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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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トーラ・アッシリア

「くそ!卑怯者!僕がこの中で最強なのに!」
リングアウトしたアベルはそれでも喚いていたが、係員によって引きずり出される。
バトルロイヤルは順調に進み、8人が残った。
「さあ、それでは本選が開始されます!皆様ふるって賭けに参加ください!」
司会の男がそういうと同時に、シャイロック家のメイド部隊が賭け札を売り始める。
観客たちは先を争って買い始めた。
「賭けなんてしているの?」
ナディが嫌そうに聞いてくる。
「これも、健全な統治の一環だよ。賭けってのはアングラなものにすればするほど、不公平なものになるんだ。だからいっそのこと、シャイロック家が胴元になって公平に取り仕切るようにした」
リトネは悪びれずに言い放つ。
「……本音は?」
「儲かるから……って、怒らないでよ。祭りのとき限定だから!それに、賭けの上限はせいぜい一アル程度。遊びの範囲だから!」
ナディが杖を振り上げたので、リトネはあわてて弁解する。
「まったく、君は抜け目がないというか。……それで、誰にかけようかな?」
意外なことに、リトルレットは目を輝かせて闘技場に書かれた倍率の掲示板を見ていた。
「そうだなぁ。俺はトーラに賭けようかな。婚約者予定として」
「婚約者って……まだ出会ってもないでしょ」
「これから出会うんだよ。お爺様、実はお願いしたいのですが……」
リトネは自然にトーラと出会うための演出をイーグルに頼む。
「ふふ。よいぞ。じっくりと調教してやるがいい」
その話を聞いたイーグルは、悪そうな笑みを浮かべるのだった。

本選開始の前に、領主一族の挨拶が始まる。
「強者たちよ。よくぞこの地に集った。いずれ劣らぬ者たちで、ワシは満足しておる」
貴賓室で手を振るイーグルに、歓声が上がる。
「このトーナメントで活躍したものは、ある重要な役職に採用したいと思う」
イーグルはにやりと笑う。参加者は固唾をのんで次の言葉を待った。
「わが孫、リトネの武術師範じゃ!毎月80アルで採用しよう。そしてわが領地にて道場の建設も認める!」
破格の待遇を提示され、参加者は奮い立った。
「おおう!シャイロック金爵家のお抱え武術師範だと!」
「武門の誇りだ!」
それを聞いた参加者たちは喜ぶが、騎士たちはニヤニヤしていた。
(またイーグル様は無茶なことを……)
(マザーの修業を受けている坊ちゃんに、誰が戦いを教えられるんだよ)
シャイロック家の騎士はリトネの超人的修業を知っているので、イーグルの悪戯に苦笑する。
「さあ、リトネ。民に声をかけてやるがいい」
イーグルにせかされて、リトネは前に出て手を振った。
「リトネ・シャイロックです。ボクの先生になってくれる強い人を期待しています」
弱々しい貴族のお坊ちゃんのふりをして手をふる。
「お兄ちゃん、意地悪」
「……ほんと、悪趣味なんだから」
「リトネ君。絶対採用された人は一日で自信なくしてやめるとおもうよ」
婚約者たちに小声でツッコまれながら、リトネはにこやかに手を振り続けた。
貴賓室でそんな会話が繰り広げられていると知らず、トーラはひたすらリトネと婚約者たちを睨み続けている。
(ついにここまできた!あたいの親父の騎士の誇りを汚したシャイロック家に、あと少しで復讐できる。ここで活躍したら、シャイロック家にもぐりこめる。しかもあの弱そうな坊ちゃんの武術師範役だ!修業と称して散々いたぶってやって、隙を見て……)
心に刃を秘め、貴賓室のリトネを見続けるトーラだった。

トーナメントは進み、トーラは順調に勝ち上がっていった。
「ははっ。楽勝だぜ!なぜか弓使いとか魔法使いとかが対戦相手で、相性がよかったからな」
喜ぶトーラだったが、実は若干の演出がある。リトネの命令で、わざと強い者が潰しあうように対戦カードを操作して、トーラが勝ちやすいようにしていたのだった。
そして迎えた決勝で、トーラはずんぐりとしたドワーフと対戦する。
「あっ!母上の仲間のゴローおじさんだ!がんばれ!」
貴賓室でナディが歓声を上げる。その声が聞こえたのか、ゴローはナディのほうを向いてゆっくりと礼をした。
「ほう。強そうな男じゃのう」
イーグルは彼に目を留める。
「白姫ノルンの仲間ですからね。たぶんトーラは勝てないでしょう」
リトネの冷静な分析に、リトルレットも頷いた。
「で、ゴローに頼むの?」
「いや、武術師範はもう決まっている。トーラを採用するよ。俺が気に入ったということで」
「……本当にそうなんじゃないでしょうね」
リトルレットはジト目で見てくる。
「違うって。世界を救うのに、必要なんだって」
「……その言い訳聞き飽きた。うさんくさい。ゴローおじさんかわいそう」
ナディまで一緒になって責めてくる。
そんなことを言っている間に、試合が始まった。
「はじめ!」
司会の声がかかると同時に、トーラがゴローに襲い掛かる。
「先手必勝!」
トーラの拳が、ゴローの鳩尾に突き刺さった。
次の瞬間、ゴローの体が炎に包まれる。
「やった!これで!!」
勝利を確信したトーラだったが、すぐその顔が驚愕に変わる。
ゴローの体は炎に包まれていながら、少しも燃えてなかったからだった。
「な、なんで……」
「見事だ。この若さでこの強さとは……だが、攻撃の後が隙だらけだ」
ゴロは渋い声でそういうと、持っていたハンマーを一閃する。
「ぐえっ!」
トーラはハンマーに吹っ飛ばされ、リングの外に落ちた。
「そこまで!勝者!ゴロー!」
司会の男が右手を上げる。闘技場は観客たちの歓声に包まれた。

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