Microsoft Azure(旧称:Windows Azure)概説(2015年3月版)

Microsoft Azure(旧称:Windows Azure)概説(2015年3月版)

まだ知らない人のための最新Microsoft Azure入門

2015年3月27日 改訂 (初版:2014/08/11)

PaaSとIaaSの両方をサポートし、積極的に新機能・新サービスが追加されている、クラウド環境のAzure。多岐に渡る、その最新の全体像をまとめて理解しよう。2015年3月の新名称に対応。

株式会社 pnop 亀渕 景司
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 読者の皆さまはMicrosoft Azure(旧称:Windows Azure)をご存じだろうか? もし、まだ知らない、知っているが名前だけ、であれば、ぜひ本稿を参考にオープンで時流の先端に存在するクラウド環境の一端を知っていただければ幸いだ。

 また、すでに知っているという皆さまも、日進月歩のクラウドの世界、最新の情報を本稿で確認し、拡充されたサービスをぜひ知っていただきたい。

Microsoft Azure概要

 モバイルファーストクラウドファーストを目指すプラットフォームとして、昨今のAzureはさまざまなサービスが提供されている。

 以前に比べ、PaaSIaaSというくくりで表現されることが多くなっているのが特徴だ。最近の傾向としてはネットワークインフラやIaaS機能が拡充され、エンタープライズに対応してきている。直近の動向としてはPaaSの更なる拡張や、特にIoT(Internet of Things)を意識したデータの一連の流れを制御するためのサービスや、未来予測まで行うためのサービスが充実してきている。

 またモバイルファーストとして、iOSやAndroidなどの多様なプラットフォームや開発言語に対応している。SDKなどの各種ツールもGitHubで公開されており、開発に参加することが可能だ。

 Microsoftクラウドインフラストラクチャは、Azureだけに限らず、さまざまなサービスなどを支える部分だ。データセンターやネットワークなどを含め、非常に重要な部分ではあるが、Azureのサービスとしてそのまま提供されるものではないため、本稿では説明を割愛する。

 次節以降ではAzureの各サービスについて簡単に説明していく。なお、図の中の絵の意味は、上から順に読むことで理解できるようにしている。

コンピューティング

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Virtual Machines(仮想マシン)

 Virtual Machinesは、Azure上でWindowsやLinuxを動かすための、いわゆる“IaaS”だ。OSより下のレイヤーの部分はAzure側が提供し、利用者は自由にアプリケーションのインストールや構成を行える。またSQL ServerやOracleなど、あらかじめアプリケーションがインストールされたOSイメージ(=VHDファイル)の使用や、利用者自ら構成したOSイメージをアップロードして使用することもできる。

図2 Virtual Machines概略

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App Service

 App Serviceは、新しい枠組みで複数のサービスをまとめたサービスの総称だ。Web Apps、Mobile Apps、Logic Apps、API Appsの4つのアプリケーション・タイプ(後述)で構成される。またBizTalk Servicesのオンプレミス接続など一部機能も包含しており、より柔軟に、素早くWebアプリケーションを展開・連携させることができる。

図3 Azure Service概略

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Web Apps(旧称:Websites)

 Web Appsは、Webアプリケーションをホスティングすることに特化したApp Serviceのアプリケーション・タイプだ。現時点ではWindows上で、.NET/PHP/Node.js/Python/JavaといったラインタイムのWebアプリケーションを稼働させることができる。

 また自動スケール機能やブラウザー上でのコード編集、GitHubやTFS(Team Foundation Server)といったバージョン管理システムからのアプリケーション配置や、FTPによるファイルベースの配置など、多数の機能が含まれる。

 もし標準的なWebアプリケーション、例えばWordPressやUmbracoなどを利用したいのであれば、ギャラリーから選択して簡単に配置することも可能なのが特徴だ。

図4 Web Apps概略

「WebDeploy」=Webアプリケーションをパッケージ化して配置できるツールで、「Web配置ツール」とも呼ばれる。
下のボックス内にある6個の要素は、左からVisual Studio OnlineやTeam Foundation Server/Gitリポジトリ/GitHub/DropBox/Bitbucket/CodePlexを指す。

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Mobile Apps(旧称:Mobile Services)

