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養鶏
リンが管理している養鶏倉庫
朝早くから、リンが一生懸命ニワトリたちの世話をしていた。
「トリさんたち、ご飯ですよ~」
厨房で料理の際にどうしても出てくる野菜くずや売れ残り、残飯をもらってきて、細かく砕いてえさ箱にすれる。ニワトリたちはリンが来ると、先を争って餌箱に群がっていた。
「次は水の入れ替えですね」
古くなった水を外に捨て、魔法できれいな水を作って容器に入れる。
「あとは掃除ですね」
ニワトリの糞を集めて、リトネからもらったビニール袋にいれる。これは後で肥料として売るために、別な場所に運んで保管していた。
「さあ、いよいよです。トリさんたち、今日も卵をいただきますね。わあ、生みたて!まだあったかい」
うれしそうに頬ずりしながら、ニワトリが産んだ卵を籠に入れて回収する。
リンの顔は、今日もおいしい卵を食べられるうれしさで緩みきっていた。
籠いっぱいになった卵を、厨房に持っていく。
「おじさん、今日も卵を持ってきましたよ~」
「いつもすまないねぇ」
リトネに引き抜かれたコックは、相好を崩してリンの頭をなでた。
「まだ朝ごはんを食べてないんだろ。すぐに作るから待っていな!」
コックはリンのために、腕によりをかけて朝食を作る。
「さあ、召し上がれ。新鮮卵の目玉焼きだ」
ふっくらとしたパンと目玉焼きに、焼き魚をつけてリンに出す
「いただきます!」
リンは歓声を上げて、おいしそうに朝ごはんを食べ始めた。
「おいしい!」
「そうだろ。取れたて卵だからな。この城で一番おいしい卵を食べているのは、実はリトネ坊ちゃんじゃなくてリンのお嬢ちゃんなんだぜ」
コックはいたずらっぽく笑いかける。
「うふふ。お兄ちゃんに悪いみたい」
「まあ、現場で働いている人間の特権ってやつさ。ほら、坊ちゃんの朝食ができたから、もっていってやりな」
「うん!」
朝食を食べ終えたリンは、朝食を持ってリトネの部屋に行く。
リンだけに渡されている鍵を開けて、部屋に入った。
「おはよう!お兄ちゃん!」
カーテンを開けて太陽の光を採り入れ、眠っているリトネを優しく起こす。
これがリンの一日の始まりであった。
そして一ヶ月後、リトネはリンに給料を払う。
「リン、よく一ヶ月がんばってくれたな。これが今月の給料だよ」
リンにずっしりと重い金貨を渡す。あわててリンがあけてみると、金貨が50枚も入っていた。
「お、お兄ちゃん、多すぎない?」
いつもの倍もあったので、リンは驚いてしまう。
「いや。間違っていないよ。メイドとしての給料15アルに、食堂での毒検査の資格手当て10アルそして……食堂に卵を卸した代金25アルの合計50アルだ」
リトネはきっちりと給料の明細が書かれた紙を渡す。その内容はよくわからなかったが、間違っていないということだけはわかった。
「こんなにもらっていいの?」
「ああ、好きに使いなさい」
それを聞いて、リンは喜ぶ。
「やった!これで村への仕送りが増やせるよ!お兄ちゃん、ありがとう」
リンは満面の笑顔を浮かべて抱きついてきた。
「え?また村へ仕送りするのかい?」
「うん。お父さんから手紙がきたの。あれからお父さん、村の人に怒られて村長さんやめさせられたみたい。生活が苦しいんだって」
リンはちょっと悲しそうな顔をする。それを見て、リトネはちょっと嫌な気持ちになった。
(くそ……あのオヤジめ。今度は娘にたかっているのか。秋に爺さんと各村を巡回する予定なんだっけ。一回ロズウィル村にも行かないといけないな)
心の中でそう思うリトネだった。

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