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柔竜拳
「つ、強くなったに決まっていますよ。よし!『剛竜拳』」
全身から『気』を発して防御壁を展開する。
次の瞬間、なんとか頭に乗っかっていた兜がスポーンという音を立てて、頭から飛び出した。
「……え?」
リトネが呆然とする中、兜はコロコロと地面に転がっていく。
「……ぷっ。くくくくく」
それをも見ていたマザーは、我慢できなくなったように吹き出した。
「あっはっは!愚か者め。体の内部から吹き上がる『気』で防御壁を作るのじゃから、防具の類はすべて外れるに決まっておるじゃろう!」
マザーは腹を抱えて笑っている。
「えっ?ということは、伝説の防具って……」
「まあその、ハッタリじゃ。なぜかそれを身に着けないと勇者と見なされない決まりでのう。我が寄り父である勇者アルテミックも、実戦じゃ邪魔になるといってハダカで戦っておったぞ」
衝撃の事実をしって、リトネは絶句する。
「だ、だってキチクゲームじゃ、勇者はこれを身に着けて戦っていたのに!」
「知らぬ!ともかく『雲亢竜拳』においては防具は不要じゃ。剣も邪魔になろう。男なら拳一つで戦うのじゃ!」
マザーは堂々と言い放つのだった。
「そんな……」
「まあ、こんなものは今の(・・)そなたにとっては不要じゃ、ほら、帰るぞ」
マザーに頭をつかまれて、リトネは飛んでいった。
「ふふ。「今の」か。次に来るときは、あの兜をつけて戦える本当の勇者になっておるやもしれんな」
マザーたちを見送りながら、ハリネズミの長老はつぶやくのだった。
シャイロック城 中庭
今日もリトネはマザーに稽古をつけられていた。
「では、そろそろ50メートルいってみるかの」
「も、もう勘弁してください」
リトネの泣き言を聞き流し、頭をつかんで空中に浮かび、50メートル上空で手を離した。
「うわぁぁぁぁぁ!」
叫び声をあげて落下するリトネだったが、何度も行ったたおかげて少し余裕を持っていた。
「全開!『剛竜拳』」
自分の全員に分厚い気のバリアーをはる。
(よし!これなら!)
全員を固めて、落下のショックに耐える。大きな音を立てて、リトネは地面と激突した。
「ぐはっ!!!!!えっ?」
落下の衝撃が振動波となって内臓を揺さぶり、リトネは口から血を吐いた。
「な、なんでこんな……衝撃は『気』で防いだのに」
「いくら直接的な衝撃を防いでも、激突によって生まれる振動波は防げない。そこが『剛竜拳』の限界なのじゃ」
血をはきながら悶えるリトネの横に立って、マザーが説明する。
「『剛竜拳』は完璧な防御だと思っていたのに……」
「阿呆。そんなわけがあるか。そろそろ次の段階に進める時期が来たということじゃ」
マザーはそういって、邪悪に笑う。
「覚悟しておけ。次の修業はさらに厳しいからのぅ」
「ひぇぇぇぇ!」
マザーの悪人顔に恐怖するリトネだった。

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