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天雲人
「こ、これは……なんじゃ?小屋か」
初めてみる物体に、イーグルは驚く。
体の一部には入り口のようなものがあいていた。
中に入ると、なんだかよくわからない機械が並んでいる。
「これは、『天雲人の小船』ですよ」
「『天雲人』じゃと?」
イーグルは興奮する。
『天雲人』とは、勇者アルテミックの伝説にも出てくる、神に近い一族だった。
巨大な天空城ラビュターに住み、この世界を見守っているといわれる。
人類史上その城に行けたのは、『天竜の装備』に身を包んだ勇者アルテミックただ一人と言われていた。
「なんでこんなものがここにあるのじゃ!」
「は、はい。10年前、突然大きな音がしたかと思うと、この円盤がロズウィル村に堕ちてきたのです。中には幼い女の双子と赤ちゃんが乗っていました。前の村長は双子を奴隷として売り、赤ちゃんを養女として育てたのです」
「まさか、それが……」
「はい。リンなのです」
村長は視線を地面に落とした。
「なるほど。平民なのにあそこまでは魔法が使えるのは、リンが天雲人の血を引いておったからか。ネリーも魔法の才能に驚いておった」
イーグルがひげをひねりながらうなる。
「前世の知識によれば、勇者が二人以下のヒロインを連れて魔王と戦う場合、この船を使います。飛空艇ペガサスウィングが使えなくなった以上、これを確保しておく必要が……」
「わかった。そうでなくともそのような珍しいもの、我が家が確保しておくべきじゃろう。この船と引き換えに、年貢の二割に相当する金額を村に支払おう」
「あ、ありがとうございます!」
村長以下、村人全員が土下座して感謝するのだった。
村はずれのボロ屋
そこには、元村長が住んでいた。
村八分にあって以降、そうとう村人たちから殴られてつらい思いをしたようで、全身に傷害が残り、歩けないほど衰弱して寝込んでいた。
「はい。お父さん。卵だよ」
お土産として持ってきた卵を飲ませると、元村長は涙を流して喜ぶ。
「ありがとう……うう。いつもすまん。お前が仕送りをしてくれるから、わしはまだ生きていける」
「家族なんだから、困ったときはお互い様だよ。はやく元気になってね」
そういいながら、お金のはいった包みをそっと渡す。
元村長は罪悪感に耐えきれず、涙を流しながら話し始めた。
「うう……実はワシはお前の実の父ではないのだ。幼いころ、お前が捨てられているのを拾って育てただけだ。それも最初は大きくなったら、奴隷として売れるかもしれないという下心あってのことだ。そんなワシでも、まだ父と呼んでくれるのか?」
「うん。だってお父さんは、ちゃんと私を育ててくれたもん」
リンは明るく笑って、そういった。
「そうか……なら、話しておかねばならん。お前を拾ったとき、その場に10歳ぐらいの女の双子がいた。その子らも可愛らしい子だったが、少し耳がとがっており、時折赤い目になった。人間とは思えないほどの魔力をもっていたこともあり、ワシは気味が悪くなって奴隷商人に売り飛ばしてしまった。今頃どこでどうしているか……」
昔犯した罪を後悔し、元村長は涙を流す。
「そうかぁ。私にはお姉さんがいるのかも。いつか会えればいいな」
リンは笑顔になるのだった。

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