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金貸しの意義と金の使い方
シャイロック城
執務室で、リトネとナディが向き合っていた。
「……なるほど。その子を助けるのに、200アルほど足りないのか……」
「……貸して!お金ならちゃんと返すから」
必死の顔をして頼みこむナデイ。
リトネは、ナディの持ってきた倉庫の売り上げに関する資料をじっくりと読んでいた。
「新しい倉庫の売りあげは、今は200アルくらいあるんだよね」
「うん。来月には絶対に返せる」
ナディは自信を持って断言する。しばらく資料を見ていたリトネは、やさしい笑顔を浮かべた。
「……いいよ」
「え?」
「ただし、ちゃんと金利を取るよ」
リトネは笑顔を浮かべて言い放つ。金利と聞いて、ナディはいやな顔をした。
「婚約者である私から金利なんて取るの?」
「うん。いくら婚約者だからって、お金のことはきっちりとしておかないと。金貸しって必要な人にお金を貸して、その金利で生活するまっとうな仕事なんだよ。気に入らないかもしれないけど」
あくまで譲れないといった様子のリトネに、ナディはあきらめる。
「……わかった。借りる。それで、具体的にどれくらい?」
「そうだな。婚約者だし、個人的な信用もあるし、しっかりとした仕事と収入のあてがある。だから」
もったいぶって一度言葉を切る。
ナディはどんな無理難題を聞かされるかと思って、ビクビクしていた。
「月金利1%でどう?」
「1%って、いくらなの?」
ナディはよくわからなくて、首をかしげる。
「要するに、今月200アル貸してあげるから、来月202アルにして返してくれればいい。担保もいらないよ」
もっとひどい条件を突きつけられると思っていたナディは、拍子抜けした。
「そんなのでいいの?」
「まあ多少金利は低いけど、そこは婚約者ということで」
「なら、それでいい」
リトネから200アルの金貨がつまった袋を渡され、月利1%の借金契約書にサインする。
ナデイは喜んで執務室を出て行った。
(よし。健全な金持ちになるプログラム第三段階「金貸しの必要性」を理解したな。順調だ)
その後姿を見送って、リトネはほくそ笑むのだった。
奴隷商人の店
涙を流して抱きあっている二人の少女がいる。
「ドロンお姉さま……これで自由」
「お嬢様……私などの身のために、ご自分で汗水たらして稼がれたお金を使っていただけるとは」
ナディが流す涙はドロンを助けることができた喜びの涙で、ドロンが流す涙はナディが純粋な好意で自分を助けてくれたことへの感動の涙だった。
「……いいの。お金なんかまた稼げばいい。ドロンお姉さまの方が大事」
そういいながら、ドロンの『隷属の首輪』をはずす。
「もったいないです。私など、奴隷のままで……」
「私が嫌なの。ドロンお姉さまを奴隷なんかにしたくない」
ナディのやさしさが、ドロンの胸を打つ。
「このご恩に報いるために、これからも命がけでお仕えさせていただきます」
ドロンは本気で頭を下げて、忠誠を誓った
その様子を隠れてみながら、リトネは心の中でつぶやく。
(うまくいったな。いくら金持ちになったって、金が第一の銭ゲバになったら別な形でのビッチになるだけだ。健全な金持ちになるための第四段階「金よりも大事なことがある」ことを理解してくれたこみたいだ)
順調にビッチから遠のいていることを実感して、リトネはにやりと笑った。

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