だがこの記事には、大嘘がある。例えば、人件費を削れと主張したことは「一度もありません」としているが、「軍事費半減」という主張は何度も行ってきた。人件費が4割を超えている状況で軍事費を半減すれば、人件費しか残らなくなって、国の防衛どころか、災害出動もままならない事態となり自衛隊は機能不全に陥ってしまう。こんな主張を何度も行ってきた。

 共産党の中央委員会発行の『日本共産党の政策 1985年版』には、次のような政策が掲げられている。

「自衛隊経費の大幅削減」の項では、「F15戦闘機、P3C対潜哨戒機、ミサイル護衛艦など、正面装備費は全額削除します。『継戦能力強化』のため急増させられている弾薬費も大幅に削減します」としている。

 さらに「自衛隊員の削減」の項では、「軍事費全体の4割強を占める人件・糧食費も縮小の方向に転じさせます」とある。

 ほとんど自衛隊解体に近いぐらいの提案を行ってきたのである。この当時の防衛費が約3兆円であり、この共産党の提案では、「軍事費を1兆4000億円以上削減することができます」と述べている。「軍事費半減」というのは、やはり自衛隊を機能不全に陥らせるものだということである。

 また、「自衛隊基地の撤去」という項では、「全国2800カ所以上にのぼる自衛隊基地・施設のあらゆる強化に反対し、自衛隊基地・施設を撤去します」とある。

 これはもう自衛隊解体計画と言うべきである。これが共産党の本来の立場なのである。そして、このどこにも安全保障論はない。

 なぜこうなるのか。共産党は、自衛隊をその成立の経過などもあり、「対米従属の軍隊」だとしてきた。また「国民弾圧の軍隊」であり、「憲法違反の軍隊」だとも位置付けてきた。共産党から見れば、まさに“三悪軍隊”なのである。その意味では、藤野発言は、共産党自身のこれまでの政策と体質が必然的に生み出したものに他ならない。