 Mobile Appsは、iOSやAndroid、Windows、Windows Phoneなど、さまざまなプラットフォームが利用するバックエンドサーバー機能を提供する“MBaaS”(Mobile Backend as a Service)で、Web Appsと同様にApp Serviceのアプリケーション・タイプの1つだ。 .NETやNode.jsでサーバーサイドのデータ処理やWeb APIなどを開発でき、認証やアプリケーションへのPush通知、スケジューラー機能を簡単に利用できる。またWeb Appsと同様に自動スケールなどの機能を有する。

 クライアント側の開発も各プラットフォームのネイティブ向けSDKが提供されており、サンプルも含め、すぐに開発を始めることが可能だ。またHTML/JavaScriptやXamarinPhoneGapCordova)にも対応している。

図5 Mobile Apps概略
  • *補足: 執筆時点では、Mobile Appsはプレビューとして提供されている。またMobile Apps内のPush通知は、実際にはAzure Notification Hubs(後述)を使用している。旧称であるMobile ServicesはNode.jsでのバックエンドサービスやAndroid Studio、PhoneGapなどのテンプレートも利用可能だが、Mobile Appsでは執筆時点では利用できない。

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API Apps

 API Appsは、Web APIをホストすることに特化したApp Serviceのアプリケーション・タイプの1つだ。単にWebアプリケーションとして動作するだけでなく、API情報などのメタデータを公開して、より小さな粒度のマイクロサービスとして展開することで、後述するLogic Appsを使ったサービス間連携が行えるのが特徴だ。

図6 API Apps概略
  • *補足: 執筆時点では、API Appsはプレビューとして提供されている。

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Logic Apps

 Logic Appsは、複数のAPI Appsを組み合わせてフローを作成・実行できるApp Serviceのアプリケーション・タイプの1つだ。このフローで使えるのは、開発者が作成したAPI Appsだけではない。単純なHTTPやSMTPといったプロトコルの呼び出しの他に、Office 365やSaleseforceなどのSaaSやTwitterといった一般的なサービスへのコネクターがMarketplaceに登録されており、これらを使うこともできる。実際にそういったSaaSやサービスを使って処理を実現するには、Marketplaceから連携したい機能を選び、認証情報などの必要事項を設定するだけだ。

 フローの定義そのものはJSON形式だが、GUIのデザイナーを使って簡単にAPI Appsを追加し、処理をつなげていくことができる。

図7 Logic Apps概略
  • *補足: 執筆時点では、Logic Appsはプレビューとして提供されている。

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Cloud Services(クラウドサービス)

 Cloud Servicesは、仮想マシンとApp Serviceの中間に位置する“PaaS”だ。OSは「Guest OS」と呼ばれる特定時点の状態で固定化されたWindowsをベースとして利用し、利用者はバージョンを指定してクラウドサービス専用にまとめられたアプリケーションパッケージを配置し、サービスを提供する。同じPaaSのApp Serviceと比べて、OSの構成(例えばWindowsコンポーネントの追加など)は可能になっているが、仮想マシンほどの柔軟性はなく、構成などは永続化されずに指定されたGuest OSの状態とアプリケーションパッケージを基に都度構成されるのが大きな違いだ。

図8 Cloud Services概略

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Azure Batch

 Azure Batchは、大規模な並列およびハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)アプリケーションを実行するためのサービスだ。Azure Batchでは、.NET Frameworkで作成した実際の処理を行うタスクを実行するために、コンピューティングリソース(プール)の用意や自動的なスケーリング、定期実行やオンデマンド実行のためのスケジューリングを提供する。また並列処理に必要となるタスクのキューや連携に必要な裏側のサービスも自動的に管理してくれる。

 開発者は純粋に並列実行させたいタスクの開発と作業項目(ワークアイテム)に注力でき、その他の実行に必要な基盤を提供してくれるのがAzure Batchの特徴だ。

図9 Azure Batch概略
  • *補足: 執筆時点では、Azure Batchはプレビューとして提供されている。

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Azure RemoteApp

 Azure RemoteAppは、Officeなどのアプリケーションをリモートで実行するためのサービスだ(例えばスマートフォン上などでOfficeのExcelを使ったりできるということ)。Windows Serverで提供されるリモートデスクトップサービスのRemoteAppをAzureが提供しているとも言える。Azure RemoteAppのクライアントは、Windowsだけでなく、Mac OS XやiOS、Android、Windows RT、Windows Phone 8.1などがあり、さまざまなプラットフォームで利用できる。

図10 Azure RemoteApp概略

データサービス

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Storage(ストレージ)

 Azure Storageは、BLOB(ブロブ)Table(テーブル)Queue(キュー)Files(ファイル)からなるデータをREST APIで扱うためのストレージサービスだ。

