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Digital Analyzer Zero

NO GAME, NO LIFE.

イラスト作成依頼の難しさ(後編)イラストレーターとのやり取りで不和になり後味悪く終了してしまった顛末

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前回の記事の後半となる。なお、この記事に関してもイラストレーターとの詳細なやり取り、契約内容、金額、名前等は一切公表しない。

前回のあらすじは、ネットでイラストアイコン作成の実績のあるイラストレーターAさんに依頼したが、Aさんが徐々にやる気をなくしていき、俺も先方のスキルに疑問を抱き、ラフ完成直前にAさんから作業をキャンセルされたというもの。
その後、オーダーサイトを巡り、LancersでイラストレーターBさんのポートフォリオに目を留める。

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photo by カズキヒロ(フリー写真素材ぱくたそ)
(記事内容と画像は無関係です。)

LancersでイラストレーターBさんに依頼する

Lancersでキャラクター作成のカテゴリーを確認したところ、実績が多数あり、全て高評価、リアルな画風からデフォルメ・萌え・美少女など様々な画風で描かれていたBさんにメッセージを送った。
オーダーを依頼したところ快諾して頂いた。
条件面も、初期提示額より下げてもらってプロジェクトを開始することが出来た。

最初はラフからと思っていたので、俺からAさんの時と同じように作成イメージとして伝えたのは、作者ないし作品名だけだった。
ダークでリアル調の世界観のキャラクターという話をお伝えした。
幸いにもBさんもそうした世界観が好みの嗜好ということだったのも運が良かったと思っていた。
なお、Bさんとのやり取りは最初はメッセージで、仕事を依頼後はプロジェクト管理画面で行っていた。
Lancersで契約した場合は外部サイトを使えないので、何れもLancers内のシステムを使っている。

素人の俺がいきなり詳細を伝えても上手くいかないと思ったため、構図・ポーズ・装備品などは全く指定せず作成に入って頂いた。
そしてラフを見ながらイメージを膨らませようと思っていた。
そのほか、アイコンは例え800ピクセルで作ってもシステム登録時にリサイズされてかなり小さくなるということを伝えただけだった。

3日後、アップされた3点のイラストを見て驚いた。
ラフというのに既に色塗りまで完成していた。
スピードもさることながら、俺の想像を遥かに超えるキャラクターデザインを提示してもらった。

3点とも完成度が高いのは言うまでもなく、今まで見たことのないキャラクターになっている。
ダークヒーローのようでもありボス敵のようでもあった。
サイズが小さくなることを踏まえて差し色(ベースカラー以外にアクセントを出す色)についても考慮されている。

以前IT系のグループワークで「仕事とは何か?」という課題で、俺のチームでは「仕事とは、人に予想を超えた感動をもたらすこと」と結論付けてプレゼンしたが、そのときのことを思い出した。正に、予想を遥かに超えた領域では、人は驚きを超えてただ感動に至るのだ。
当時は机上の話だと思っていたが、実際にイラストを見ると果たしてその結論が蘇ってきた。

暗転

ここまでは非常にいい展開だった。
俺の場合、人生を振り返ると最初に失敗し、そこから何かを掴んで二度目は成功するというパターンを踏む事が多い。正に今回も一回目は失敗し二回目は成果が出た。
しかしそう上手くはいかなかったのである。

ラフをもらったのは3点だった。価格は勿論1点分の値段であるが3点とも貰えるという話になっていた。
ラフのアップ後、Bさんとのやり取りで、仕上げのようになってはいるが、現状はラフを800ピクセルにリサイズした所ラフ感がなくなり仕上げのようになってしまったと言われた。
Bさんから仕上げに入っていいかと確認された。俺からは特に不満なく、3点のうち気に入った1点をお願いしたいと伝えた。
また、他の2点についても色塗りまで仕上げてもらえるということだった。

Bさんが作業している間、俺はラフ段階のイラストをブログやTwitterに登録してリサイズ後の様子を見たりしていた。
そして既に仕上げに入ったにも関わらず、修正したほうがいいと思えてきて、Bさんに依頼を出した。

まず背景が暗すぎるのでもう少し人物にライティングを当てるということ、それからコピー使用を防ぐためにこのブログ用のキャラクターであるということを示すサインをキャラクターデザインに組み込んでもらうこと。この2点を伝えた。
変更に関してBさんからは返事がなかったが、変更点を組み込んだ仕上げファイルをアップロードしてもらった。

