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【香港の岐路 返還から19年(中)】若者を「独立論」にかりたてた予言映画の波紋 表現や言論の自由どう守る

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【香港の岐路 返還から19年(中)】
若者を「独立論」にかりたてた予言映画の波紋 表現や言論の自由どう守る

中国共産党政権や中国本土からきた中国人による支配が強まって香港人が窮地に追いやられる近未来をオムニバス方式で描いた映画「十年(TEN YEARS)」の監督の1人、欧文傑氏(35)。「普」の文字に「/」を入れたマークは、中国からみれば方言である広東語や英語しか話せない香港人のタクシードライバーが、乗客に対して標準語の「普通語」を話せないという表示を余儀なくされるとのストーリーの設定(河崎真澄撮影) 中国共産党政権や中国本土からきた中国人による支配が強まって香港人が窮地に追いやられる近未来をオムニバス方式で描いた映画「十年(TEN YEARS)」の監督の1人、欧文傑氏(35)。「普」の文字に「/」を入れたマークは、中国からみれば方言である広東語や英語しか話せない香港人のタクシードライバーが、乗客に対して標準語の「普通語」を話せないという表示を余儀なくされるとのストーリーの設定(河崎真澄撮影)

 中国の支配が強まって社会の自由が狭められたと感じる香港の若者らを、従来の反中や嫌中の感情からさらに、「香港独立論」までかり立てた映画がある。

 昨年公開され、香港のアカデミー賞とされる香港電影金像奨で今年4月、グランプリに輝いた自主制作映画「十年」だ。2025年を舞台に、香港社会がどう変わるか“予言”してみせた。中国本土で上映禁止となり、中国紙は「でたらめだ」と酷評。受賞のニュースも本土では消された。

 5人の監督による5本の短編によるオムニバス形式で、最終話の「本地蛋」では、中国式の教育を受けた香港の子供たちが文化大革命時代の「紅衛兵」さながら、香港独自の文化を破壊しようと香港の大人たちを攻撃するストーリーだ。

 制作費はわずか5万香港ドル(約66万円)。細々と屋外上映などを続けたが興行収入は600万香港ドルを超える人気ぶりに。「14年初めに『香港で次に何が起きるか?』とのタイトルで作る映画にハッピーエンドを計画していたが、その年の秋に起きた大規模デモ『雨傘運動』の挫折を経て、将来を不安視する内容に変えたんだ」と監督の1人、欧文傑氏(35)は明かした。

 欧氏の短編「方言」は香港で中国本土の標準語である「普通語」使用が義務づけられ、広東語と英語しかは話せない香港人のタクシー運転手が途方に暮れる内容。標準語とは発音が大きく異なる広東語を話し、旧体字(繁体字)を守ってきた香港。北方の巻き舌風の発音や極端に簡略化された中国本土の簡体字に嫌悪感をもつ人も少なくない。

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