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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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楽園

「おお……なんと虫が多い!」
「ここは天国なのか?」
「おいしそう!」
蜘蛛族は歓声を上げて、森に入っていく。さっそく網を張って見ると、簡単に虫が掛かった。
「おいしい!」
たちまち蜘蛛族による大虫食パーティが開かれる。
(うっぷ)
八本の手を持つ人間が、口から消化液を吐きかけて虫を食べる様子をみてリトネはちょっと気持ち悪くなったが、我慢して笑顔を浮かべていた。
「いかがです?住めそうですか?」
「最高です!」
「私たちに安住の地を与えてくれるなんて……リトネ様、ありがとうございます!」
一斉に尻から糸を出して、感謝の意を表す蜘蛛族だった。
アマグーモがリトネたちの前にたつ。
「あの……リトネ様、ありがとうございます。その、『天蜘蛛の布』を作る糸を吐くのはだいぶ栄養をつけてからじゃないといけないので、すぐにはできないかもしれませんけど……」
「ゆっくりでいいですよ。体力を回復してから、少しずつ作ってください」
リトネはアマグーモの体を労わる。その優しさに、不覚にもアマグーモはきゅんと来てしまった。
「ありがとうございます……きっとこのご恩はお返しします」
「ふふ。私は欲深いので、さらにあなた方にお願いしたいことがあるのですが」
そういいながら、リトネは杖を掲げる。
「異世界で廃棄されている、『蚕』こい!」
すると、ポタポタと虫の蛹のようなものが落ちてきた。
「皆様のお口に合えばいいのですが。できれば、これを育てて欲しいのです」
リトネにそういわれて、アマグーモは一匹口に含んでみる。
すると、なんともいえない甘みが口いっぱいに広がった。
「こ、これは……なんて上品な甘さ。しかも柔らかくて……ほっぺたが落ちそう」
アマグーモの様子を見て。ほかの蜘蛛族も寄ってくる。
「美味しい!」
「こんな虫、食べたことない!」
みんなむさぼるように食べている。蚕は成長が早く、栄養たっぷりで宇宙食の候補にも挙がっている優れたたんぱく質である。彼らにとってもごちそうだった。
「この森の木は桑という種類なので、この虫にとって大好物です。葉を食べさせれば簡単に増やすことができます。繭からは糸が取れるので、それを税として収めてくれれば、あなた方の権利と生活は我がシャイロック家がこれからずっと守らせていただきます」
リトネは彼らを領民として受け入れるという。
「リトネ様!」
「あなたこそ、我々の領主です!」
蜘蛛族はリトネに対して、ひれ伏して忠誠を誓う。
(くくく……これで紡績業を立ち上げることができるな。それに『天蜘蛛の布』をこれからずっと手に入れることができるし)
腹の中で笑いがとまらないリトネ。こうして、新たな領民を受け入れることができたのだった。
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