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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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娘の制裁

応接室でソファに座ったゼニスキーは、リリパット銅爵が口を開く前に告げる。
「残念ですが、今回の融資は見送りさせていただきます」
それを聞いて夫人は喜び、銅爵は絶望する。
「ど、どうして……」
「あなた方にはシャイロック家の御曹司と結婚予定の三女がいらっしゃるとか」
ゼニスキーがそういうと、銅爵はしまったという顔になる。
「そ、それは……その……」
「そうですわ!勇者リトネ様に嫁いだリトルレットの子こそが、次のリリパット銅爵を継ぎます。あなたなど、お呼びではありません!」
銅爵が何か言い訳する前に、夫人が高らかに言い放った。
「融資を受けた後に銅爵家の爵位を王に返上して一度潰したことにして、その子に新たにリリパット鉄爵家として再興させるつもりだったのでしょう」
「……」
自分の考えを言い当てられて、銅爵も沈黙した。
「我々は信用と金が命です。そのような不誠実なことをする貴族とは付き合えません。それでは、失礼させていただきます」
そういい捨てると、ゼニスキーはさっさと帰っていった。
後に残された二人の間に沈黙が降りる。
「……どうすればいいんだ……これで商人たちの間に悪いうわさが広まり、誰も金を貸してくれなくなるだろう」
「だから、最初から素直にシャイロック家に借りればよいのです!」
夫人は勝ち誇ったように言った。
「だが、あそこは審査に厳しい。どうしても必要な金なら貸してくれるが、住宅エリア発掘のためといった元が取れそうにない金は、貸してくれないだろう」
銅爵ががっくりと肩を落としたとき、家臣がやってきた。
「リトルレットお嬢様たちがお帰りです」
「なんだって!どうしてこんな時に……まさか、婚約者を首にでもなったのでは……」
ますます困惑して頭を抱える銅爵だった。

ともかくも、夫婦で娘を出迎える。
「お母様、ただいま!」
「リトル、元気そうね!」
久しぶりに再会した母子は、抱き合って喜ぶ。
リトルレットと一緒に帰ってきたトーイレットとブルーレットも、その光景をほほえましく見ていた。
対象的にリリパット銅爵の顔色は悪い。
「な、なあ、リトル。どうして帰ってきたんだ?まさか、リトネ様と喧嘩でもしたんじゃ……?」
心配する父親に、リトルレットはつかつかと近づいてきた。
「えいっ!」
いきなり『自在の工具』を巨大なピコピコハンマーに変えて、父親をぶん殴る。
「ぐはっ!」
銅爵はつぶれたカエルの様にハンマーの下敷きになった。
「どうしてだって!お父様にお仕置きしに帰ってきたんだよ。お金のために姉さまを犠牲にしようなんて許せない!」
プンスカと起こるリトルレットの前で、銅爵はピクピクと蠢く。
「まだ気がすまない!もう2、3発……」
「やめなさい。お父様はもう気絶しているわ!」
あわてて妹を止める姉たちだった。
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