憲法ですら、いつのまにか改憲論から護憲論に変わってしまった。これについても党内で、喧々諤々の議論はなかった。だからこそ、憲法制定議会で9条に反対した唯一の政党が共産党であったにもかかわらず、恥ずかしげもなく「9条は世界の宝」などというプラカードを掲げるのである。

 安全保障法制についても、「海外で人を殺し、殺されるもの」などという、情緒的な批判を繰り返してきた。

 こうして軍とか、軍事というものを忌避する空気を党内に蔓延させてきた。この結果が、藤野発言なのである。

 だから藤野発言に対して、共産党熊本県委員会の日高伸哉委員長の「不用意な発言だったが、誤解だ。言葉尻をとらえての攻撃には断固反対だ」とか、佐賀県委員会の今田真人委員長の「言葉足らずだったかもしれないが、発言に問題は全くない」などの発言が出てくるのである。そう言えば、自衛隊関連の学校に対して、「人殺しを教える学校」と発言して、謝罪に追い込まれた市議会議員もいた。

無責任な共産党の自衛隊論

 選挙戦の中で、共産党に対して「共産党は自衛隊が“違憲の軍隊”だと言っているが、そうなら自衛隊をすぐに解消するということか」という趣旨の質問がなされると、共産党は次のように回答している。

 “自衛隊は憲法違反である。9条の完全実施を目指すが、完全に解消するには相当な時間を要する。国民多数によって自衛隊は必要ないという合意がなされてからだ。そもそも自衛隊は自民党政治が生み出した矛盾だ”

 実に無責任な論理である。「もう自衛隊は必要ない」というような国民合意が、そもそもできるのだろうか。いったい何十年先、否、何百年先の展望なのか。これでは、憲法違反の状態を半永久的に続けていくと言っているのと同じである。