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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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失敗のフォロー

ナディはプンプンと怒りながら昼食を食べた後、執務室にいる父親ゴールドの元に向かう。
「……リトネってひどい!やりたくもないことを無理やり押し付けておいて、ちょっと失敗したら私を叱った。もうこんなところにいたくない。領地に帰ろう」
涙を流しながら父親にリトネの非道を訴える。ナディに甘い父親は最後まで優しく聞いていたが、ゆっくりと首を振った。
「だけど、ナディはリトネ様に協力するって言っていたよね」
「それは……母上を救ってくれた恩があるから……でも!」
「お前の誓いって、ちょっといやなことがあったら反故にできるようなものなのかい?」
「……」
ナディは悔しそうに唇をかむ。
「実際、与えられた仕事をまともにしなかったのは誰だい?」
「……私」
しぶしぶと自分の非を認める。
「なら、リトネ様は悪くないよね。私も一緒に行ってあげるから、謝ろう」
父親に促されて、しぶしぶナディはリトネの元に向かうのだった。
リトネは倉庫で、一人で間違って入れられた箱を直していた。
「リトネ様、ナディが仕事でミスしたみたいで、申しわけありません」
「……ごめんなさい」
親子ともとも頭を下げる。
「わかればいいですよ。それより、元に戻すのを手伝ってくれませんか?」
「喜んで」
ゴールドは腕まくりして、重い箱を持つ。
貴族である父親と領主であるリトネが協力して重い箱を運んでいるのを見て、ナディも居心地がわるくなってきた。
「……あの……私もやる……」
「助かるよ。それじゃ、小さくて軽い箱を運んで」
三人が協力して箱を運ぶと、一時間ほどで正しい場所に直すことができた。
ゴールドもナディも、普段はめったにかかない汗を流している。
「いてて……運動不足ですかな。久しぶりに体を動かしたら、腰が……」
情けない様子で自分の腰をたたく父親をみて、ナディは吹き出す。
「お父様、おじいちゃんみたい」
「いてて……そういうなよ。私はいつもデスクワークばかりしていて、慣れていないんだ」
ナディは痛そうにしている父親の腰を、優しくさする。
そこへリトネが、何か鉄の筒のようなものを持ってきた。
「二人とも、ご苦労様です。これをどうぞ」
ゴールドには金色の麦の絵がかいてある筒を、そしてナディには真っ赤な色に白い文字で何か書いている筒を渡してくる。それはキンキンに冷えていた。
「これは、なんです?」
「異世界で、何かの手違いでゴミとして捨てられていた『空けられていない缶の飲み物』です。あらかじめ冷やしておきました、疲れたときに飲むと、おいしいんですよ」
そういわれて、二人はおそるおそる飲んでみる。
「!? これは酒か?いや、のど越しが爽快でキュッとくる!」
「なにか口の中でちくちくする。でも、美味しい!」
缶ビールと炭酸飲料を飲んだ二人が笑顔になる。
「リトネ様、もう一本!」
「私も!」
お代わりを要求してくるが、リトネは無情にも首を振った。
「だめですよ。それは本来はゴミじゃないんですから、捨てられているの探して召喚するのに結構手間がかかりましたからね。仕事が終わったあとのご褒美として、一日一本だけです」
「そんなぁ……」
「…けち」
二人は子供のようにふくれっ面をした。
「ナディはこれで仕事終わりだね。あとは自由にしていてもいいよ。図書室も自由に使っていいからまた明日もお願い」
リトネはナディにやさしく笑いかける。
「リトネ様、私は?」
「ゴールド様と俺にはまだ執務室で仕事が残っているでしょう。さあ、がんばりましょう」
顔が真っ赤になっているゴールドをひきずって、リトネは去っていく。
「……変なやつ。でも、またあの美味しいジュースもらえるなら、がんばってみようかな?」
ジュースにつられて明日も仕事をがんばろうと決意するナディだった。
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