企画特集2【司法Voice】
弁護士 塩見 卓也さん
▽労働法制 考える契機に
7月の参院選では、憲法や経済政策が大きな争点となっています。しかし、本来は大事な問題である労働法制についてあまり議論されていないように思います。
現政権は発足当初から、労働者派遣法や労働時間規制、解雇規制の大幅な規制緩和を方針に掲げてきました。報道によると、労働者派遣法の規制緩和は派遣労働者の7割近くが反対していたにもかかわらず、法案は昨年通ってしまいました。
労働法制の規制緩和方針は現在も進行中です。一定の年収などを条件に、いくら長時間働いても残業代を一切支払わない制度の法案が国会に提出されています。この法案について、政府は「時間ではなく成果で報酬を決める制度」と呼んでいます。しかし、実際に法案を読めば分かりますが、法案には「成果で報酬を決める」制度などとは一行も盛り込まれていません。長時間労働は「過労死」の原因になります。残業代支払いという負担を外すと長時間残業が蔓延(まんえん)してしまうことは、アメリカのデータでも実証されています。他にも、金銭を支払えば解雇を可能にする制度の導入も検討されています。
一方、政府は「同一労働同一賃金原則」も導入する方針を示しています。非正規労働者の待遇を上げる目的を掲げ、良さそうに聞こえますが、報道によると、政府のガイドラインの概要では基本給などについて「合理的な理由があれば差を認める」としており、骨抜きな話になっています。
京都弁護士会は昨年、「労働時間規制の緩和に反対する会長声明」と「労働者派遣法の改正に抗議する会長声明」を出しました。労働法制をどうするのか、選挙を前に考えていただけたらと思います。
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