  • BLOB: ファイルなどのコンテンツ(=ブロックBLOB)や、仮想マシンのOSイメージ(=VHDファイル)などの大容量ファイル(=ページBLOB)を扱うことができる。
  • Table: 一般的なNoSQLのように非構造化データおよび半構造化データを扱うことができる。
  • Queue: サービス間での非同期タスクなどを行う際に利用するメッセージングサービスを提供する。
  • Files: Azure Storage上のデータをWindowsでの標準的なファイル共有プロトコルであるSMB 2.1プロトコルを使用してファイル共有を行える。

 また、BLOBストレージ上のデータのHDDへのエクスポートやHDDからのインポートなども一部地域でサービスが開始されている。最近ではオンプレミスに設置するSANであるStorSimpleと連携し、BLOBストレージ上にデータを保護できるサービスも開始された。

図11 Storage概略
  • *補足: 執筆時点では、Azure Filesはプレビューとして提供されている。

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SQL Database(旧称:SQL Azure)

 SQL Databaseは、Azureが提供するSQL ServerをベースとしたRDBMSのサービスだ。利用者は、サーバーの管理にとらわれず、アプリケーションの開発に専念できる。また、使い慣れた開発手法や管理ツールなどはそのまま利用できるなど、基本的なRDBMSとしての機能はSQL Serverと同様だが、マルチテナントであることやサーバーの管理はマイクロソフトが行うため、一部機能やパフォーマンスには制限がかけられている。

図12 SQL Database概略

「TDS」=表形式データストリーム(Tabular Data Stream)。「SSMS」=SQL Server Management Studio

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Cache(キャッシュ)

 Cacheは、分散型のオンメモリキャッシュサービスだ。開発者は、Azureのキャッシュサービスを使用することで、データへの高速アクセスをアプリケーションに組み込むことができる。また、サービスとして提供されるため、キャッシュサーバーのメンテナンスはAzureに任せることが可能だ。

 現在は、Redisを使用した「Redis Cache」の他に、AppFabricキャッシュを提供する「マネージキャッシュサービス(Managed Cache Service)」、クラウドサービス上にAppFabricキャッシュを構築する自己ホスト型の「In-Roleキャッシュ」の3種類が提供されている。

図13 Cache概略
  • *補足: 本稿では説明していない「共有キャッシュサービス(Shared Caching Service)」については、2014年9月1日に終了となり、現在はサポートされていない。

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DocumentDB

 DocumentDBは、ドキュメント指向のNoSQLデータベースを利用できるサービスだ。DocumentDBではJSON形式とJavaScriptをネイティブサポートしており、非構造型データをJSONで扱うことができる。一般的なRDBMSで提供されているようなSQL構文を用いてRESTfulなインターフェース経由でデータを処理できるほか、JavaScriptを用いたストアドプロシージャーやユーザー定義関数もサポートする。

図14 DocumentDB概略
  • *補足: 執筆時点では、DocumentDBはプレビューとして提供されているが、2015年4月8日(米国時間)に一般提供が開始予定であることがアナウンスされている。

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Search

 Searchは全文検索をするためのサービスだ。開発者が検索対象のデータを追加またはSQL Databaseなどと連携しインポートすれば、インデックスの生成やスコアリングなどを自動的にAzure Search側で行ってくれる。アプリケーションからはREST API経由でキーワード検索やファセット(=複数の付加情報)による絞り込み検索を行えるので、容易にアプリケーションに全文検索や絞り込み、オートコンプリートのような高度な検索機能を追加可能だ。

図15 Azure Search概略

アプリケーションサービス

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HDInsight

 HDInsightは、分散データ処理の定番であるHadoopMapReduceエンジン)を利用できるサービスだ。クラスターとしてはHadoopだけでなく、HBaseクラスターを使用することも可能だ。利用者は簡単にクラスターを構成し、Javaや.NETを使用して開発を行い、必要なときに必要なだけ処理を行うことができる。

図16 HDInsight概略

「Nameノード」「Dataノード」は、分散処理で用いられるサーバーで、「メタデータを管理する役割」「データを保持する役割」を担当する。

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Machine Learning(機械学習、Azure ML)

