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予定外の攻略
リトネは苦笑して二人を受け入れる。
「それじゃ、あなた方も私の家臣として雇わせていただきます。リトルレットの研究を手伝ってください」
「かしこまりました。わが主人よ」
トーイレットが妖艶な笑みを浮かべて、リトネを抱きしめた。
「え?」
「うふふ……可愛いですわ。はあはあ。小さな勇者リトネ様にお仕えできるなんて。私のすべてをささげさせていただきます、じゅるり」
トーイレットの目は潤み、口から涎が出ている。
思わす身の危険を感じて一歩下がったら、何かやわらかいものにぶつかった。
「あんっ」
「あっ、ごめんなさい。大丈夫でしたか?」
ぶつかってしまったのはブルーレットで、その拍子に倒れてしまった。
思わずリトネが助け起こそうとすると、その手をつかまれる。
「えっ?」
次の瞬間、リトネはブルーレットに抱きしめられていた。
「あ、あの……」
「ご主人様……もう離しませんわ」
見上げたリトネの目と、見下ろしたブルーレットの目が合う。彼女も潤んだ目をしていた。
「ち、ちょっとリトネ君!ボクの姉さまたちに何をしているの!」
慌てたリトルレットがペンチを巨大化させて攻撃しようとするが、何かにふさがれる。
トーイレットが出した巨大バールだった。
「姉さま?」
「下がりなさいリトルレット。私たちの主人に無礼は許しません」
「そうです。リトネ様は私たちの生涯の主人。いずれ愛し合って、子供を生んで、立派なリリパット銅爵家の跡継ぎを生むのです」
二人の目は真剣だった。
「ち、ちょっと待って!婚約者はボクのはずでしょ!リトネ君!」
「お、俺にも何がなんだか……」
混乱する二人に、トーイレットとブルーレットは笑いかける。
「ご安心ください。正式な婚約者はリトルレットですが……」
「リトネ様のことを詳しく話すと、母上から命じられました。私達は妾としてリトネ様にお仕えせよと」
二人で幸せそうにリトネを抱きしめる。
「め、妾?」
「そうですわ。リトネ様はまさに伝説の勇者の再来、いや、それ以上の神の御子」
「ほかのどこに嫁ぐよりも、一番私たち、ひいては我が一族を幸せにしてくれるのです」
二人にそこまで褒められて、リトネの鼻の下がだらしなく伸びる。
「そ、そうかな……」
「ええ。今のロスタニカ王国で、あなた以上の男性はいません。この国一番のお金持ちで、金爵家の跡取り。魔公を倒す力を持ち、世事に長けて頭もいい。しかも若く、かわいらしく、心優しい」
「あなたこそ私たちが待ち続けた本当の伴侶でございます」
二人はリトネの耳元でささやき続ける。
「それに……お子様のリトルレットよりも、私たち方が○○○は……」
「一応の手解きは存じ上げております。今日からベッドでご奉仕を……」
二人の誘惑に、リトネはノックアウト寸前である。
「そ、そうかな。じゃあ……」
「リトネ君!だまされないで!その二人は30歳オーバーのオバサンなんだよ!」
リトルレットがそういった瞬間、空気が凍った。
二人はリトネを離し、ゆらりと立ち上がる。
「リトルレット。今なんていいましたか?」
「お仕置きしなければなりませんね」
二人の手に巨大なバールとドライバーが出現する。
「ふ、ふん。かかってきなよ。人の婚約者を奪おうとする年増ねえさん達なんかに、まけないんだから!」
リトルレットも巨大なペンチをだして威嚇する。
突如始まった姉妹喧嘩に、リトネは慌てて逃げ出すのだった。

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