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勇者とヒロイン
「うわーーー。すごい!」
「……迫力!」
「みんな、真剣だねえ」
婚約者たちがそれぞれの感想を漏らす。参加者たちはそれぞれ個性豊かだった。
剣士、武道家、魔法使いに弓使い。使っている武器も剣だけではなく、ナックルやハンマーなど多彩だった。
戦い方もいろいろで、なるべく体力と魔力を温存させようとしている者もいれば、仕官目当てで派手に強さをアピールしている者もいる。
そんな中で目立っているのは、金髪の少年と赤毛の少女だった。
「ハッ!!」
金髪の少年は金色のオーラで全身を覆い、その手から光の玉を出して敵を打つ。
赤毛の少女の武器はナックルで、そこから炎が発せられていた。
(まずいな……あの二人を絡ませちゃいけないぞ)
二人を危惧したリトネは、そっとイーグルに耳打ちした。
(お爺様、なんとかあの二人を失格させられませんか?)
(なぜじゃ?)
熱い戦いに興奮していたイーグルは、不思議そうにリトネに聞く。
(実は……)
金髪の少年が勇者アベルで、赤毛の少女が攻略すべきヒロインの一人であることを話す。
(二人をここで絡ませたら、まずいことになります。なんとか別れさせないと……)
そこまで言ったとき、リトネの耳がひっぱられる。
「いてて……」
「なーに二人で悪巧みしているのかな?」
振り返ると、リトルレットがニヤニヤと笑っていた。リンとナディは戦いに夢中で気がついていない。
「い。いや、別に……」
「リトネ君の悪巧みはすぐ顔に出るから、わかりやすいんだよ。ほら、白状しなさい」
キリキリとほっぺたをぺンチでひっばってくる。
「わ、わかったよ!実は……」
二人がこれから自分たちにかかわってくる重要人物であることを告白するのだった。
「なるほどねぇ……金髪が勇者アベル君。赤毛がヒロインの一人、トーラちゃんか」
リトルレットは腕組みして考え込む。
「あの子が勇者なの?なんか怖そう」
「……幻滅」
受付でのトラブルを見ていたリンとナディも、嫌そうにアベルを見る。
「二人が出会うのは、魔法学院のはずなんだ。こんなところで出会ってしまって、コブシで語り合うなんてことになって友情が生まれる。それが熱い絆になって、俺が攻略できなくなる」
焦るリトネに、リトルレットは冷たい目を向ける。
「……仮にも婚約者たちの前で、ほかの女の攻略話?」
「うっ!!いや、でも、これは世界の危機を救うためで……」
ひたすらうろたえるリトネに、リトルレットは吹き出した。
「あはは。まあいいや。でも心配しなくても、勇者君はたぶん本選にも出られないとおもうよ」
「えっ?」
意外な言葉にリトネは驚く。
「ほら、よく見て」
リトルレットに言われて、リトネはリングを見る。
すると、二人の戦いに明確に差があるのが見て取れた。
トーラのほうは強そうな相手とは目配せしあって、あえて戦おうとせず、距離を置いている。そしてかかってくる相手だけをカウンターで倒している。
それに対して、アベルのほうは滅茶苦茶に敵に突っかかっていき、誰彼かまわず打ち倒していた。
「なるほど……」
「わかったでしょ。たぶんアベル君のほうは戦いの素人。いくら勇者だからって、あんなに光魔法を連発していたら……」
アベルの体を包む金色のオーラがどんどん薄くなっていき、呼吸も乱れていく。
「くらえ!「勇光弾」!」
口調は勇ましいが、手からでる光の玉もどんどん小さくなっていき、威力も弱まっていった。
「くっ!」
ついに魔力切れをおこしたのか、アベルがふらつく。
「……兄ちゃん。今までよくもすき放題してくれたな!」
次の瞬間、散々痛めつけられた冒険者たちがよってたかってアベルを殴りつけ、リングから放り出した。
「あの子、勇者なのに負けちゃったね」
「……いい気味。あんなの絶対勇者じゃない」
リンとナディがそれを見てつぶやく。
「……勇者だからって、そんな大したことはないのかな?」
「ボクとしては、勇者の実物をみて、ますます君の言う「キチクゲーム」なんてのがホラ話だって確信しちゃったけどね」
情けない勇者にあきれるリトネとリトルレットだった。

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