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オークション
王都
ソレイユ銀爵や取り巻きの商人たち、そしてアントワネットをはじめとする貴婦人たちの持っていた財産は、貴族や大商人の参加するオークションにかけられて売り払われた。
しかし、中には売れ残ったものもある。
そのような売れ残りは、王都の広場で二次オークションにかけられていた。
「さあ、貴族のお屋敷からでた逸品だよ!この「聖なる水瓶」は、地面に置くだけで水が湧き出してくる神秘のアイテムなんだ!100アルからスタートだ!」
威勢のいい司会の煽り文句と共に、水瓶が地面に置かれる。しばらくすると、確かに水瓶から水が溢れ出してきた。
「なんだそれ!汚いな!」
集まった群集から野次が飛ぶ。湧き出てきた水は、ただの泥水だった。
「し、仕方ないだろ。そういうアイテムなんだから。さあさあ!誰かいないか!」
司会役が必死になって叫ぶが、誰もニヤニヤ笑っているだけで手を出さない。ここに集まった市民たちは、みんなこれが貴族に見向きもされなかった欠陥商品だって知っているのだった。
「うむむ……しかたないな。締め切り……」
「100アルだそう」
真夏だというのにコートをきて、深くフードをかぶった女が声を上げる。
「よし!あんたが落札だ!」
司会役の男は気が変わらないうちにと、さっさと女に水瓶を渡す。若い女の目が赤かったような気がするが、金を払ってくれたので気にしないことにした。
「よし。次は珍しいぞ!なんと、「生きている手首」だ!」
司会の男が引きつった顔をして、妙に生々しい人間の手首を取り出す。
それはピクピクと指が動いていた。
見ていた人たちがうえっといった顔になる。
「気持ち悪いんだよ!」
「グールの手首なんか持ってくるんじゃねえ!」
罵声を浴びせられ、司会の男はたじたじとなった。
「お、お前ら見る目がねえな!これは伝説の盗賊「シーフ」の手首だぞ。これをもっていれば、どんな鍵でも開けてくれるという冒険者の必需品だ。500アル!」
司会の男は項を張り上げるが、誰も気味悪がって手を出そうとしない。
「くそ……しかたない。締め切り……」
「……私が買います」
澄んだ声がして、壇上に緑色の長い髪をしたほっそりとした美少女が上がってきた。
フローラルな匂いが司会の男の鼻をくすぐる。
「お、お嬢さん。これはあんたみたいないいとこのお嬢様が買うようなものじゃ……」
「……我が家の家宝なのです。お父様を助け出すのには、どうしても必要なのです。親戚中に頼み込んで、なんとかお金を集めてきました」
そういって少女はずっしりと重い袋を渡す。たしかにアル金貨が500枚入っていた。
「そ、そうか。ならこれはあんたのものだ」
「ありがとうございます……」
少女は思いつめた顔をして、手首を大事そうに袋にしまった。
司会の男は気を取り直して、次に進む。
「さあ、次はこのオークションの目玉だ!」
壇上に大きなものが運ばれてくる。それをみていた見物人は、いっせいに首をかしげた。
「なんだそれ?」
「はた織り機か?でも、なんか変な部品が多くないか?」
見物人の言うとおり、一見はた織り機に見えるが、何本もの棒やシャフトが複雑に絡まっていた。
「これは「清らかなはた織り機」だ。これで「天蜘蛛の糸」を織ると、軽くて丈夫な伝説の衣が織れると伝えられている。これは本物の伝説のアイテムだ」
男がほこらしげにいう。たしかにはた織り機からは清らかな魔力が発せられていた。
「でも、どうやって織るんだよ。手が足りないぜ」
見物人から冷静な突っ込みが入る。たしかに余計な棒が多すぎた。
「それじゃ手が八本ないと織れないなぁ!」
そんな声が上がり、大爆笑が巻き起こった。
「う、うるさい。なんかやり方があるんだよ。さあ、かったかった!」
司会の男がヤケクソになって言うが、誰もが笑うだけ。
しかし、その時太った女が壇上に上がってきた。
「た、頼みます!これを私に売ってください」
真剣な顔で頭を下げる。太ってはいたが、顔は美しい少女だった。
「おっ?見る目があるねーちゃんだ。これは1000アルからだぜ」
「1000アル……」
金額を聞いて少女は絶望する。
「なんとかして、もっと安くしていただけませんでしょうか?」
必死に顔をして頼み込む少女をかわいそうに思うが、司会の男も仕事である。
「残念だが、だめだな。さあ、ほかにいないか!」
男が声をかけても、少女以外は誰も手を上げない。結局はた織り機は時間切れで売れ残ってしまった。
「さあ、次は……」
オークションは続いていく。少女は悔しそうにはた織り機を見ていた。

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