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天蜘蛛の羽衣
「なるほどね。その人間のせいか。『清らかなるはた織り機』があれば、伝説の『天蜘蛛の羽衣』をたくさん作れるとおもったんだな」
「はい……我々はそれから、ずっと人間にまぎれて『清らかなるはた織り機』を探し続けました。それでつい先日、ようやく見つけたんですが、オークションで落札できるほどのお金もなく、ついつい忍び込んで盗み出そうと思ったんです」
アマグーモは涙ながらに訴えた。話を聞いたナディやリトルレットも、もともとの原因が人間にあったことを知って気まずい思いを感じて無言だった。
「あの、お兄ちゃん……許してあげようよ。かわいそうだよ」
アマグーモに同情したリンは、リトネにとりなそうとしている。
しかし、リトネはじっと何事かを考え込んでいた。
(たしか原作では、はた織り機を選んだ勇者が彼らの集落に持っていって、アマグーモと×××するイベントをこなして『天蜘蛛の羽衣』をつくってもらうんだったよな。まてよ、それじゃ……)
何かを考え付いたリトネは、にやりと邪悪に笑う。
「ですが、私たちシャイロック家はその盗賊とは何の関係もありません。お金を出して手に入れた以上、この「清らかなるはた織り機」は我が家のもの。そしてあなたはそれを盗みにきた罪人です。それを許しては、示しがつきません」
あえて冷たい顔を作って、アマグーモを突き放す。
「そ、そんな……本当にごめんなさい」
そういわれて、アマグーモはついに地面にはいつくばって泣き始めた。
「……リトネ……冷たい」
「リトネ君。許してあげなよ。勇者でしょ!」
両脇の婚約者からも冷たい目で見られる。しかし、リトネはいたずらっぽくささやいた。
(まあ、黙ってみててよ。全部丸く収めてみせるから)
そういわれて、二人は黙る。
「ですから、あなたには償いをしてもらいたいと思います」
「償い……ですか?」
「ええ。『清らかなるはた織り機』をお貸ししますから、『天蜘蛛の羽衣』を作ってください。そうしたら、許してあげます」
リトネは欲深く要求するのだった。

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