 Machine Learningは、Azure上で機械学習を行うためのサービスだ。Machine Learningでは、「実験(Experiments)」と呼ばれる単位の中でさまざまな処理を行える。データソースとしては、CSVだけに限らず、SQL DatabaseやAzure Storage、HDInsight上のデータなどを扱うことができ、データの読み込み・抽出、変換や重み付け、評価やR言語を使用した統計解析をブラウザー上のGUIで実行したり、結果をビジュアルで見たりできる。また、作成した実験を保存し、Webサービスとして公開、再利用可能だ。

図17 Machine Learning 概略

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Event Hubs(イベントハブ)

 Event Hubsは、大量のデータを受信し、ストリーミングでコンシューマー(クライアント)に配信できるサービスだ。機能としては、サービスバス・トピックに似ているが、IoTなど、大量のデバイスからのデータの受信などをより効率よく配信できるようになっている。

図18 Event Hubs概略

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Stream Analytics

 Stream Analyticsは、ストリーミングデータをほぼリアルタイムで分析・処理を行い、出力できるサービスだ。BLOBストレージ上のファイルやEvent Hubsからデータを入力し、SQLに似たStream Analyticsのクエリ言語を用いて処理し、再度BLOBやEvent Hubsに出力してストリーミングのパイプラインをつなげることができるほか、SQL Databaseに保存することも可能だ。

図19 Stream Analytics概略
  • *補足: 執筆時点では、Azure Stream Analyticsはプレビューとして提供されているが、2015年4月に一般提供が開始予定であることがアナウンスされている。

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Data Factory

 Data Factoryは、データの保存や処理、移動といったパイプラインを構成・実行するためのサービスだ。SQL Databaseや、オンプレミスのSQL Server、StorageやHDInsightなどのデータストアからデータを収集し、Data Factoryのパイプラインの中で日時によるスライスや複数のデータの結合など行った後、最終的にSQL ServerやSQL Databaseのようなデータウェアハウス(DWH)に出力可能だ。Stream Analyticsとは異なり、データの最終的な保存や過去の分析のためのデータ生成に利用できる。

図20 Data Factory概略
  • *補足: 執筆時点では、Data Factoryはプレビューとして提供されている。

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Media Services(メディアサービス)

 Media Servicesは、Azure上のリソースを使用して動画のエンコードや配信を行えるサービスだ。多数のエンコード形式に対応しており、1つの動画ソースをPC向けやHTML5、iOSなどのデバイス向けなどに、Azure上でエンコードできる。エンコード後はそのままAzure上で公開・配信することが可能だ(Azureであれば簡単にスケールすることもできる)。またストリーミング配信にも対応しており、セキュア配信として再生中だけでなくアップロード中や保管中のコンテンツを、Microsoft PlayReadyを使用したDRM(デジタル著作権管理)やAES暗号化機能を使用して保護することもできる。

図21 Media Services概略

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CDN(コンテンツ配信ネットワーク)

 CDNはBLOBストレージ上の画像やテキスト、ビデオなどのコンテンツやクラウドサービス上のコンテンツをデータセンターではなく世界29カ所のCDNノードに複製し、よりクライアントに物理的に近い場所から配信することでパフォーマンスを向上させるためのサービスだ。

 なお現在は、米国のEdgeCast NetworksのCDNノードを使用している。

図22 CDN概略

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BizTalk Services

 BizTalk Servicesは、EDI(企業間電子データ交換)を行うためのクラウド型メッセージ交換/ブリッジサービスだ。EDIだけでなく、EAI(エンタープライズアプリケーション統合)機能や、特にAzure App Serviceとオンプレミスのサービスを接続するためのハイブリッド接続(Hybrid Connection)機能などが提供されている。

図23 BizTalk Services概略
  • *補足: 執筆時点ではAzure App ServiceとオンプレミスのSQL Serverなどと接続するHybrid Connection(ハイブリッド接続)はプレビュー提供となっている。

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Service Bus(サービスバス)

 Service Busは、サービス間やアプリケーション間でメッセージの配信や接続を行うためのサービスで、複数の機能(具体的には下記の3つ)の総称だ。

  • Service Bus Relay(サービスバス・リレー): オンプレミスのアプリケーションと、ネットワーク境界を超えて同期的にメッセージを送受信することが可能だ。
  • Service Bus Queue(サービスバス・キュー): いわゆる“先入れ先出し”(FIFO)型のメッセージ配信をREST APIやAMQPで行うことができる。Azure StorageのQueueと異なり、AMQPのサポートなど、細かな仕様が異なるので、目的に応じて使い分けることが可能だ。
  • Service Bus Topic(サービスバス・トピック): Service Bus Queueと同じメッセージ配信でもパブリッシャー/サブスクライバー形式でメッセージを配信できるため、複数の受信者にメッセージを送ることができる。
図24 Service Bus概略

