バングラ首都テロ 卑劣極まる蛮行を憎む
バングラデシュの首都ダッカのレストランが武装集団に襲われ、日本人を含む多くの外国人が巻き込まれた。各国大使館や外資系企業が集まる地域にある店で、外国人客を狙ったようだ。
国際協力機構(JICA)のプロジェクトに従事するコンサルタント会社の日本人8人が、事件発生時に店で食事をしていた。
うち1人は治安当局の突入作戦で救出されたが、残る7人は死亡が確認された。
安倍晋三首相は「バングラデシュの発展のために尽力してきた皆さんで、痛恨の極みだ」と述べた。
地元メディアは、イスラム教の聖典であるコーランを暗唱できない人質が拷問されたと報じている。外国人を探していたという証言もある。事実だとすれば、異教徒である外国人を敵視した卑劣極まりない犯行と言うしかない。
過激派組織「イスラム国」(IS)系の通信社は、ISによる犯行だと伝えた。
先月28日に起きたトルコの空港でのテロも、トルコ政府はISの犯行だと見ている。
今回の事件は、イスラム教の集団礼拝が行われる金曜日に起こった。ISは今月初めまでのラマダン(イスラム教の断食月)中のテロを呼びかけていた。
昨年もラマダン中の金曜日に、チュニジアのリゾート地で外国人観光客38人が殺害されるテロ事件が起きている。
バングラデシュは人口の9割がイスラム教徒という国だが、宗教や宗派対立によるテロとは無縁だと考えられていた。
ところが近年は様相を異にしている。インターネットのブログで過激主義を批判したジャーナリストや少数派であるイスラム教シーア派などが襲われるようになり、昨年以降の犠牲者は20人を超える。日本人男性が殺害され、ISが犯行声明を出す事件も起きた。
ISは昨年11月発行のウェブ版機関誌「ダビク」で、バングラデシュを含むベンガル地方での「聖戦」を予告し、隣国であるミャンマーやインドでテロを起こすための拠点として活用していく考えまで示した。
大規模テロの脅威はアジアでも広がっている。今年1月にはジャカルタで30人以上が死傷するテロが起きた。2020年東京五輪・パラリンピックを控え、日本も改めて備えを点検する必要がある。
政府は事件を受けて国家安全保障会議(NSC)を開いたが、菅義偉官房長官は参院選遊説のため出席しなかった。危機管理の要である官房長官の対応としては疑問が残った。