Bさんは1日程度でラフから一気に色塗りを完成させて連絡してきた。

この時点で、Bさんは作業が早くクオリティがあるが、ラフの段階(やサイン文字の件)でこちらとアイデアを共有せず作業を全て自分で進めてしまう傾向が出ていた。
が、俺の方はキャラクターイラストを少しでも良くしたいとそれしか考えていなかった。

俺の中ではまだ5割、6割くらいだったのだが、Bさんの中では作業はほぼ終わりの段階だったのだろう。意識的にこういう差が生まれてしまっていた。

俺は仕上げのアップロードされたイラストに対してここから更に変更したいが可能か?と申し出た。Bさんは大きな変更でなければ可能ですと言っていた。

俺が出した要求は、ラフの段階では気にならなかったが、仕上げになって輪郭などがくっきりしたことで幾つかの気になる要素や印象が代わってしまった部分に対しての修正を要請した。

例えば、キャラクターにより美しさを出す、髪の毛が短いので長くする、目が威圧的なので優しくする、色がくっきり出過ぎなので抑える、体の装備は明瞭ではない方がいい、などと伝えた。また、サインについては俺が指定する前に勝手に俺のLancersでのIDをデザインに入れられたので、文字を修正してもらうように伝えた。

Bさんから見ると仕上げの段階に入ってのこの修正依頼はきついものだったのだろう。俺はそういう心理を全く汲むことなく、この人はプロだからイラストについてもクライアントが納得するまで付き合ってくれる人だと思って、要求を次々と出してしまった。

Bさんはそれでも全て料金以内で対応しますと連絡し、数時間で対応済みのファイルをアップロードした。

俺は受け取ったイラストをブログやTwitterに登録して様子を見てみた。
そしてBさんに再度連絡した。
要請した内容は以下のようなものだ。
「体の装備品は位置がおかしいし目立つ。もしどうしても入れるなら入れる理由が欲しい。」
「サインはリサイズ後に切れてしまうので位置を修正。」
「背景色はリサイズ後に色が強すぎて人物を殺してしまうので暗色の方がいいのではないか。」

Bさんからは返事はなかったが、数時間後に修正されたイラストがアップロードされた。
俺はまた受け取ったイラストをブログやTwitterに登録する。
そして背景色を暗色にしてもらったがリサイズ後に暗色が悪目立ちし過ぎるので何かライティング方法を検討してもらえないかと連絡した。
また、体の装備品については、このバージョンでは削られていたが、一旦このままでOKとした。

すると、Bさんからの返信があった。原文に近いニュアンスで以下のような内容である。

「申し訳ありません。仕上げ後に頂いた修正や変更が、量や内容で当初お話ありました些細な範囲ではなくなってきております。
全ての箇所ではありませんが本来であればラフの段階で指摘だの変更だのお願いしたい部分でございます。」

そして、今後の追加修正に関しては一点幾らで受けること、それでも構わないのであれば指摘された修正の方を進めると言って来た。
俺は、Bさんがこれまで従順に作業していたので、言葉が急に反抗的なものになったことと、いきなり追加料金の話を出されたことでショックを受けて動揺した。

それで、一旦は、ラフから仕上げの段階でイメージが変わってきたので、修正は申し訳なく思っていると連絡した。
また、イラストについてはまだ完成していないと思っていたので、背景の修正は追加料金でないと対応出来ないのかと確認した。

Bさんは伝えたとおり追加料金であれば修正すると言ってきた。
追加料金を払って残りの部分を修正してもらうか、このまま修正なしで終わるか。
どちらかになったが、俺はショックを通り越すと、怒りが込み上げてきた。
お金を払ってプロジェクトを依頼しているクライアントであるこちらに対し、作業者からの「ラフの段階で指摘だの変更だの」という物言いはとても許容出来ない。
俺の職業であるITエンジニアで客先に対してこのような言葉やメールの文章を使った場合、著しく相手の心象を悪くするだろう。そのくらいの許容の出来なさがあった。

デジタル大辞泉の解説によると「だの」とは幾つかの事柄を同列に並べる意味としてある。

だの(ダノ)とは - コトバンク

だの[並助]

[並助]体言や用言の終止形などに付く。全体の中からいくつかの事柄を同列に並べあげる意を表す。「出張だの会議だのと毎日忙しい」「好きだの嫌いだのとわがままばかり言う」

