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貸し出し禁止
「ここは図書室なのか?なにも地下に隠すように作らなくてもよいものを」
そう思っていると、奥でリトネとゴールドが言い争っている声が聞こえた。
「リトネ様!お願いします!イーグル様が帰ってきたので、これから私は領地に帰って内政をしなければならないのです。ぜひこの本の貸し出しを!」
ゴールドは必死にリトネに頼み込んでいるようである。
「だめったらだめです。ゴールド様、ここの本は門外不出。貸し出しは厳禁です」
「そんな!ひどい!彼女たちと別れないといけないなんで!リトネ様のけち!」
ゴールドの声からは絶望が感じられた。
「ゴールド様には、ちゃんと奥様がいらっしゃるではないですか」
「……妻は冒険が好きで、私など放っておいて年中旅烏。領地に帰っても会えるかどうか……」
「それに、もし奥様にこの本を見られたら、確実に没収されます。だからだめです」
「そ、そんな……ううっ」
ゴールドの嗚咽が聞こえる。
「これ、何をもめておるのじゃ」
イーグルがおくの部屋に入ると、何冊かの本を抱きしめて泣いているゴールドと、冷たい顔をしているリトネがいる。
ゴールドが抱いている本には、「若奥様はエルフ」と題名が書かれている。耳のとがった可愛らしい女性の絵が描かれていた。
「これはなんじゃ?見せるがよい」
ゴールドから無理やり取り上げて、ページをめくる。そこには男の夢が詰まっていた。
「貴様という男は、いい年して春画などと……」
イーグルが苦い顔をすると、ゴールドはあわてて言い訳する。
「ち、ちがいます。これは芸術で……そもそも、これらの本をこんなにたくさん召喚したのはリトネ様です。私は悪くありません!」
「ふえっ!ゴールド様の裏切り者」
いきなりゴールドに売られて、今度はリトネが動揺した。
「まったく……異世界とはどういう世界なのじゃ。嘆かわしい」
そうつぶやきながら、本棚の本を手にとって見る。
そこには実物と見まがうほどの精巧な絵でかかれた、豊満な臀部をもつ美女が乗っていた。
「けしからん……実にけしからん……尻など出して、なんとはしたない…」
そういいながらも、イーグルの頬は緩んでいる。
「叔父上は年増の尻がすきなのですかな。変わっておりますな。やはり女性は若い女の胸がよろしいでしょうに」
ゴールドが自分好みの美乳美女の写真集を持ってきて主張する。
「リトネはどう思うのじゃ?」
いきなり祖父に聞かれて、リトネは動揺する。
「べ、別に私は……」
「よい。これだけの本を異世界から取り寄せておいて、今さらであろう。どのような女が好みなのじゃ」
イーグルはにやにやしながら聞いてくる。
「じ、実は私はこのようなものが……」
可愛らしい制服をきた女の子の写真集や漫画を見せる。
「ほう……」
「可愛らしいですな」
イーグルとゴールド、リトネは、まるで祖父と子と孫であるかのように意気投合するのだった。
「ふむ……しかし、いろいろなものがあるものじゃのう。若いころに父に連れられていった王都のスラムの春画館よりも、はるかに質、量ともに充実しておる」
イーグルは部屋のいろいろな本を見て感心する。
「そんなのがあるんだ……」
「この類の本は高価でな。質の悪いものでも一冊最低5アルはするのじゃ。そう考えると、ここはある意味宝物室とも言えるな」
イーグルは部屋の中を見渡して感心する。一万冊にも達するほどの本があった。
「ええ。だから貸し出し厳禁なのです」
リトネはまじめな顔をして言い放った。
「うむ。ワシもそう思う。というわけで、ゴールドは我慢せい」
「そ、そんな!」
部屋にゴールドの嘆きが響き渡るのだった。

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