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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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まじめにお仕事

次の日
昨日とは違った業者がやってくる。
「あの……ここで食材を冷凍して預かってくれると聞いてきたんだけど……」
気の弱そうな若者がやってくる。彼は貴族の城に来るのは初めてで、内心ビビッていた。
「……名前は?」
「えっと、果物屋なんですが……」
メイド服を着ていても、相手がいかにも貴族っぽい気品を放っていたので、おそるおそる名乗る。
「果物屋さんは二階。こっち。案内する」
手元のマニュアルを確認しながら、正しい場所に案内する。
果物屋は相手がちゃんと応対してくれたので、ほっとしていた。
午後になって、リトネが仕事の確認に来る。
「すごいじゃないか。ちゃんと決められた場所に食材が置かれているし、業者ごとにも分けられている。完璧だよ」
「……当然。私はシャイロック家の姫」
ナディは偉そうに薄い胸を張る。褒められてうれしいのが、ちょっと口元がゆるんでいた。
リトネは缶ジュースを一本渡して、機嫌をとる。
「この調子で、明日も頼むよ」
「……わかった」
ナディはジュースを飲みながら、うれしそうに返事をするのだった。

(さて……ナディはこれでいいとして、リトルレットはどうなっているかな?)
ナディと別れたリトネは、近くの倉庫に向かう。
そこでは、一人の作業着を着た少女が油まみれになって何かを分解していた。
「あははははっ。なにこれ!面白い!こんなの初めて見た!」
彼女の足元には、バラバラになった何かの機械が転がっている。
ハンドルにタイヤ、ギヤにサドルなど滅茶苦茶だった。
「あ、あの、リトルレットさん?」
「すごい!自分を乗せて自分で走ることができる荷車なんて。その発想はなかった。これがあれば移動がどれだけ楽になるか……面白い!」
リトネが来たことも気づかず、すごい勢いで自転車を分解して構造を理解しようとしていた。
しばらく放っておくと、今度は組み立てをしようとする。しかし、一度バラした自転車は元には戻らなかった。
「ああもう!なんで部品が余っちゃうんだよ!キーーーッ」
癇癪を起こして頭を掻き毟る。
リトネは苦笑して、リトルレットに話しかけた。
「どう?うまくいっている?」
「リトネ君か。君はこんな面白くで厄介なものをくれたもんだね。さすがの天才のボクでもどうしたらいいかわからないよ」
リトルレットはそういいながらもうれしそうだった。彼女の鼻の頭が油で汚れている。
「嫌だったら、別の仕事にする?」
「冗談!ボクがずっと探していた古代文明の遺産に似たものが、ここにはこんなに転がっているんだ!やめろといわれたってやめないよ」
リトルレットは満面の笑みを浮かべるのだった。
「冒険者はもういいの?」
「ボクが冒険者続けていたのは、実家のダンジョンにいるゴーレムたちに興味があったからだよ。でもあいつら強くて攻撃してくるし、目的が人を襲うことに限定されているでしょ。だから、冒険者しながらたまに見つかるオーパーツを研究していたんだ。でも、ここにはこんなに沢山ある」
幸せそうに辺りを見渡す。自転車のほうにも、壊れた洗濯機やエアコンなど、大量の家電製品が転がっていた。
「こんな風に人に役にたつゴーレムを作ることがボクの夢だったんだ。君のおかげで夢がかないそうだよ」
心底楽しそうなリトルレットに、リトネは内心でうまくいったと喜んでいた。
(原作でも機械いじりが好きなメカデレヒロインだもんな。リトルレットのおかげで、この世界にも文明をもたらせるかもしれない。ぐふふ……技術を独占して、勇者に対抗して……)
ニヤニヤと笑っているリトネに、リトルレットは要求する。
「だから、もっと自転車を召喚して!なるべく構造が単純で、壊れてないもの!」
「は、はい!」
リトネは要求されたものになるべく近い状態の自転車を、魔力を振り絞って召喚するのだった。
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