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Backup

 Backupは、Windows ServerやSystem Center Data Protection Manager(SCDPM)に統合されたオフサイトデータ保護サービスだ。Azureバックアップを使用することで、サーバー上のデータをAzureのBLOBストレージ上にバックアップして安全に保護できる。

図25 Azure Backup概略

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Site Recovery(サイト復旧、旧称:Hyper-V Recovery Manager)

 Site Recoveryは、オンプレミスのHyper-Vサーバー上やSystem Center Virtual Machine Manager(SCVMM)で稼働しているHyper-V仮想マシンを、他の拠点やAzure上に保護できるサービスだ。Site Recoveryを経由することで、他の拠点やAzure上に仮想マシンの状態をレプリケーションし、拠点に障害が発生した際にレプリケーション先で仮想マシンを稼働させ、サービスを継続させることが可能だ。またInMage社のScottテクノロジを使用してVMware環境の保護も可能だ*1

図26 Site Recovery概略
  • *1 Microsoftが2014年7月にInMageを買収したことにより、InMageのテクノロジがAzure Site Recoveryサービスに機能統合された。

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Azure Active Directory(Azure AD)

 Azure Active Directoryは、Office 365でも使用されている認証基盤だ。アカウント管理、他のサービスへのシングルサインオンやOAuth2、SAML 2.0、WS-Federation、OpenID Connectなどオープンな規格を使用した認証連携やMulti-Factor Authentication(多要素認証)といった機能を備える。

 なお、オンプレミスなどで使用するWindows ServerのActive Directory Domain Serviceと異なりLDAPやドメイン参加といった機能は有していない。

図27 Active Directory概略

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Access Control(アクセスコントロール)

 Access Controlは認証のフェデレーションプロバイダーとして機能し、MicrosoftアカウントやOpenIDなど複数の認証プロバイダーとクレームベース認証に対応したアプリケーションとの橋渡しを行うためのAzure Active Directoryに含まれるサービスだ。アプリケーション開発者は、各認証プロバイダーとの差異を考慮せず、Access Controlとの連携にのみ注力すればよく、利用者に複数の認証オプションを提供できる。

図28 Access Control概略

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API Management(API管理)

 API Managementは、利用者が作成したWeb APIを管理するためのサービスだ。APIの公開の手助けや、レート制限/クォータ、モニタリング/分析などの機能があり、APIの作成に注力しやすくなっている。

図29 API Management概略

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Notification Hubs(通知ハブ)

 Notification Hubsは、複数のプラットフォーム上の大量のクライアントに短時間でプッシュ通知を送信できるサービスだ。WindowsストアアプリやWindows Phone、iOS、Androidなどのプラットフォームやデバイス固有の処理を意識することなく、通知ハブのAPIを使用することで、簡単に特定端末や全体、またはタグによるセグメント分けされた対象にブロードキャストなプッシュ通知が行える。

図30 Notification Hubs概略

「MPNS」=Windows Phoneアプリ向けのMicrosoftプッシュ通知サービス(Microsoft Push Notification Service)。「WNS」=Windows 8以降およびWindows Phone 8.1以降のアプリ向けのWindowsプッシュ通知サービス(Windows Push Notification Services)。「GCM」=Androidアプリ向けのGoogleクラウドメッセージング(Google Cloud Messaging)。「ADM」=Kindle Fireアプリ向けのAmazonデバイスメッセージング(Amazon Device Messaging)。「APNS」=iOSおよびOS Xアプリ向けのAppleプッシュ通知サービス(Apple Push Notification Service)

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Mobile Engagement

 Mobile Engagementは、iOSやAndroid、Windows PhoneやWindowsストアといったプラットフォーム上のアプリケーションの情報を収集し、リアルタイムに近い状態で把握するためのサービスだ。デバイス、利用地域といったユーザーの利用状況だけでなく、アプリケーション上のアクティビティなどを収集・分析し、効果的な通知やキャンペーンを実施することが可能だ。

