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困ったとき
一時間後
「……お金持ってきた!」
奴隷商人の前で、袋に入ったお金をぶちまける。
それを一枚一枚丁寧に確認すると、奴隷商人は残念そうに首を振った。
「残念ですが、金額の合計が約200アルですね。この奴隷は大変高価なので、400アルの値がつけられいてます。足りませんね」
「……!!!」
ナディは思わず奴隷商人に杖を突きつけてしまう。
その時、ゴールドの怒声が飛び交った。
「やめなさい!杖など突きつけて、どうしようというのだ!」
「……でも……こいつが……」
「彼は意地悪を言っているのではないぞ。魔法が使える若い女の相場はそれくらいなのだ。ほら、みなさい」
ゴールドがドロンが入っている牢にかかっている札を指差す。そこには「400アル」と書かれていた、
「そんな……じゃ、足りない分はお父様が……」
「残念だけど、私にも余分な金はない。それに、もしドロンを救うために金を使ってしまったら、その補填をするために他の領民が奴隷にならざるをえなくなるのだ」
ナディは悔しそうに父親を見ていたが、彼は一歩も引きそうにない。
「なら、どうすればいいの!」
ついにナディは癇癪をおこした。
「今日のところは、城に帰って、何か方法がないか考えよう」
「ナディちゃん……いいの。私など助けようとして、無理をしなくても……」
ダメ押しとばかりに、ドロンは悲しそうに笑う。それを見て、ますますナディは奮い立った。
「心配しないで!絶対に助けて見せるから!」
それを聞いて、ゴールド・ドロン・そして奴隷商人がうれしそうに笑う。
「すまないが、この女を予約しておいてはくれないか?」
「はい。かしこまりました」
ゴールドの言葉に、奴隷商人は恭しく頭をさげるのだった。
「さて、予約したのはいいが、残り200アルをどうするかだ。何か考えがあるか?」
帰りの馬車の中で、ゴールドがナディに問いかける。
「……一ヶ月待ってもらう。来月になったら用意できる」
「残念だが、それは無理だな。いくら奴隷商人だからといって、そんなには待ってもらえないだろう。その間にドロンを買いたいという人間が現れれば、それでお終いだ」
ゴールドに言われて、ナディは悔しそうに唇をかむ。
「なら、どうすればいいの!」
「今すぐお金が必要だ。だが手元にはない。そういう場合に助けてくれる存在があるだろう」
ゴールドに言われて、はっと気がつく。
「……金貸し……」
「正解だ。幸いリトネ様は金貸しをやっておる。彼に金を借りたらどうだ?」
「……」
ナディは黙って考える。確かに父親の言うことはわかるのだが、金を借りるという人生で初めての出来事に恐怖を感じていた。
「でも……返せなくなったら、奴隷にされてあんなことやこんなことをされるかも……」
「まあ、ここで考えても仕方あるまい。どんな条件になるかはわからぬが、相談してみたらどうだ。その時に、こういったものを用意するのだ」
ゴールドは借金しやすくなるものを用意するようにアドバイスするのだった。

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