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紡績業
「こちらで蚕の養殖と、繭から糸をつくる作業をしております」
森の中にある少し開けた広場に、新しく作られた建物があり、その中から煙がでている。
「仕事が早いなぁ」
「ええ。リトネ様が派遣してくださったあの方が機械を作ってくれたので、あっという間に糸を作ることができるようになりました。人使いが荒いから、我々もこき使われていますけどね」
アマグーモは苦笑している。リトネとイーグルが建物の中に入ると、赤い頭巾をかぶった少女が蜘蛛族に機械の操作を教えていた。
「こらそこ!つまみ食いしない!」
少女に叱られて、蚕を食べようとした蜘蛛族の少年がビクっとなる。
「さ、やってみて」
少女に言われて、おそるおそる機械を操作してみる。
「そうそう。そうやって五本の糸をより合わせてひとつにするんだよ」
「こ、こうですか?」
蜘蛛族の少年少女は尻から糸を出しながら、六本の手で懸命に糸を繰ると、どんどん太い糸の束ができあがっていった。
「リトルレット、がんばっているね。どう?順調?」
「うん。リトネ君が召喚した機械と本を参考にして、簡単に糸を作り出せる機械を作ったよ。繭糸3本と蜘蛛族の強靭な縦糸一本、粘着性に優れた横糸一本を捻りあわせることで、暖かくてしっかりとした生地を作ることができるようになったんだ。生蜘蛛糸と名付けたよ」
リトルレットの前には、大掛かりで複雑な構造をした製糸機械があった。
「こんなのを作るって、やっぱりリトルレットは天才だな」
「へへん。ボクの実力を思い知った?まだまだこんなものじゃないよ」
そういいながら、工場の奥のほうに案内する。そこには糸を織る機械が何台もあった。
「え?『清らかなるはた織り機』が何台もある!?」
「ボクが『清らかなるはた織り機』を参考にして、蜘蛛族の体にあったはた織り機を何台か作ったんだよ。これで『天蜘蛛の羽衣』をたくさん作れるようになるだろうね。楽しみ!」
リトルレットはわくわくして言うが、それを聞いたアマグーモの顔が引きつる。
「……一族の宝と同じものを作っていただいたことは感謝するのですが……その、天蜘蛛の糸をつくるには体力がいるので……その……あまりたくさんは……」
「えーーーっ?早く『天蜘蛛の羽衣』って着てみたいのに」
残念そうな顔をするリトルレットだった。
泣きそうな顔をしているアマグーモにリトネが耳元でささやく。
「アマグーモさん。ゆっくりでいいですからね。最終的にはヒロインたちと俺とついでに勇者の分もあわせて八着はほしいけど、無理して体を壊したら意味ないですから」
「は、八着ですか……ううっ……なんとか頑張ってみます」
とことんまで利用されてしまう蜘蛛族だった。

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