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虫の森
10日後
領都エレメントの南にある『虫の森』に、何人もの異様な姿をした者たちが集まっていた。
「姫様から一族にとって重大な話があると聞いたが……」
「もしや、我々の宝である『清らかなるはた織り機』が見つかったのだろうか?」
集まった男女は期待をこめてアマグーモを見つめる。彼らは何百年も一族の宝を探して、人の世に紛れて来たものたちだった。
全員が集まったところで、アマグーモが壇上に上がって演説する。
「忠実な我が一族よ。一族の至宝である宝を人間に奪われ、怒ったわが祖母が魔族に協力したせいで迫害されてきた我々ですが、ついにその苦しみも終わる時がきました」
壇上にいるアマグーモの顔は明るい。
「先日、私はついに『清らかなるはた織り機』を取り返すことができました」
その言葉と共に、壇上にはた織り機が運ばれる。それを見た蜘蛛族からどよめきが沸き起こった。
「まちがいない。『清らかなるはた織り機』だ!」
「これで一族の苦難も終わる……」
何には感動のあまり、。泣き出している者たちもいる。
それを見て、次にアマグーモは一人の人間の少年を紹介した。
「これも、我が一族の至宝を快く返還していただいた、シャイロック家の跡継ぎ、リトネ・シャイロック様のおかげです。一族を代表して深くお礼申し上げます」
アマグーモは深く頭を下げる。それに習って、一族の者も一斉に感謝の言葉を述べた。
「ありがとうございます!」
彼らに感謝されながら、リトネは話し始めた。
「私から一つ提案があるのですが、あなた方は一族が散り散りになっているとか。もしよろしければ、仲間を呼び寄せて、このシャイロック領に永住される気はありませんか?」
「え?」
意外な言葉に、一族の者たちは驚く。
「わが領の『虫の森』は多くの魔物化した虫たちが繁殖しているので、人間は誰も近寄りません。しかし、あなた方にはすごしやすい環境なのではないでしょうか」
リトネに言われて、恐る恐る森に入ってみる。
すると、巨大な蛾や蚊、蝶などが辺り一面に飛び交っていた。

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