視点・2016参院選 地方の活性化 各党の目配りを問う=論説委員・松本泉
毎日新聞
大阪・ミナミの道頓堀や黒門市場は平日でもアジアや欧米からの観光客でにぎわう。「爆買い」人気で、大阪の消費額は飛躍的に伸びた。関西経済にとって久しぶりの明るい話題だ。
一方、かつて日本経済を引っ張った家電業界では、シャープが台湾企業に買収され、三洋電機は事実上消滅した。バブル崩壊後の20年間で大阪府内の製造品出荷額は4割減り、中小のメーカーが密集する東大阪市では町工場が約1万から約6000に減った。
地方経済の構造的な長期低落に歯止めがかからない。東京一極集中から脱却し、地方を活性化させるためには何が必要なのか。選挙戦で議論を交わすべきテーマである。
自民党は公約で「地方創生なくして日本の再生なし」とうたうが、具体策は政府機関や企業の本社機能の地方移転支援、観光の振興など新味に欠ける。問題は実効性だ。
民進党は「地域主権改革」推進を主張する。民主党政権時代に導入した「一括交付金」復活が柱だ。しかし自治体から「使い勝手が悪い」との声が上がるなど当時の評判は必ずしも高くなかった。雇用創出や財政支援などを公約に掲げる党は多いが、それだけでは物足りない。
地域が抱える課題を解決しながら活性化につながる産業を育て、自立した経済圏の確立に踏み出すにはどうすればよいか。
例えば、関西財界が設立したシンクタンク、アジア太平洋研究所は、健康・医療産業を有望なビジネスに挙げる。先進モデル地域の実現に産官学で取り組めば、急速な高齢化というピンチを好機にできるはずだ。
地元の資源を生かして活性化の糸口にしようという自治体の取り組みは、危機打開のヒントになる。
中国山地の中央にある岡山県真庭市は昨春、官民共同で国内最大級のバイオマス発電所を稼働させた。林業の不振を逆手にとって間伐材や木くずを利用し売電で利益も出している。
山間部にある徳島県神山町は光ファイバー網を整えたことで、首都圏のIT企業など十数社が進出した。移住者も相次いで飲食店が増え、農産物の地産地消という好循環も生まれた。
東京一極集中の是正に特効薬はない。公共事業や大型イベントの誘致も開催も構造問題の解決にはつながらない。
大切にしたいのは、地方が自力で活性化を模索する動きだ。それぞれの地域の実情に応じたきめ細かな政策を持っているのはどの党か、じっくりと見極めたい。