GRANT LEE BUFFALO Mighty Joe Moon
おまえなんて一生前回り受身でもしてればいいんだって。
そう言われたんだ。
愚弄されたのさ。
侮辱された上に、笑いものにされて。
おまえなんて前回り受身でもやってんのがお似合いだって。
一生クルクル回ってろって。
王様に会ったんだ。
あんたは王だ、って言われた。
おれ王じゃないよ、って答えたけど
いやあんたこそが王だ、ほんとうの王だ、って。
そこまで言われると悪い気はしなかったよ。
それで、次いで王様は言った、わたしはどうかね?
だからおれは正直に言ったんだ、
あなたはあんまし王って感じじゃないねって。
だからおまえなんか糞ったれだって、
王様は言った、おまえなんかお払い箱だよ
王と言われて王と答えるのが奥義ってもんだろ、って
早口でこう言われるとなんだか絶妙に韻を踏んでるような気がしたけど
ともかくそれでおれはお城から追放された。
電車賃やるから帰れよ、おまえなんか和同開珎で十分だって。
コインを投げつけられた。
家に帰ると女房が、でもあんたったらいつだってそうだったじゃない
いつだって負け犬じゃないって、
まるでおれの全人生を知ってるかのような口ぶりだけど、
でも確かにおれはいつもこうだった、
だからこれが当たり前なんだと
いつもの風景に帰れたことに感謝して、
眠りに就いた。
それからふと、夜中に目を覚まして。
なんだかちょっとムラムラした気分だったから
女房にちょっかい出そうと、隣の布団を覗くと
隣に布団なんてなくて。考えてみれば、
女房なんているはずもなくて。そういえば、
帰る家なんてないわけで。
気がつくと森のなかにいて。
あたりを見渡すと、狐が嫁入りしてた。
ボーっと見てると、狐の一行がこっちに向かってやってきて
狐夫婦は、おれがあんまりみっともない姿だからって
油揚げをくれた。
おれはお礼とお祝いを言って、それにむしゃぶりついた。
うまかったね!あれはなんてうまさだったんだろう。
大きな大きな、一枚の油揚げ。
食いながらおれは思ったね、世界なんて糞ったれだって。
べらべらお喋りばっかりだ。
一枚の油揚げより大切なものなんて、何にもないのにって。
GRANT LEE BUFFALOはちょっと不当なくらい知名度が低いと思う。
このバンドを知ってる人なんてお目にかかったことがない。
このバンドをおれに教えてくれた人だけだ。
その人が言うには、むかし来日したこともあるらしい。
R.E.M.の前座かなんかで。
確かに昔のR.E.M.と同じ匂いがする。
外国ではそれなりに人気があるのだろうか?
むかし雑誌でトムeヨークが、その年のベスト10アルバムに
このアルバムを選んでたな。
そう言われると、bendsと似た匂いがしなくもない。
でも人気がないのも理解できる。
だってブサイクだもん。いもくさいしね。
それにルックス同様、音も地味。
すごーく地味。ヒット曲出すようなバンドじゃない。
だけど、聞く人によっては
地味だけど、とても心に響く音。
ゆっくりと、沁みてくるような音。
ぶっきらぼうで無骨なきこりが
森の中で一人で歌っているようだ。
きこりの歌は、森のなかにたたずむ人たちに届く。
きこりはなにかに向けて歌ったりはしない。
誰のためにも歌わない。
対象のない歌だけが、対象を持たない誰かに届く。
きみのために歌うよ、なんて言葉は要らないよ。
そんなのはお部屋でやってればいいって。
森のなかに聞こえてくるのは、誰かに向けられた歌じゃない。
それを聞くのも、誰かを待っている人じゃない。
伝えるものを持たない歌が
伝えられない誰かに伝わるから。
私の病気は溢れてしまったコップだから、
あなたの一滴や二滴はまるで問題になりません。
病気の少女は言いました。おかげで受身はばっちしです。
書くということが、18歳で年老いた女は言います、書くということが全てを混ぜ合わせ、区別することなどやめて、本質的に形容不能なものへと向かうことでないとしたら、そのときには書くとは、宣伝以外の何物でもない、と。
からっぽの宙に差し延べられた腕が
誰かに向かって差し延べられているのなら、
わざわざそんなポーズを取らなくても
手は差し延べられるから。
森のなかで差し延べられる腕は
何にも向けられてなくて、
ただただ差し出された
与えられない腕だから。
できればその腕に、油揚げを配ってまわりたいね。
受け取ることはできないけれど、
だって受け取るために差し出された腕じゃないから
気付いたら、手のひらに油揚げが乗っかってる。
だからその手のひらに
油揚げを置いてまわりたいね。
もし、おれの油揚げでよかったら、だけど。そしたら
おまえなんて一生きつねうどんでも食ってればいいんだって。
そう言われるんだ。
気付いたら手のひらに油揚げが乗ってて。
油揚げの匂いをじっと嗅いで。
おまえなんてきこりの歌でも聞いてんのがお似合いだって。
一生聞いてていいよって。
そう言われたんだ。
愚弄されたのさ。
侮辱された上に、笑いものにされて。
おまえなんて前回り受身でもやってんのがお似合いだって。
一生クルクル回ってろって。
王様に会ったんだ。
あんたは王だ、って言われた。
おれ王じゃないよ、って答えたけど
いやあんたこそが王だ、ほんとうの王だ、って。
そこまで言われると悪い気はしなかったよ。
それで、次いで王様は言った、わたしはどうかね?
