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千葉真一 夏八木勲さんへの思い語る
2013年05月14日 16時00分

 野性的な風貌の名脇役として映画やテレビで活躍した俳優の夏八木勲(なつやぎ・いさお、本名同じ)さんが11日午後3時22分、膵臓がんのため神奈川県鎌倉市の自宅で死去した。73歳だった。

 

 夏八木さんは慶大中退後、俳優座養成所に入所し、1966年にデビュー。同期には故太地喜和子さん、故原田芳雄さん、故地井武男さんらがおり「花の15期生」と呼ばれた“エリート集団”の1人だった。映画、ドラマと着実にキャリアを積んでいった中、特に共演が多かったのが日本が世界に誇るアクション俳優千葉真一(74)だ。

 

 超大作「戦国自衛隊」(1979)のロケは1年にも及び、友情を深めた。「御殿場のロケでクタクタになり、出演者は皆バスで10キロ離れた宿に帰って風呂を浴びて寝る。そんな過酷なロケで、我々2人だけがその10キロを走って帰っていた。そして来る日も来る日も、その道すがら人生や芝居の話をした。皆、我々を笑っていたけど、なっちゃんは足腰が強いし平気でやっていたよ。普段から摂生して鍛えていたからね」と千葉は当時を懐かしむ。

 

 無口な夏八木さんと多弁でエネルギッシュな千葉。一見、2人の関係は“静と動”の正反対に見える。だが、根っこの部分は同じだったという。

 

「彼は僕のジャパンアクションクラブ(JAC)にも入ってきて、一緒に汗を流した仲。僕はよく『肉体は俳優の言葉だ』と言うんだけど彼も同じ理念だった。芝居が好きな“役者バカ”だった」


 2人の出会いは映画「あゝ同期の桜」(1967年)。「京都の撮影所で、2人とも20代のころかな。静かで無口で、僕にとっては新鮮で好きなタイプの俳優だった。ウマが合ってかけがえのない親友になった。彼からいろんなことを教わったから、僕が“世界の千葉”と呼ばれるようになったのは、なっちゃんのおかげともいえる。よく、人生に親友は3人いると言うけど、僕の場合は高倉健さん(82)となっちゃんかな。人を傷つけない、思いやりのある理想的で素晴らしい人だった」

 

 千葉は昨秋、夏八木さんの病気が見つかって以来、自宅を訪ねるなどしてしょっちゅう励ましていた。

 

「最近も2人で新幹線に乗って、関西の名医に会いに行った。僕は100%治ると信じていた。その時は平気で歩いていたのに。他人に弱みを見せない強い人だったので…。鍛え抜いた肉体があるから大丈夫だと思っていた」


 関係者によると「夏八木さんの口からは、千葉さんを絶賛する言葉しか聞いたことがない。千葉さんも夏八木さんを『僕の人生の中で最高の俳優』と認めていて、事あるごとに仕事に誘っていた。互いによき理解者で、尊敬し合えるかけがえのない友だった」という。


 千葉はまだ、夏八木さんの死を信じられず、到底受け入れられない心境だという。「かなうなら、僕の枕元にでも化けて出てほしい。なっちゃん、もう一度会いたいよ」。世界を股に活躍してきた無敵のヒーローが、いつになく気弱な表情を見せた。

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