Bさんからすれば相手に対して特に失礼という意識はなかったのかもしれない。
が、俺は「AだのBだの言いやがって」というような意味に受け取ってしまった。
直ぐに返信を出さず、一日待って怒りが収まるかも知れないと思ったが、逆に腹を括ってしまった。
「Bさんの物言いは許容し難い。プロジェクトは終わりだ。」

翌朝直ぐにBさんにメッセージを出した。
こちらも原文に近いニュアンスで掲載する。

発言の中で「ラフの段階で指摘だの変更だのお願いしたい」について不快感があります。クライアントに対する言葉遣いとして正しいとは思えません。
ラフの段階で色づけしてほぼ完成の状態で提示されましたが本来はもう少し前の時点から提示して作り上げていくべきではないでしょうか。
ラフの段階ではいいと思いましたが仕上げでイメージが変わりました。
イメージが変わったのは仕上げが問題で「指摘だの変更だの」することになったと思いますがそれはこちらのせいでしょうか。
申し訳ありませんがあなたとはこれ以上仕事できません。プロジェクトを終了してください。

Bさんから直ぐに言葉遣いが失礼であった事、ラフと仕上げのイメージが違ったことを謝罪する文面を送ってきた。
また、システム上、プロジェクトを終了するのは、キャンセルするのか、完了で終了とするのかを確認してきた。
何れも決定権はクライアントの俺にあるからだ。

俺は、イラストを完成させたのは事実なのでキャンセルは出来ないと思ったしする気もなかった。但しBさんのイラストを使うつもりもなかった。
ああいう物言いをされてそのイラストを嬉々として使うというのは許せなかった。
Bさんにはプロジェクトを完了報告して下さいと伝えた。

Bさんからは完了報告の件を承ったことと、依頼に対してのお礼と非礼を詫びる文面が送られてきた。これでBさんとの直接的なやり取りは終了となった。

プロジェクトは「完了」ステータスになり、クライアントはランサーを、ランサーはクライアントを評価する。
俺はBさんの評価に5点(最高点)を入れた。怒りを叩き付けて低評価にも出来たが、BさんがLancersで今後も仕事する限りその評価は残り続ける。
それを俺の一存でやるのは少し違うのではないかと思えた。
Bさんから俺への評価は5点だった。

これが今回イラストオーダーサイトでキャラクターアイコンを作成した顛末の全てだ。
俺は結局二人目のイラストレーターで完成直前まで作業を進めたにも関わらず、感情的なやり取りをしてしまい、結果そのイラストも使うことが自分の中で許せず、ブログやTwitterで使えるイラストは完成しなかった。
2ヶ月近い期間と幾ばくかの依頼費は全く無駄になった。
イラストレーターと実際にやり取り出来たこと、Lancersを使ったプロジェクトの進め方が体験出来たことが僅かな収穫だろうか。

今回の問題点と反省

Aさんのオーダーへの問題点
イラストレーターへのオーダーは結果的に失敗続きだったが、Aさんの場合の問題点を挙げると、事前にAさんのスキルや作業環境を十分に確認せず俺がオーダーしてしまった。もっと事前調査をしていればAさんのスキルに途中で失望することもなくオーダーを避けられた。

Aさんは機械的に俺の指示を反映しようとするもスキル不足、アイデア不足で、求めているクオリティが出せず、結果的にクライアント(俺)がAさんの能力を超える要求を続けてAさんが負担に耐えられなくなり離脱してしまった形になった。

Bさんのオーダーへの問題点
Bさんはその点十分に事前調査を行い、俺の予想を超えるスキルがあったが、クライアント側と協調して進めようとはしないタイプだった。それで作業者の側でほぼ完成まで持っていってしまったことで、クライアントと作業者の間で意識の違いが生まれた。
恐らくBさんの中では終わりに近付いた所で俺から修正点を出されたことで有料オプションを申し出たのだが、その物言いも不用意な一文だった。
もし客先作業に慣れているなら相手を怒らせるようなメッセージは避けるだろう。
だが自力の高いBさんにはこれまでのクライアントではそういう経験がなかったのか、Bさんにはクライアントの心中を慮る配慮が足りなかったと言える。

