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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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アマグーモ

地下牢
手が八本ある少女が、体を縮めて後悔している。
「はぁ~やめとけばよかったなぁ。よく考えたら金爵家のお城だもんね。そこの宝物庫から泥棒するなんて無謀だったか。これで私は死刑になって、蜘蛛族は滅びるんだわ……」
将来を悲観してめそめそと泣く。
その時、数人の人間が牢の前にたった。
「はじめまして。私はリトネ・シャイロックと申します。シャイロック金爵家の跡継ぎです。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
話しかけてきたのは、貴族にしてはやたらと腰が低い少年だった。
「……はじめまして。私はアマグーモと申します。蜘蛛族です」
蜘蛛族の少女は観念したのか、素直に頭を下げた。
「……ツチグーモじゃないの?」
リトネと名乗った少年の隣にいる白い肌の少女は、油断なく杖を構えている。
「ツチグーモは私の祖母です」
アマグーモがそういうと、リトネたちはやっぱりといった顔になった。
「それで、どうしてここに来たの?まさか、ボクたちを殺しにとか?」
リトネの隣にいるもう一人の少女は、巨大なペンチをカチカチと鳴らして威嚇してくる。
「ち、ちがいますよう。そもそもお婆さんといっても、とっくに私たち蜘蛛族と縁が切れています。むしろ、魔物になったお婆さんのせいで、どれだけ私たち蜘蛛族が迫害されたか……」
アマグーモは気弱そうにしくしくと泣く。嘘は言ってなさそうで、リトネたちも少し警戒心を解いた。
「何か事情がありそうですね。よければお話していただけませんか?」
リトネにそういわれて、アマグーモは蜘蛛族がたどったここ400年の苦難の歴史を話しはじめた。

もともと蜘蛛族は獣人族の一種で、魔族とはなんの関わりもなかった。その容姿から人間に気味悪がられて、山奥でひっそりと暮らしていたという。
しかし、別にその事に対して不満はなかった。彼らの主食は虫であり、人里はなれた山中はむしろ彼らにとって楽園だったという。
それが人間と敵対するようになったのは、ある人間の盗賊のせいだという。
「盗賊?」
「はい。私たちが作る布が高く売れることに目をつけた盗賊が、私たち一族の至宝『清らかなるはた織り機」を盗み出したのです」
その事に激怒した当時の蜘蛛族の長ツチグーモは、魔皇帝ダークカイザーに魂を売って六魔公の一人となり、人間を虐殺した。
そして勇者アルテミックに倒され、蜘蛛族は魔族に加担したとして人間たちに駆り立てられて散り散りになってしまったという。
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