人々が集う日常の空間を、またもテロが無残に切り裂いた。 バングラデシ…[続きを読む]
31年前に熊本・旧松橋(まつばせ)町で起きた殺人事件について、熊本地裁…
・最新の社説は朝刊休刊日を除き午前5時半ごろ更新します。(編集の都合などで遅れる場合があります)
31年前に熊本・旧松橋(まつばせ)町で起きた殺人事件について、熊本地裁が裁判のやり直しを決めた。
犯人とされた男性の自白では、犯行に使った後に燃やしたはずの布きれが、検察庁に保管されていたことが新たにわかった。地裁は、有罪と認定する根拠がゆらいだと判断した。
当時の捜査の過程をたどると大きな疑問がわく。
検察が男性を起訴した4日後に、自宅近くで問題の布きれは見つかっている。自白との食い違いに気がつかなかったのであれば怠慢のそしりは免れない。気づいたのなら、当然、原因を解明しなければならないのに、その形跡はうかがえない。
もし不都合な事実には目をつぶろうという思惑がはたらいたとしたら、犯罪的行為というほかない。結局、この布きれは裁判に提出されないまま、男性は懲役13年の判決を受けた。
証拠は捜査当局のものではない。安心・安全な社会をつくるために、国民は警察や検察に強い権限を与えている。そして、その権限をもちいて収集されるのが証拠である。公共の財産といっていい。現場の捜査員一人ひとりにまで、この認識を浸透させなければならない。
再審の決定が出た同じ日に、大阪府警によるずさんな事件処理の調査結果がまとまった。65署のうち61署で、殺人を含む2270の事件の捜査と8千を超す証拠品が放置されていた。
それらの多くはボイラー室や更衣室などにあったという。事件の被害者の思いを踏みにじるのはもちろん、遺留物などの質が劣化して、科学鑑定が間違う危険も十分に考えられる。
捜査や裁判は法と証拠にもとづいて進められる。その証拠の扱いがこれでは、刑事司法への信頼など望むべくもない。
裁判員制度の導入にともなう手続きの見直しにより、以前に比べて多くの証拠が弁護側に示されるようになった。さらに先の国会で成立した法律で、保管している証拠の一覧表をつくって弁護側に渡すことが、検察官に義務づけられた。
大きな前進ではあるが、課題はなお残る。ひとつは、一覧表の交付にとどまらず、証拠の全面開示にまで歩を進めるかどうか。もうひとつは、現場の運用にゆだねられている再審請求段階の審理のために、どのような開示ルールを作るかだ。
引き続き議論を深め、一致点を見いだす必要がある。その際忘れてならないのは、この国の刑事司法が繰り返してきた冤罪(えんざい)の歴史であり、人生を狂わされた人たちの悲痛な叫びである。
PR比べてお得!