Bさんにも「修正を入れるならもっと早く言えよ」ということもあっただろう。
例えば電話やテレビ会議であれば柔らかい物言いで相手を怒らせる事を避けられたかもしれない。しかしネットゆえに言葉でしか伝達出来ず言葉遣いをどう捉えられるか分からず、非常に気を配らなければならない。

クライアント(俺)の問題点
Aさんのケースではアイコン作成の実績があったので、安易に依頼してしまったのが失敗だった。
Bさんのケースではある時点でイラストを完成させれば良かったのだが、細かい事に拘って延々と修正点を出し続けてしまった。有料なら有料で進めれば良かったのに、物言いの僅かな部分に反応して激高してしまった。

その後、LancersでBさんの実績を見ると数件のプロジェクトが完成しており、どのクライアントからも満点評価で感謝の文面が続いている。
BさんはLancersで問題なく続けているようだ。

と、まあこのようにしてイラスト作成は俺の熱意が覚めたこともあり終了した。
俺が今ブログやTwitterに登録しているのはゲームでクリエイトしたキャラクターのバストアップだ。
これは誰に肖像権があるのか知らないが、クリエイトしたプレイヤーのキャラクター肖像は作ったプレイヤー本人にあるのではないかと思っている。
ウィッチャー3のゲラルトのようにプレイアブルなキャラクターが用意されている場合はゲーム会社に肖像権があるが、クリエイトしたのがプレイヤーなら問題ないのではないか。

Lancersの操作や工程について

システム的な話もしておこう。
Lancersは始めて使ったが、慣れないとかなり独特なシステムで戸惑う部分が多いと思う。
このシステムの肝は、自分がクライアント(発注側)なのか、ランサー(仕事をする側)なのかということ。
クライアントかランサーかでメニューも全く違う。
最初、それに気づかず、ランサーのメニューで表示していてプロジェクト情報が表示できず、色々いじっていて、ようやく気づいた。
俺は依頼者なのでクライアント用メニューで管理しないといけない。

左のメニュー切り替えのところで、クライアントのメニューに切り替えてプロジェクト情報を表示できる。

切り替え前(ランサー用)

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切り替え後(クライアント用)

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Lancersでの工程例
Lancersでは最も単純化した場合でも以下のように進行する。

  1. プロジェクト依頼
  2. ランサー承諾
  3. エスクロー金入金
  4. プロジェクト開始
  5. ランサー完了報告
  6. 支払い
  7. プロジェクト終了

上記のようにプロジェクト開始前にエスクロー金(仮払い金)を払う工程が入っているので揉めることはないし、工程が今どの部分で誰待ちの状態かも全て明確に可視化されている。

イラストレーターの保有スキル、作業環境、使用ツール、過去の作業履歴とそれに対するクライアントからの評価も全て入っているので、過去どのような作品でどのような評価を受けてきたかも、事前にクライアントは知ることが出来る。
工程を進めるかどうかのやり取りは全てメッセージで行う。

イラストの場合、アップする際はイラストレーターがメッセージにイラストファイルを添付してクライアントにメッセージを送り、クライアントはメッセージに添付されたイラストを受け取る。
メッセージはGmailなどメールアドレスを設定しておけば着信連絡が来るので、頻繁にLancersのメッセージをチェックする必要はない。

ランサーの側から見ても仕事を積み重ねるとLancers内での実績と評価値が上がり次の仕事を請けやすくなる。実績0の人と100の人ではほとんどのクライアントが100の人に依頼するだろう。
Lancersの手数料は安くはないが、クライアント、ランサー共にメリットがあるシステムだと言える。

イラスト作成の工程
イラスト作成の工程としては、Bさんに以下のように進めて頂いた。
イラストレーターにより差異はあるが大まかにはラフ確定、線画、色塗り、仕上げという工程になると思う。

  1. ラフ
  2. 線画/おおまかな厚塗り
  3. 仕上げ

終わりに

イラストアイコンを作成しようと思う人は、自分がどの程度のスキルをイラストレーターに求めているかを事前に十分にイメージしてから作業を依頼したい。
イラストレーターのスキルは一定ではないし、画風の得意分野、画材による製作環境の違いもある。

実際に作業に入ったら、クライアントもイラストレーターも、互いにいい作品を作る、気持ちよく作業する、工程を明確にする、どこから有料オプションにするか等を意識して作業に臨んでもらいたい。
俺のような失敗を避けるために。

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