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暗殺未遂
「爺、どうしたの?」
パーティ会場でちょっとした騒ぎが起きたので、ルイ17世がやってくる。
「これは陛下。なんでもありませんぞ。ただ少し不心得者が出ただけでして……」
大事にしてパーティを中止させまいとして、イーグルはとぼける。
「そう。だったらいいけど……」
「それより陛下。以前より申し上げていた、後宮の縮小についてなのですが……」
イーグルは、公に認知された王子を生んだ寵妃だけを残し、そのほかにも何十人もいる寵妃を実家に帰すように王に求めていた。
「い、いや、でもみんないい子だし……」
自分のハーレムを廃止したくない王は、必死にイーグルに言い訳する。
「もう跡継ぎの王子は何人もいます。陛下もそろそろ落ち着いて、子作りなど終了にすべきです」
「だけど……」
目を泳がせる王が、ある貴婦人の目を合う。イーグルの後ろにいて死角となっていたその寵妃はうなずき、豊かな胸元から細いナイフを取り出した。
「佞臣覚悟!天誅!」
叫び声を上げ、後ろから迫り、イーグルの背中をナイフで襲う。
王と話していたイーグルは反応できず、ナイフは背中に刺さった。
「やったわ!これで権力をほしいままにいる悪臣を……え?」
イーグルを指した貴婦人は、ナイフの手ごたえに違和感を感じる。
たしかに無防備な背中を指したのに、何か柔らかいものに受けとめられたのである。
「……いきなり何をされるのですかな。サフラン錫爵夫人。やれやれ、礼服に穴が開いてしまった」
全く何の痛みも感じてないかのように、イーグルは詰問してくる。
振り向いたイーグルの顔は、この上もなく冷たかった。
「……ば、化け物……」
「失礼な。問答無用で人の背中を刺す非道を為す者に、化け物扱いされる覚えはない。騎士どもよ。この寵妃、いや犯罪者を牢に入れておけ。後で背後関係をじっくり調べてやる」
悪魔のような顔になってイーグルは命令する。貴婦人は何かをわめきながら、連れていかれた。
パーティ会場に気まずい雰囲気が漂ってくる。
「あ、あの、爺……」
「陛下は御気になさらず。改革を為した時点で、このような輩が出てくることは覚悟しておりました。暗殺をおそれていては、何もできませぬ」
イーグルは傲然と言い放つ。彼に反感を持つものも、その剛直さだけは認めざるめを得なかった。
「そ、そうか。さすが爺だ。頼もしいよ」
汗びっしょりになって、イーグルの機嫌をとろうとする。
「今のはただの余興じゃ。さあ、皆せっかくの王の誕生パーティじゃ。大いに楽しむがいい」
イーグルが会場を見渡していうと、ようやく凍りついた雰囲気が溶けて、人々は再び歓談の輪に戻っていった。

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