うちの場合、外部のライターさんにお願いしたほうがいいかもしれませんね・・・。

高橋

そうですね、そのあたりは私も考えていました。

サツキ

これまで、ボーンさんからはライティングの極意をいくつか教えていただいたので、自分でバンバン書いていきたい思いはあるのですが、最近旅館のお客様が増えてきたこともあり、記事作成の時間が捻出できるかがちょっと心配で・・・。

高橋

とてもわかります。
記事を書くことに一生懸命になりすぎて、本業がおろそかになってしまっては元も子もありませんから。

お金があれば時間が買えます。
多少費用がかかっても、餅は餅屋に発注するのがベストかもしれません。

高橋

ただ、外部のライターさんに発注する場合には、できれば自分たちで大枠の企画を考え、それをマインドマップ化しておくとよいでしょう。
そして、そのマインドマップをベースにライターさんが記事を書くというアプローチはありかなと。

マインドマップは企画の「地図」のようなものです。
地図があれば、ライターさんも迷わずに済みますから。

ムツミ

それなら、すごくイメージしやすいぜ!

サツキ

うん!
なんだかいけそうな気がしてきた!!

高橋

フフフ。

高橋

では、オウンドメディア運営、最後のポイント「解析ツールの導入&運用」についてお話ししておきます。

7.解析ツールの導入&運用

オウンドメディアを立ち上げ、記事を公開したあとは、絶対にしなければいけないことがあります。
それは、それらの記事がどういった成果をあげているかの「解析」です。

たとえば、各記事の成果を見る上では、以下のようなデータの数値を“成果指標(KPI)”に設定する場合があります。

  1. 検索順位
  2. ページビュー数
  3. ユニークユーザー数
  4. 滞在時間
  5. 精読率
  6. ソーシャルメディアの言及数
  7. 検索結果上でのCTR
  8. リピート率
  9. コンバージョン(成約数)もしくはアシストコンバージョン(間接的な成約数)

これらの成果に対し、前もって目標値を決めておけば、もし、各記事がそれらの目標値に達していない場合には、記事をブラッシュアップするなどの対応が可能となります。

コンテンツマーケティングにおいては、「PDCAサイクル(※)」を素早く回し、どんどんコンテンツ改善していくことが大切です。

(※「PDCAサイクル」とは「Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)」の4段階のステップの略で、これらのステップを繰り返すことにより、成果をあげるための施策を継続的に分析することを指す)

上記のようなデータを確認するためには、「解析ツール」をサイトに入れなければいけません。
データの取得は解析ツールを入れた時点から始まりますので、できれば、サイトを立ち上げたその日から解析ツールは設置しておきたいです。

以下のツールは、オススメしたい解析ツールの一部です。

Google Analytics

Google Analytics

Googleが提供している無料のアクセス解析サービスです。
かなり細かなアクセス解析データを見ることができるため、特殊な事情がないかぎり、入れておいたほうがよいでしょう。

Google Analytics

●取得できる主なデータ
ページビュー数、ユニークユーザー数、滞在時間、リピート率、コンバージョン(成約数)もしくはアシストコンバージョン(間接的な成約数)など。

Google Search Console

Google Search Console

こちらもGoogleが提供している無料のサービスです。
「旧ウェブマスターツール」とも呼ばれます。

このツールは、自分の管理するWebサイトがGoogleから正しく認識されているかや、検索結果でどれくらいクリックされているかといったことを確認することができます。

検索エンジンへのインデックスを促すツールの提供や、サイトに構造的な問題があればメッセージ送信をしてくれる機能の提供など、SEOを意識するサイト運営者ならば導入必須なツールです。

Google Search Consoleの検索アナリティクス

●取得できる主なデータ
検索順位、検索結果上でのCTRなど。

Ptengine

Ptengine

Ptengineは、株式会社Ptmind社が提供するヒートマップ機能を有するアクセス解析ツール。
最大の特徴となるヒートマップ機能は、ページの中で「どの箇所がユーザーによく読まれているか」や「どれくらいスクロールされているか」を知ることができます。
また、PCやスマホ、タブレットなど、デバイスごとのヒートマップを見られるのが便利です。

このヒートマップ機能を用いることで、「どんなふうに文章を書けば、最後まで読んでもらいやすいのか?」といった分析が可能になります。

Ptengine

Ptengine

たとえば、ユーザーがとくに集中して読んでいる箇所は赤い色になります。

Ptengine

●取得できる主なデータ
ページビュー数、ユニークユーザー数、滞在時間、精読率、リピート率、ソーシャルメディアの言及数、コンバージョン(成約数)もしくはアシストコンバージョン(間接的な成約数)など。

GinzaMetrics

GinzaMetrics

GinzaMetricsは、Ginzamarkets株式会社が提供するアクセス解析ツール。
最大の特徴は特定キーワードの検索順位をウォッチできること。
それにより、上位表示を狙っている記事の検索順位が思わしくない場合には、必要に応じて、記事のブラッシュアップをするといったことが可能になります。

GinzaMetrics

●取得できる主なデータ
検索順位、ページビュー数、ユニークユーザー数、滞在時間、ソーシャルメディアの言及数、検索結果上でのCTR、リピート率、コンバージョン(成約数)もしくはアシストコンバージョン(間接的な成約数)など。

高橋

・・・以上です。

ヴェロニカ

高橋くん、素晴らしいわ・・・。
もう立派なWebディレクターね!

