田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)
NHKの討論番組で、共産党の藤野保史衆議院議員が防衛費を「人殺しのための予算」と発言したことが問題視され、その責任をとって党政策委員長を辞任したことは記憶に新しい。表向きは、藤野発言が共産党の方針と違うための辞任であると伝えられている。しかしネットではこの藤野発言こそ、共産党の自衛隊や防衛費に対する典型的な見方だという意見も多い。その傍証も目にすることができる。
例えば共産党の尾張美也子市議(東京国立市)は、Twitterで「人殺しの道具等の軍事費」として防衛費を批判している(現在は削除されて書影が保存されている)。また共産党がその党の綱領で、日本国憲法の全文を保持する一方で、自衛隊を違憲だとみなしていることは有名である。憲法違反の存在だから自衛隊の行う活動は違法だという、共産党の考えがストレートに表れている話だろう。個別的な自衛権の行使で、仮に何者かが殺傷される事態が生じれば、共産党の発想では法的裏付けがないために「人殺し」とみなすのだろう。そう理解してもなんの不思議でもない(念のために、個別的自衛権の行使で人が殺傷されるケースが生じないことを筆者が願っているのは言うまでもない。そういう事態を防ぐために我々はできる限りの努力をするべきだ)。
現状で、共産党や社民党以外の政党で自衛隊を違憲であると党是で主張している政党は国会で議席を占めていない。憲法九条は、日本が個別的自衛権を有していることを認めていて、自衛隊はその権利(個別的自衛権)の行使を行う主体として合憲である、というのが、圧倒多数の政党とまた国民の世論調査でも過半数を大きく上回る人たちの支持を得ている事実である。
だが共産党以外に、「自衛隊=違憲」が多数を占めているケースを比較的最近目にしたことを思い出す。朝日新聞が行ったいわゆる安保法制(平和安全法制)をめぐる憲法学者へのアンケート結果である。ちなみに朝日新聞だけではなく、テレビ朝日の「報道ステーション」や東京新聞も同様な調査結果を得ている。