ヘリウム枯渇を回避できるか、新手法でタンザニアに巨大貯蔵地発見
20年後も風船を飛ばせますように。
専門家は以前からヘリウムの枯渇を警告してきました。でもイギリスの研究チームが編み出した新たな探査手法で、タンザニアの地下に大量のヘリウムがあることが発見されました。これによって、世界のヘリウム危機が回避できるかもしれません。
ダラム大学の大学院生Diveena Danabalanさんらは、ヘリウムの生成に火山活動が深く関わっていることを突き止めました。ダラム大学とオックスフォード大学はノルウェイの探査会社Helium Oneと協力し、地震活動の画像探査と地質調査を併せて行ない、ヘリウムが埋蔵されている場所を特定しました。Danabalanさんはこの発見について、日本で行なわれたゴールドシュミット会議で発表しました。
新たなヘリウムガス田発見は、科学界から待望されてきました。ヘリウムは単に風船に入れて楽しいだけじゃなく、その消費量の5分の1はMRIによるものです。MRIでは超電導磁石を使うため、超低温状態を作るための液体ヘリウムが必要なんです。また半導体製造でも、結晶を作ったり部品を冷やしたり、テスト容器の漏れを検知したりに使われています。基礎科学研究にも必要不可欠で、特に物質科学では、物質を超低温度まで冷やし、凍らせることでより観察しやすくするの液体ヘリウムが役立っています。
ヘリウムは宇宙でもっともたくさんある物質のひとつですが、地球上ではとても貴重で、大気の0.0005%くらいしかありません。ものすごく軽く、地球の大気からはすぐに逃げていってしまいます。今あるヘリウム貯蔵量のほとんどは、ウランなどの重元素が放射性崩壊した副産物です。多くは飛んでいってしまうのですが、天然ガスのように地下にとどまるものもあります。実際ヘリウムの収集は、天然ガスを処理することで行なわれています。
今ある世界最大のヘリウム貯蔵庫は1925年に米国政府が承認したテキサス州アマリロにあり、その規模は約約2832万立方メートルに及びます。でも1990年代には、米国議会はそれらヘリウム貯蔵庫をすべて売却し、民営化することを決めました。その結果ヘリウムの価格は高騰し、科学者たちの悩みの種となってしまいました。
我々は毎年、生産できるよりはるかに多くのヘリウムを消費しています。ノーベル賞物理学者のRobert Richardsonさんは、2010年の時点で我々の既存の貯蔵庫は25年以内に枯渇すると予言しています。そこから考えると、ヘリウム入りの風船はひとつ100ドルとかになってしまいます。
中には、ヘリウムが枯渇するという見方を否定する人もいます。というのは、放射性崩壊でつねに生産されてはいるからです。ただ、それを採取するのにコストがかかりすぎて非現実的なんです。
そこでダラム大学・オックスフォード大学による今回の発見が重要になってきます。この研究によって、隠れたヘリウム貯蔵庫を探し出すための有効な方法が示されました。彼らは、火山活動の強い熱が古代の岩石からヘリウムを解放することを明らかにしました。そしてHelium Oneの協力によって、そんな火山がたくさんあるタンザニアのリフトバレーを調査したのです。その結果彼らは期待通りの巨大なヘリウムガス田を発見し、その埋蔵量はMRI120万回分以上にあたると推定しています。
「我々は、タンザニアの東アフリカリフトバレーの地面から湧き出すヘリウムガス(と窒素)を採取しました」とオックスフォード大学のChris Ballentineさんがプレスリリースで言っています。「これは科学界のヘリウム需要を将来的に満たすためのゲームチェンジャーです。今後、同様の発見もそう遠くないかもしれません。」
ただ、地下に閉じ込められたヘリウムガスが火山に近すぎると、火山性ガスがヘリウムに混ざってしまいます。そうなるとヘリウムを分離させるためにコストや時間がかかります。そのため研究チームでは今、「古代の層と最近の火山の間にある、ヘリウムの解放と火山性ガスの希釈のバランスがちょうどいいゾーン」を特定しようとしています。
ヘリウムそのものが見つかっただけでは問題解決とはいかないようですが、これからも風船を買えるように、がんばってほしいです。
Image: Antoine2K / Shutterstock
source: EurekAlert!
Jennifer Ouellette - Gizmodo US[原文]
(miho)
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