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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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清らかなるはた織り機

一ヵ月後
シャイロック城に何台もの大荷物を積んだ馬車が到着する。
「なんだこれ?」
「はっ。イーグル様からは宝物庫に保管するようにと命令を受けています」
家臣はイーグルからの手紙をリトネに渡す。
そこには、イーグルが国を荒らすシロアリを駆除した経緯が書かれていた。
「……というわけで、シロアリどもから財産を没収してオークションにかけたのだが、これらの品が売れ残ってしまった。王に泣きつかれたので、しぶしぶ我が家が買い取ったのだ。ガラクタばかりじゃが、何かの役に立つかもしれん。宝物庫にいれておくように」
イーグルの手紙をみたリトネは苦笑する。
「……我が家の宝物庫に変なものがあふれているのは、こういう訳か、きっと今までにも同じようなことがあったんだろうな。どれどれ……」
興味を引かれたので、運ばれた品をみてみる。
「『如意筒』どこまでも伸びる鉄パイプか……。『幽霊が見える鏡』なんて買い手はつかないな。『捨てるとゴミがどこかにいくゴミ箱』……」
微妙なものしかない気がする。
「本当だよね。これ、ゴミの間違いじゃないの?」
一緒になってみていたリトルレットも苦笑していた。
「まあ、何かに役に立つかも……って、ん?」
売れ残り品を見ていたリトネは、大きなはた織り機に目を留めた。
「こ、これは『清らかなるはた織り機』じゃないか!ラッキー!」
喜ぶリトネを見て、リトルレットは首をかしげた。
「ねえ。これって何なの?はた織り機だけど、シャフトが多すぎて人間じゃ扱えそうにないよ」
「実は、これは結構重要なアイテムなんだ。そうか、原作のリトネはこうやって手に入れていたのか」
思わぬ重要アイテムが手に入って喜ぶリトネ。
「はあ……またキチクゲームとかいうホラ話?」
それに対して、リトルレットはあきれていた。
「うん。原作のリトネは、勇者に対してこのアイテムと君の身柄の選択を迫って……はっ!」
そこまでいって、あわてて口を押さえる。リトルレットが目をつり上げたからである。
「へ、へえ~。リトネ君。そんなひどいことをしていたんだ」
ジト目でリトネを睨むリトルレットだった。
「も、もちろん俺はそんなことはしないよ。こんなアイテムより、君のほうが大事だし」
「はいはい。それで、勇者君とやらは、ボクと引き換えにこれを手に入れてどうするの?」
リトルレットは怖い目つきではた織り機を睨んでいる。
「あの……これを使って、好きなヒロインが装備できる最強装備『天蜘蛛の羽衣』を作って…」
「なんだって!!!そんなことのためにボクを捨てたの?」
「お、俺じゃないから!勇者がやったことだから!」
リトルレットにポカポカと殴られて、悲鳴を上げるリトネだった。

とある日の深夜
宿屋で一人の太った少女がため息をついていた。
「いつまでも迷っていても仕方ないよね……お金もなくなってきたし。よし、今日こそやるぞ!」
ためらいをすて、シャイロック城に忍び込むことを決める。
少女はゆっくりと服を脱ぎ捨てると、通常の腕の他にわき腹と下腹部から生えている腕が表れる。
六本の手をゆったりとした服を着て隠していたのだった。
「よし、いくぞ!」
音もなく壁を登り、糸を伝って空をゆく。その姿はまるで大きな蜘蛛だった。
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