挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
3/204

改革

入り口ではガラス張りの棚に、「本日のメニュー」と書かれた札と料理の見本が置かれている。
「いらっしゃいませ。あら、お坊ちゃま?」
「今日のお勧めは?」
「はい。A定食がお勧めですよ。5ジルです」
受付のメイドはにっこりと笑って、お勧めと書かれている見本を指差した。
ほかにも色々な料理が並び、値札がつけられている。
「じゃあ、それを二人で」
「はい。一ギルです」
リトネは一ギル銀貨を一枚支払い、食券を二枚受け取る。
それを厨房に出して、すでに作ってあった料理を手に取り、何の変哲もないテーブルに座った。
「ね、ねえ。もしかして、お金を払ってお昼を食べるの?」
「当然」
リトネは平然と答える。周りには多くの人がいたが、偉そうな年配の男性も新人っぽいメイドも同じように金を払って食事を注文していた。
「普通、城での食事って無料で賄いが出るものだけど……」
「でも、その代わりに身分や立場によって食べられるものが違うんだろ」
「そうだけど……」
リトルレットは頷く。
「うちでは無料賄いをやめて、料金制にしたんだ。その代わりメニューを色々取り揃えて、誰でも好きなものを自由に選べるようにした。もちろん、賄い分は手当てとして給料に少し反映しているよ」
「どうしてそんな事をしたの?」
リトルレットはさっぱり意味がわからなかった。
「無駄を避けるため。今までの賄い場を査定したら、料理長以下全員が結託して経費を水増しして莫大な無駄遣いをしていたんだ。だから首にして、別の人を雇った」
リトネは腹だだしげにいう。
「町の評判がいい料理屋のコックを引きぬいて任せたら、料理がおいしくなったって評判だよ」
「でも……新しい人を雇って毒とか盛られたりしたら…」
リトルレッドは懸念する。
「一応、毒などが持ち込まれてないか、水の魔法が使えるネリーさんとリンに頼んでチェックしてもらっている」
リトネが厨房を指差す。そこではリンが杖を掲げて、何かつぶやいていた。
「水の精霊ウンディーネさん……毒とか腐ったものとかあったら教えてください……「水査ウォーターチェック」」
役割を与えられて、一生懸命がんばっている。彼女の持っている杖から半透明の精霊たちがふわふわと出て、見回りをしていた。
「彼女たちは、この店の利益から毎月10アル資格手当てとして出している。ほかの従業員も他の仕事をしていたメイドのアルバイトだよ。いいお小遣いになるって喜んでいたよ」
リトネはそういって、声をひそめる。
「まあ……一番儲かったのはうちだけどね。人件費含めて経費として毎月2000アルも使っていたけど、それがちょっとの食事手当てと材料費とコックの給料で済んだ。むしろ、騎士や役人への売り上げで逆に利益を生むようになったんだ」
「しっかりしているね……」
リトルレットは呆れながらも、A定食の肉の塊を食べてみる。
「おいしい!」
「それはハンバーグっていうものだよ。あんまり上質の肉じゃないけど、ミンチにしてよく焼いてソースをかけたら美味しくなるんだ。コックに言ったら見事に再現してくれたよ」
リトネは笑いながらそういった。
「うちは経費節減できて得。ネリーやリンなどのメイドはアルバイトできて得。みんなは自由に美味しい料理を選べて得。うまくやっているだろ」
「……金貸しらしい考えね。君、結構やり手だよ」
リトネに感心するリトルレットだった。
cont_access.php?citi_cont_id=875042061&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