先月30日「李健煕(イ・ゴンヒ)会長が死亡した」というメッセージがスマートフォン・アプリ「カカオトーク」を通じて広まり、影響でサムスングループ系列企業の株価が一時急騰した後に大きく値を下げるなど市場全体が動揺した。このうわさは正午ごろになって一気に広まり、サムスングループの持ち株企業でもあるサムスン物産の株価は一時8%以上も値を上げた。サムスンが「うわさは事実ではない」と発表すると同社の株価は下落し、前日の終値に比べて4.7%の上昇で取引を終えた。サムスングループは韓国株式市場における時価総額全体の20%を占めるが、うわさによって株価が大きく変動し、高づかみをした個人投資家などの間で巨額の損失が発生した。仕手グループが事前にサムスン系列の株を大量に購入し、うわさを広めることで株価をつり上げ、高値で一気に売却した可能性が高いようだ。
今回のような株価の変動はしばしば発生するが、政府が対策を怠っているため解決の兆しはなかなか見えてこない。今回の「李健煕会長死亡説」についても、昨年4月と一昨年4月に同じようなうわさが2回も広まり、そのたびにサムスングループ系列企業の株価は上昇と下落を繰り返した。ところがそのたびに政府は「背後で株価の変動を利用し差額を手にする仕手グループを必ず摘発する」などと発表はするものの、行動は起こさずいずれも口だけで終わっている。
朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は3年前に開催された最初の国務会議(閣議に相当)で「株価の意図的な操作に対しては厳罰で臨む」と明言した。また昨年は株価操作に関与した証券会社の役員や社員など27人が検察に摘発されるなど、一定の成果も出ている。しかしたんなるうわさが株価を揺るがす問題への根本的な対策は提示できていない。「チラシ」などと呼ばれる私設株式情報誌の内容がスマートフォンなどを通じて広まるケースも最近は増え、捜査が難しくなっているのが実情だ。
今回のような問題の再発防止には、何よりも政府がデマによる株価操作を厳しく取締り、法律に基づいて厳重に処罰することが何よりも効果的な対策だ。場合によっては情報が広まった経緯についても調べ、関係先による金融取引の内容も確認しなければならないが、それには警察はもちろん、金融監督院や証券取引所による捜査への協力も必要だ。
現在の法律では、株価操作の目的で虚偽の情報を広める行為は、最高で無期懲役もあり得る重罪とみなされている。根拠のない虚偽情報の流布に対しては、これを厳しく取り締まるという強い意志をまずは政府が示し、容疑者を摘発した場合は実際に厳しい処罰を下すことで、今回のような騒動は必ず根絶していかねばならない。