「盤デレラ」の楓新手▲5四銀から約半年。
またもやニコニコ動画発の新手がプロの公式戦で現れました。
動画作成者の「神崎蘭子さん」は「盤デレラ」の作者さんとは別の方で、
ニコニコ動画以外にもブログやTwitterなどでも精力的に活動されておられます。

で、問題の局面がこちらですね(4:50)。
画面右側の小早川紗枝さんが指した▲7七銀が1ヶ月後に実際プロの公式戦で現れたことから、
Twitterでは「こんちき新手」とか「紗枝はん新手」などとよばれています。
とはいえ、図面だけを見ても「なにがなんやら・・・」と思われる方も多いはず。
現在の横歩取り業界は8四飛+5二玉型がトレンドになっています。

昔はこのあと両者中住まいにじっくり組み合う将棋が多かったのですが、
お互い似たような形になれば先手の一歩得が物をいってきます。
そこで、後手は△7二銀と一手で囲いを完成させ、
△2三銀~△2四飛と飛車交換を挑むのが現代的な手法です。

この「△2四飛ぶつけ戦法」は2、3年前にプロ間で集中的に指され、なかでもこの形を得意とする佐藤天彦八段(当時)が後手横歩で10連勝の不敗神話を築いたのは記憶に新しい出来事です。
ただ、こういう一直線に斬り合う変化は先手も研究しやすく、じょじょに後手の採用率が下火になっていきます(本当はもっと明確な理由があるはずですが、情報の流れが早すぎて分かりません><)。
そして、△2三銀~△2四飛のかわりに指されるようになったのが、
△1四歩~△1五歩と端歩を詰める指し方。

これは簡単に言うと▲3六歩を待ってから△8六歩▲同歩△同飛から7六の歩取りを狙う意味です。
なお、△1四歩~△1五歩の2手では、
①△9四歩~△9五歩と反対側を伸ばす豊島流や、②△9四歩~△1四歩の中間策(名人戦第4局 佐藤天―羽生)も考えられ、それぞれの損得勘定は非常に難しいところ。
で、本譜△1五歩に▲3六歩と突けば△8六歩▲同歩△同飛▲3五歩までは一本道。

上図で、
①△8五飛は▲3七銀△3五飛▲8二歩で桂得が確定して先手良し。
また②△2五歩▲同飛(横に逃げるのは利かされ)△7六飛▲7七角は先手の歩得が大きいか。
後手困ったようですが、
③△8八飛成▲同銀△5五角打が「斎藤流」とよばれる意表の強襲。

この飛車切りは従来から部分的にあった仕掛けですが、8筋にキズを抱えた△7二銀型では後手無理筋と考えられていて、この定説に最初に挑んだのが斎藤慎太郎六段なんですね。
△8八飛成~△5五角打のあとは▲8三歩や▲7七桂が実戦でよく指されましたが、
前者は△8八角成、後者も△8七歩~△7七角成で左辺を突破され、先手が4九~3九~2八と右辺へ逃げ出す展開になったとき1五歩が後手にとって大きなプラスに働いています。

▲7七角はやや妥協っぽい雰囲気ではあるものの後手も端に2手かけているのでお互い様ってことでしょう。
斎藤流封じの▲7七角は比較的ゆっくりした流れになり一局の将棋。
しかし、先手番としては互角では面白くない――
というわけで登場したのが、「こんちき新手▲7七銀」ですね!!
(やっと話がつながった^^;)

銀上がりは左辺の二枚替えを拒否した手で、▲7七桂に比べて反発力が劣る(▲6五桂の味がない)代わりに後手の次の一手を△1九角成に限定することが可能です。
△1九角成は次に△2五歩の叩き(▲同飛は△2三香、横に逃げれば△2九馬)があるので▲3七桂といったん逃げます。

それでも△2五歩なら今度は▲同桂が手順に角取りなので大丈夫。
なるほど。幸子かわいい。
で、本譜▲3七桂に△8二歩と8筋のキズを消したところまでプロの実戦と動画の進行が完全に一致(すごい!)。

