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貴族のお坊ちゃんだけど、世界平和のために勇者のヒロインを奪います 作者:大沢 雅紀
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新たな住人

シャイロック家
リトネたちが屋敷に戻ると、ミルキーを抱いたマザーに出迎えられた。
「ふん。どうやら生きて帰れたらしいの。悪運が強いやつじゃ」
口ではそういうが、リトネたちを心配していた様子である。
「きゅいきゅい!」
しばらく離れて寂しい思いをしていたミルキーは、喜んでリトネに飛びついた。
「師匠のお乳のおかげで、なんとかツチグーモの毒に犯された人を助けることができました」
そういいながら、残った乳を返そうとする。ペットボトルには底のほうにわずかに残っていた。
「よい。もっておけ。これからもお前たちには必要になるかもしれんからな」
マザーは苦笑して首を振る。
「そうだ。マザー様のお乳を飲んだら元気が出て、魔力が上がったように感じたんですが、なぜでしょうか?」
「……私もそう感じました。いつもより魔力が強くなりました」
「そういえば、ボクの武器もいつもより強くなったような気がする。工具をニッパーに変えたらツチグーモの糸をスパスパ切れたし」
三人が首をかしげる。
「それがワラワたち竜王族が人間や魔族から狙われるわけでもあるのじゃ。ワラワたちの血や乳は飲んだものに不死身の力を与え、強化する。簡単に強くなれるのじゃ」
「なるほど……たしかに乳って血とほとんど同じと聞いたことがある。乳房は血液の赤み(赤血球)をフィルターして乳にするのだったよな」
前世知識を思い出してリトネは納得する。
「まてよ……なら、なんで俺が血を飲んだときはあんなに苦痛を感じたんだろう」
「それは血と乳の違いじゃ。血に含まれている赤血球が人間には猛毒じゃからの。根性がないやつは死ぬこともある」
毒を飲まされたと聞いて、リトネは憤慨する。
「……って!なんで俺には血を飲ませたんですか!」
「愚か者が。初対面の小僧に乳を与えるわけがないではないか!それに、竜血の試練にも耐えられん根性なしには、どうせ修行に耐えられん」
「……たしかに」
マザーの言うことは至極もっともである。
「わかったら、修行じゃ!」
マザーはミルキーをリンたちに渡して、リトネを引っ張って中庭のほうに向かう。
「ミルキー、元気でしたか?」
「会いたかった」
「へえ……これがドラゴンの赤ちゃんかぁ。可愛いな」
三人のヒロインたちはリトネそっちのけで、ミルキーを可愛がるのだった。

シャイロック城
マザーとの修業が終わり、リトネはリトルレットを連れて城内を案内する。
「それじゃ一階から見て回ろう」
「それはいいけど……大丈夫なのかい?」
リトルレットはリトネを心配する。体中傷だらけで、顔にはあざができていた。
「いつものことさ。今日はマザーは手加減してくれたみたいだし……」
「いったいいつもどんな修業しているのよ……」
そんなことをいいながら中庭を視察する。そこには多くの騎士たちが稽古をしていた。
「よう、お坊ちゃん!新しい女ですかい!」
「かわいいねえ!お似合いですぜ!」
口笛とからかう声が飛び交う。
「そーだぜ!お前たち、うらやましいだろーー」
リトネはリトルレットをぐいっと抱き寄せて自慢顔をする。
彼女の顔が真っ赤に染まった。
「ち、ちょっと!なにしているんだよ!」
「いいから。芝居に付き合ってよ」
小声で言いながら、リトルレットをお姫様抱っこする。
「ヒューヒュー!」
「いいねえ!うらやましいねぇ!」
騎士たちの歓声に応えながら、リトネたちは中庭を後にした。
騎士たちの姿が見えなくなってから、リトルレットをおろす。
「ごめんね。嫌だった?」
「べ、別に嫌ってわけじゃないけど……てか、ボクはなんでこんなお子様に動揺してんだろ……」
そんなことをつぶやくリトルレット。
「なんであんなことしたの?」
「しょうがないんだよ。ただでさえ騎士たちには貴族のお坊ちゃんと舐められがちなんだ。彼らのトップに立つには、演技でも気さくで男らしい態度を取らないといけないんだよ。とくに新しい女を手に入れたときには妬まれやすいんだから」
リトネの顔には自宅である城内でも演技をしないといけない疲れが浮かんでいた。
「ふーん。君も大変なんだね。まあちょっとはその苦労もわかるよ。ボクも銅爵家の三女なんてお嬢様しているのが窮屈で、冒険者になったからね」
そんなことを言いながら歩いていると、城の食堂に着いた。
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