図31 Mobile Engagement概略
  • *補足: 執筆時点では、Mobile Engagementはプレビューとして提供されている。

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Visual Studio Online

 Visual Studio Onlineはソースコード管理やタスク管理、テストの実行、継続的なインテグレーションや継続的なデプロイ、ロードテストなどを行うためのサービスだ。基本的にはMicrosoft Team Foundation Serverがベースとなっており、Azure上でマルチテナントとして提供されている。またアプリケーションのパフォーマンス計測など状況を把握し、アラートを上げる「Application Insights」と呼ばれる機能も含まれる。

図32 Visual Studio Online概略
  • *補足: 執筆時点ではApplication Insightsはプレビュー提供となっている。

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Marketplace(マーケットプレース)

 Marketplaceは、自身が持っているデータやアプリケーションを公開するためのサービスだ。データ使用量に対する課金やプロモーションなどが行える。

図33 Marketplace概略

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Scheduler(スケジューラー)

 Schedulerは、定期的または指定日時にHTTP/HTTPSを使用して他のWebサービスの呼び出しや、Azure StorageのQueueにメッセージを投げることができるサービスだ。アプリケーションのメンテナンスの実行など、指定期間で実施したいタスクを呼び出すのに利用できる。また、Webサービスを用意しなくてもQueueを経由して非同期に処理を依頼することも可能だ。

図34 Scheduler概略

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Automation

 Automationは、Azure上でWindows PowerShell Workflow構文で記述されたRunbookをスケジュールに従って実行できるサービスだ。あらかじめAzure PowerShell(=Windows PowerShellを使ってAzureを管理するためのコマンドレットを提供するモジュール)が組み込まれており、例えばオフタイムの仮想マシンの自動停止/開始や定型業務処理などのワークフローを、アプリケーションを作成することなく、自動化することが可能だ。

図35 Automation概略

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Operational Insights(オペレーションインサイト)

 Operational Insightsは、Azure上の仮想マシンや、オンプレミスのWindowsサーバー、またその上で動作しているSharePointやExchangeといったサーバーアプリケーションのログを収集し、分析を行うサービスだ。エージェントプログラムやSystem Center Operations Managerと連携し、専用のダッシュボードを使用してWebアプリケーションやスマートフォン向けのアプリケーションからAzure環境や既存のオンプレミスのシステムの監視や分析を行うことができる。

図36 Operational Insights概略
  • *補足: 執筆時点では、Operational Insightsはプレビューとして提供されている。

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Key Vault

 Key Vaultは、ハードウェアセキュリティモジュール(HSM)のキーを使用し、テキスト形式のパスワードやPFXファイルなどの秘密情報を暗号化して管理できるサービスだ。Key Vaultに秘密情報を集約することで、アプリケーションから利用するパスワードや証明書などの管理を行うタスクを分離し、安全に行うことができる。

図37 Key Vault概略
  • *補足: 執筆時点では、Key Vaultはプレビューとして提供されている。

ネットワークサービス

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Virtual Network(仮想ネットワーク、VNET)

 Virtual Networkは、Azure上の仮想マシンやクラウドサービスが利用する内部的なネットワークを提供するサービスだ。仮想ネットワークを使用すると、仮想マシンのインスタンス間の通信を仮想的な内部ネットワーク上で行うことができる。また、L2TP/IPSecを使用した「サイトtoサイトVPN」や、SSTPを使用した「ポイントtoサイトVPN」を構成し、オンプレミス環境やクライアントPCと接続することも可能だ。

図38 Virtual Network概略

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ExpressRoute

 Azure ExpressRouteは、Azureのデータセンター内のインフラと利用者の間にプライベートな接続を作成できるサービスだ。インターネットVPNとは異なり、「ExpressRoute対応プロバイダーが提供する閉域網」や「プロバイダーの施設」と直接接続を行うことで、より安全で高速なインフラを構築できる。

図39 ExpressRoute概略

「MPLS」=Multi-Protocol Label Switching

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Traffic Manager(トラフィックマネージャー)

 Traffic Managerは、ワールドワイドで負荷分散やWebアプリケーションの冗長化を行うことができるサービスだ。複数のAzure上のWeb AppsやMobile Apps、クラウドサービスまたは他のURLを、よりクライアントに近いデータセンターへ振り分けたり、ラウンドロビンで分散させたり、障害が発生した際に、登録した別のデータセンター上のアプリケーションへフェールオーバーしたりできる。

図40 Traffic Manager概略

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まとめ

 Azureがカバーする範囲はインフラからアプリケーション、サービスまで含めかなりの広がりを見せている。ぜひ皆さまの利用目的に合致するサービスを見つけて活用していただければ幸いだ。

参考

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