ここで先手にうまい攻めがあるかどうかが問題ですが・・・。
第1号局(6/16) 郷田―橋本戦 順位戦B級1組
第2号局(6/21) 真田―野月戦 叡王戦七段位
残念ながら2局とも先手が敗れてしまっていますね・・・。
しかし、立て続けに2局指されたということは両者にまだ工夫の余地が残されていそう。
今後の研究が楽しみです(^^)
またもやニコニコ動画発の新手がプロの公式戦で現れました。
順位戦B1郷田ー橋本戦で、この動画で指摘していた手がでました。幸子新手といっていいのかな。注目の棋譜は名人戦棋譜速報で!
— 谷川二森 (@twinforest) 2016年6月16日
神崎蘭子さんの将棋グリモワール 第4局《姉弟子紗枝》 (00:25:20) #sm28829544 https://t.co/EcBGdZVkE2
動画作成者の「神崎蘭子さん」は「盤デレラ」の作者さんとは別の方で、
ニコニコ動画以外にもブログやTwitterなどでも精力的に活動されておられます。
で、問題の局面がこちらですね(4:50)。
画面右側の小早川紗枝さんが指した▲7七銀が1ヶ月後に実際プロの公式戦で現れたことから、
Twitterでは「こんちき新手」とか「紗枝はん新手」などとよばれています。
とはいえ、図面だけを見ても「なにがなんやら・・・」と思われる方も多いはず。
「現代のさまざまな出来事を理解するには、その前の歴史を知る必要があるのです」そこで当ブログでは、この手が指されるに至った経緯を簡単に振り返っていきます!
by.池上彰
現在の横歩取り業界は8四飛+5二玉型がトレンドになっています。
昔はこのあと両者中住まいにじっくり組み合う将棋が多かったのですが、
お互い似たような形になれば先手の一歩得が物をいってきます。
そこで、後手は△7二銀と一手で囲いを完成させ、
△2三銀~△2四飛と飛車交換を挑むのが現代的な手法です。
参考記事: 将棋・序盤のStrategy
・横歩取り 第28期竜王戦1組5位決定戦0回戦 谷川浩司-佐藤天彦 棋譜検討
・横歩取り 第65期王将戦二次予選 松尾歩-行方尚史 棋譜検討(▲中住まい△2四飛ぶつけ型)
ただ、こういう一直線に斬り合う変化は先手も研究しやすく、じょじょに後手の採用率が下火になっていきます(本当はもっと明確な理由があるはずですが、情報の流れが早すぎて分かりません><)。
そして、△2三銀~△2四飛のかわりに指されるようになったのが、
△1四歩~△1五歩と端歩を詰める指し方。
これは簡単に言うと▲3六歩を待ってから△8六歩▲同歩△同飛から7六の歩取りを狙う意味です。
なお、△1四歩~△1五歩の2手では、
①△9四歩~△9五歩と反対側を伸ばす豊島流や、②△9四歩~△1四歩の中間策(名人戦第4局 佐藤天―羽生)も考えられ、それぞれの損得勘定は非常に難しいところ。
で、本譜△1五歩に▲3六歩と突けば△8六歩▲同歩△同飛▲3五歩までは一本道。
上図で、
①△8五飛は▲3七銀△3五飛▲8二歩で桂得が確定して先手良し。
また②△2五歩▲同飛(横に逃げるのは利かされ)△7六飛▲7七角は先手の歩得が大きいか。
後手困ったようですが、
③△8八飛成▲同銀△5五角打が「斎藤流」とよばれる意表の強襲。
この飛車切りは従来から部分的にあった仕掛けですが、8筋にキズを抱えた△7二銀型では後手無理筋と考えられていて、この定説に最初に挑んだのが斎藤慎太郎六段なんですね。
△8八飛成~△5五角打のあとは▲8三歩や▲7七桂が実戦でよく指されましたが、
前者は△8八角成、後者も△8七歩~△7七角成で左辺を突破され、先手が4九~3九~2八と右辺へ逃げ出す展開になったとき1五歩が後手にとって大きなプラスに働いています。
参考記事:渋谷凛の『横歩取り斎藤流』考察 - 神崎蘭子さんの将棋グリモワールそのため最近では「斎藤流(△1五歩型)」に対しては▲3六歩の前に▲7七角と上がる将棋が多いです。
▲7七角はやや妥協っぽい雰囲気ではあるものの後手も端に2手かけているのでお互い様ってことでしょう。
#ShogiLive 山崎-谷川 29手 ▲7七角
— 谷川二森 (@twinforest) 2016年6月22日
これも▲7七角か。▲7勝ー△6勝と拮抗しているのね。
代えて斎藤流に合流する29手目▲3六歩だと、これまでの前例で▲6勝△12勝とダブルスコア。そりゃ先手は▲7七角上がるわな。
— tmksStyle (@tmksStyle) 2016年6月22日
斎藤流封じの▲7七角は比較的ゆっくりした流れになり一局の将棋。
しかし、先手番としては互角では面白くない――
というわけで登場したのが、「こんちき新手▲7七銀」ですね!!
(やっと話がつながった^^;)
銀上がりは左辺の二枚替えを拒否した手で、▲7七桂に比べて反発力が劣る(▲6五桂の味がない)代わりに後手の次の一手を△1九角成に限定することが可能です。
△1九角成は次に△2五歩の叩き(▲同飛は△2三香、横に逃げれば△2九馬)があるので▲3七桂といったん逃げます。
それでも△2五歩なら今度は▲同桂が手順に角取りなので大丈夫。
ちなみに▲7七銀が対△1五歩型斎藤流といったのは、△9五歩だと端角出られる筋があって面白くないからですね!せっかく▲7七銀で大人しくしたのにこちらで暴れられるようではちぐはぐな感じがします! pic.twitter.com/t0Ia24rreG
— 身体を張って将棋を指す輿水幸子bot (@shogisachiko) 2016年6月16日
なるほど。
で、本譜▲3七桂に△8二歩と8筋のキズを消したところまでプロの実戦と動画の進行が完全に一致(すごい!)。
ここで先手にうまい攻めがあるかどうかが問題ですが・・・。
第1号局(6/16) 郷田―橋本戦 順位戦B級1組
第2号局(6/21) 真田―野月戦 叡王戦七段位
残念ながら2局とも先手が敗れてしまっていますね・・・。
しかし、立て続けに2局指されたということは両者にまだ工夫の余地が残されていそう。
今後の研究が楽しみです(^^)
41手目▲7五歩に△1八馬として▲8六飛△7一金▲5六飛にふわりと△4四角で後手もまずまず戦えると思っていました。
— 野月 浩貴 (@nozuki221) 2016年6月21日
次の△3六歩や△2七歩が狙い。
その時に▲4五桂を未然に防いでいる意味。
本譜の▲4六歩は想定手順で、△2七歩でイケるとの研究。この瞬間潰されなければ良くなりそう。