ボーン

マツオカでの日々はムダにはなっていなかったようだな。

高橋

へへへ・・・。
ま、ボーンのアニキの直接指導を受けた身としては、これくらいはできておかないとな。

サツキ

高橋さん、すごくわかりやすかったです!
ありがとうございました・・・!

ムツミ

(このあんちゃん、黒いベストのセンスはどうかと思うけど、すげーじゃねーか)

ボーン

しかし、あらためて、今回のオウンドメディアの課題が見えたな。

サツキ

課題・・・?

ヴェロニカ

ライターの手配よ。

サツキ

あっ・・・。

ボーン

みやび屋のオウンドメディアの成功は、どんなライターをアサインできるかに委ねられている。

ムツミ

ライターってどう探せばいいんだろ・・・。

高橋

フフフ・・・。

サツキ

??

ヴェロニカ

高橋くん、どうしたの?

高橋

ライターの手配に関しては、オレに任せてください。
・・・心当たりがあるので。

ボーン

よし、ライターの手配を含め、このオウンドメディアの運営指揮は高橋に任せる。

高橋

了解っ!

サツキ

あ・・・!

ヴェロニカ

サツキさん、どうしたの?

サツキ

あ、あの、ライターさん探しの話からちょっと飛んでしまうんですが、昨日、他社のオウンドメディアを見ていてすごく気になったことがあったんです。

ヴェロニカ

気になったこと・・・?

サツキ

はい、たまたまかもしれませんが、どのオウンドメディアやキュレーションサイトにも、うちや、須原の旅館の紹介がされていなかったんです・・・。

ムツミ

あ・・・。
やっぱりアネキもそう思ったか?
あれって、やっぱりおかしいよな・・・?

ヴェロニカ

どういうことかしら・・・?

サツキ

「TRAVEL UP」の記事にも、須原の旅館の情報が一切掲載されていませんでした。
・・・というか、削除されたみたいな・・・。

ボーン

・・・「TRAVEL UP」のサイトを見せてみろ。



ボーン

高橋、運営会社情報のページを頼む。

高橋

運営会社情報だな、りょ、了解!

TravelUp運営会社情報

ヴェロニカ

このサイトの運営会社は・・・バイソンマーケティング・・・。

ムツミ

バイソンマーケティング?

この代表者の名前は・・・。

ボーン

・・・遠藤・・・!

遠藤のことを頭に思い浮かべるボーン

高橋

遠藤・・・遠藤・・・。

あああっ!!
・・・ボーンのアニキ、この遠藤って・・・。

ボーン

・・・元ガイルマーケティング社の遠藤。
まだWebの世界で生き残っていたとはな。

ムツミ

??
遠藤って、ボーンのおっさんの知り合いなのか・・・?

ヴェロニカ

ボーン、イヤな予感がするわね・・・。

ボーン

・・・。



ヴェロニカ

ボーン、時間よ。
私たちはチップを探しに行かないと。

ボーン

・・・ああ。

ボーン

ムツミ、サツキ、ひとまずおまえたちは高橋の指示に従い、オウンドメディアの立ち上げに取りかかれ。

サツキ

はいっ!!

ムツミ

おうっ!!

高橋

ふたりとも、このオウンドメディア、絶対に成功させましょうね。

サツキ ムツミ

はいっ!!

ボーン

(遠藤・・・!)



高橋

(・・・さてと、オレのほうはもうひとつの準備を始めるか)



その夜、某所にて

バズボンバーのオフィス

高橋

ちゅーす!

伊藤(シルエット)

ん・・・?

田中(シルエット)

むしゅしゅしゅしゅ!!
誰ですか、あなた・・・?

高橋

・・・あれっ・・・。
もう忘れちまったんですか!?

歌舞伎町の夜を一緒に過ごしたじゃないですか?
オレですよ、オレ。
(と言っても、この人たちに強制的に連れて行かれたんだけど・・・)

伊藤(シルエット)

・・・もしかして、高橋か・・・?

田中(シルエット)

むしゅしゅしゅしゅ!!
高橋くん、そうだ、高橋くんでしゅよ!
久々でしゅね~!!

山本(シルエット)

嗚呼、高橋、君は一皮剥けたようだね。
お肌がプディングみたいにプルップルじゃないか。

伊藤(シルエット)

・・・おまえ、このバズボンバーに何の用だ?

高橋

フフフ・・・。
今日は皆さんに頼みたいことがあってやって来ました。

バズボンバーのオフィスへ挨拶にしに行った高橋と高橋を迎えるバズボンバーの3人



チップのGPS作動停止まであと・・・52日

チップを探すボーンとヴェロニカ。バズボンバーと盛り上がる高橋。打ち合わせ中のムツミとサツキ

次回予告

ついに、みやび屋のオウンドメディアが始動する・・・!

シンガポールから帰国した高橋の指示のもと、須原の未来を懸けオウンドメディアを運用するサツキとムツミ。

一方、高橋はバズボンバーと名乗る怪しい男たちのもとを訪れていた。

バズボンバーとは一体何者なのか?
そして、ボーンたちはチップを見つけ出すことができるのか?

次回、沈黙のWebライティング最終話。
「今、すべてを沈黙させる・・・!」

今夜も俺のタイピングが加速するッ・・・!!