だからおれは正直に言ったんだ、
あなたはあんまし王って感じじゃないねって。
だからおまえなんか糞ったれだって、
王様は言った、おまえなんかお払い箱だよ
王と言われて王と答えるのが奥義ってもんだろ、って
早口でこう言われるとなんだか絶妙に韻を踏んでるような気がしたけど
ともかくそれでおれはお城から追放された。
電車賃やるから帰れよ、おまえなんか和同開珎で十分だって。
コインを投げつけられた。
家に帰ると女房が、でもあんたったらいつだってそうだったじゃない
いつだって負け犬じゃないって、
まるでおれの全人生を知ってるかのような口ぶりだけど、
でも確かにおれはいつもこうだった、
だからこれが当たり前なんだと
いつもの風景に帰れたことに感謝して、
眠りに就いた。
それからふと、夜中に目を覚まして。
なんだかちょっとムラムラした気分だったから
女房にちょっかい出そうと、隣の布団を覗くと
隣に布団なんてなくて。考えてみれば、
女房なんているはずもなくて。そういえば、
帰る家なんてないわけで。
気がつくと森のなかにいて。
あたりを見渡すと、狐が嫁入りしてた。
ボーっと見てると、狐の一行がこっちに向かってやってきて
狐夫婦は、おれがあんまりみっともない姿だからって
油揚げをくれた。
おれはお礼とお祝いを言って、それにむしゃぶりついた。
うまかったね!あれはなんてうまさだったんだろう。
大きな大きな、一枚の油揚げ。
食いながらおれは思ったね、世界なんて糞ったれだって。
べらべらお喋りばっかりだ。
一枚の油揚げより大切なものなんて、何にもないのにって。
GRANT LEE BUFFALOはちょっと不当なくらい知名度が低いと思う。
このバンドを知ってる人なんてお目にかかったことがない。
このバンドをおれに教えてくれた人だけだ。
その人が言うには、むかし来日したこともあるらしい。
R.E.M.の前座かなんかで。
確かに昔のR.E.M.と同じ匂いがする。
外国ではそれなりに人気があるのだろうか?
むかし雑誌でトムeヨークが、その年のベスト10アルバムに
このアルバムを選んでたな。
そう言われると、bendsと似た匂いがしなくもない。
でも人気がないのも理解できる。
だってブサイクだもん。いもくさいしね。
それにルックス同様、音も地味。
すごーく地味。ヒット曲出すようなバンドじゃない。
だけど、聞く人によっては
地味だけど、とても心に響く音。
ゆっくりと、沁みてくるような音。
ぶっきらぼうで無骨なきこりが
森の中で一人で歌っているようだ。
きこりの歌は、森のなかにたたずむ人たちに届く。
きこりはなにかに向けて歌ったりはしない。
誰のためにも歌わない。
対象のない歌だけが、対象を持たない誰かに届く。
きみのために歌うよ、なんて言葉は要らないよ。
そんなのはお部屋でやってればいいって。
森のなかに聞こえてくるのは、誰かに向けられた歌じゃない。
それを聞くのも、誰かを待っている人じゃない。
伝えるものを持たない歌が
伝えられない誰かに伝わるから。
私の病気は溢れてしまったコップだから、
あなたの一滴や二滴はまるで問題になりません。
病気の少女は言いました。おかげで受身はばっちしです。
書くということが、18歳で年老いた女は言います、書くということが全てを混ぜ合わせ、区別することなどやめて、本質的に形容不能なものへと向かうことでないとしたら、そのときには書くとは、宣伝以外の何物でもない、と。
からっぽの宙に差し延べられた腕が
誰かに向かって差し延べられているのなら、
わざわざそんなポーズを取らなくても
手は差し延べられるから。
森のなかで差し延べられる腕は
何にも向けられてなくて、
ただただ差し出された
与えられない腕だから。
できればその腕に、油揚げを配ってまわりたいね。
受け取ることはできないけれど、
だって受け取るために差し出された腕じゃないから
気付いたら、手のひらに油揚げが乗っかってる。
だからその手のひらに
油揚げを置いてまわりたいね。
もし、おれの油揚げでよかったら、だけど。そしたら
おまえなんて一生きつねうどんでも食ってればいいんだって。
そう言われるんだ。
気付いたら手のひらに油揚げが乗ってて。
油揚げの匂いをじっと嗅いで。
おまえなんてきこりの歌でも聞いてんのがお似合いだって。
一生聞いてていいよって。
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