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勇者の試練
「そうか。なら、今のお前にぴったりの修業場所があるぞ。ついてこい」
マザーの後についてしばらく歩くと、いかにも何かありそうな洞窟があった。
「あの……これは?」
洞窟の入り口の石碑には「挑戦者歓迎! 勇者アルテミックの着けていた伝説の兜があります」と書かれていた。
「ここは、『天竜の兜』が納められている洞窟じゃ」
マザーが説明する。
(あれ?キチクゲームじゃ確か川のそばの祭壇に安置されていたような……)
ゲームと違うことに疑問を感じつつ、リトネは気になっていることを聞く。
「この洞窟の中から立ち上ってくる……この臭いは……」
「お察しのとおり、ここはワシらのトイレですじゃ」
ハリネズミの長は、恥ずかしそうに笑った。
「と、トイレ?なんでそんなところに勇者の兜が?」
「一応防犯のためと、ちょうど都合のいい便利な場所にあるからですじゃ」
長老についてきた小ネズミたちも、チュッチュと笑っている。
「あの……もしかして、修業って?」
「そうじゃ。この中から兜を取って来い」
無情にも命令してくるマザーに、リトネは全力で反論した。
「あの……師匠にも以前言いましたが、私は勇者じゃないので、そういうのは勇者に任せたいのですが」
「ああ。あのキチクゲームとかいうホラ話か」
マザーはふんっと鼻で笑う。
「そ、そうです。勇者はきっと現れます。だから、彼に任せるということで……」
そういって逃げようとするリトネの頭を、マザーはむんずとつかむ。
「戯言を。勇者がそうホイホイ現れてたまるか。それにワラワは当分誰にも加護を授けるつもりはない。ミルキーを守るには、お前とリンたちだけで充分じゃ」
そういって問答無用で洞窟に投げ込む。
ボッチャンという音がして、リトネはネズミたちの糞に頭から突っ込んだ。
「ひどい!師匠の鬼!悪魔!くせぇぇぇぇぇぇぇ!」
暗闇の中で、一人リトネは絶叫するのだった。
それから数時間後……
「はあはあ……やっとここまでたどり着いた」
フンまみれになりながらも、リトネはようやく宝箱までたどり着く。
「勇者の兜なんかいらないけど、これも修業だとおもって……」
宝箱を開けようとするが、なぜか開かない。
「なんでだよ!」
(ああ、宝箱は地上の祭壇まで持ってこないと開かないぞ)
地上にいるマザーからの思念波が届く。
「仕方ないな……って、重い!」
宝箱を担いだとたん、あまりの重さで足が地面に沈む。
同時に宝箱からロープが出て、リトネの体と結びついた。
「こ、これは!この地面って、ネズミの糞だよな、まさか!」
(そこからが試練じゃ。はやく宝箱を持ってこないと、フンの中に沈んでお終いじゃな)
マザーの含み笑いが聞こえてくる。
「くっそおおおおおおお!こんな汚い試練があるか!!!!師匠の馬鹿!」
暗闇の中でリトネの呪詛が響く。
「くそっ!『剛竜体』」
『気』を全身に張り巡らせて、一時的にマッチョになる。
そうして、宝箱をかついで元の道を走っていった。
「でも……出口までもたないかも。もしこれが切れたら、宝箱の下敷きになってフンの中に埋まって……そんな死に方は嫌だ!」
死に物狂いで『気力』を振り絞るリトネであった。

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